スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実 | |
クリエーター情報なし | |
日経BP社 |
エドワード・スノーデンによる内部告発が報道されたのは記憶に新しい。米国家安全保障局(NSA)や英政府通信本部(GCHQ)などの個人情報収集を無差別大量に収集しているというものだ。「スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」(ルーク・ハーディング/三木俊哉:日経BP社)は、なぜスノーデンは内部告発を行ったのか、事件の全容はどのようなものだったのかを追ったノンフィクションである。
急激に進んだ情報化社会。何事にも光の部分と闇の部分の2面性があるが、この事件は、情報化社会における最大の闇と言っても良いのではないか。 この話の一番怖いところは、国家がそれを推し進めてきたというところだろう。国家が、無制限に国民を監視する。それに、通信やネット企業の大手が協力していたというのもぞっとする話だ。本書は、現代ネット社会の陰の部分をこれでもかというくらいに暴きだしている。
もちろん、現代の世界情勢を考えれば、諜報活動を否定することも現実的ではない。本書にあるように、<テロリスト、敵対国、組織犯罪者、核を保有するならず者国家、情報機密を盗もうとする外国のハッカーなど、英米に敵が多いことはだれもが認めている。個別のターゲットをスパイすることにも異論はない。諜報機関とはそういうところである。>しかし、一般市民の情報を無制限に取り込んだり、友好国の元首の電話まで盗聴するというのは明らかに行き過ぎだ。
面白いのは、この事件のおかげで、タイプライターが復活の動きがあるということだ。この事件は、ネット社会ならではのものという性格が強く、紙データならば、ハッキングのやりようがない。<伝書バトの復活も時間の問題だった>とあるが、これはジョークだろう(笑)。
日本でも街ではあらゆるところに監視カメラが仕掛けられているのは周知のところだ。情報化社会というのは、監視社会という性格も併せ持っている。昔なら、ピンポイントでしか監視できなかったものが、現在では椅子に座っていても、ネットをトラフィックが通過しさえすれば、大量のデータを盗聴することができるのだ。ビッグデータを扱う技術が発達すると、個人のプライバシーなど無いも同然になってしまうのではないかと危惧する。本書は、そのようなネット社会のあやうさを考えさせてくれる。
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