電通さん、タイヤ売りたいので雪降らせてよ。 | |
クリエーター情報なし | |
大和書房 |
・本間立平
タイトルは、一種の冗談だが、売り手は雪を降らせる代わりに、色々な手を使って、客に今買い逃したらいけないという気にさせる。本書は、人間心理をうまくついたマーケティング、言い換えれば、売り手側がものを売るために仕掛けてくるあの手・この手について述べたものだ。
ところで、ちょっと気になる部分があった。店のルールを客に強いている人気モツ焼き店について以下のように述べている。
<「こだわり」を伝えたいからルールがある。ときには客を叱咤する。わからない人には、客になってもらわなくても構わない。「指導」は売り手の熱意を伝え、買い手の共感を獲得します。客に従う時代から、客に従わせる時代へ。「指導」が効果を発揮する場面は、これからも増えていくでしょう。>(p51)
私ならまったくそういうこだわりに「共感」できないし、これからは、店側からの一方的な「指導」に対して、そんなものに従順に従う必要はないと考える人が増えていくだろう。なぜなら、現状では、日本人の「個」の意識はとても高いとはいえないが、しだいに「個」というものが確立されていくように思えるからだ。
私は、上から目線のもつ焼き店(p47)などといった店にはまったく行きたいとは思わない。なぜ嫌な思いまでした飲食店で食べなくてはならないのか。同じ金を払うなら、もっとまともでうまい店は沢山あるだろう。
人の好みは千差万別。客が店側のこだわりに合わせてやる必要はまったくないのである。まあ、店側のこだわりに合わせたい人がいれば、それはそれでいいのだが、私には自分というものがない残念な人に思えてしまう。
もう一つ本書にあるような、飢餓商法、品薄商法というのは、賢い消費者にはまったく効かない。売り手はとにかく売って利益を上げたいものだ。しばらく待っていればやがては十分な量が出回る。しかも最初より安くなることがあるから待つ甲斐はあるだろう。もっともいち早く手に入れて自慢したい人がいることも事実だ。そんなに売り手側に乗せられてどうするのと思わないでもないのだが。
飢餓商法、品薄商法を続けるような売り手があれば、客が相手にしなければいいだけだと思う。そんなものに踊らされるのはなんともアホらしいではないか。
面白いと思ったのは、「インスタ映え」ならぬ「インスタ蠅」という言葉があることだ(p173)。インスタ映えするものを撮ることだけを目的にしている人たちのことを指すらしいが、ネットの世界には、ヘンな人間が多いものだ。まあ蠅はともかくゴキブリはうろうろしている気がするが(笑)。
今はまだ消費者が啓蒙されてないから通用するのだろう(永遠に啓蒙されない可能性もあるが)。売る側はあの手この手で購買意欲を高めようとする。とにかく焦って物を買わないことにつきるというのが、本書から学び取れることだろう。とにかく安易に売り手側の商法に引っかからないこと。自分の頭で考えること。これが賢い消費者になるための第一歩だと思う。
☆☆☆