文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

リーダーシップは見えないところが9割

2024-05-25 22:36:59 | 書評:ビジネス

 本書は、優れたリーダーは、見えないところで部下をサポートしたり、自分の仕事にも工夫を重ねるものだということを述べたものだ。

 よく企業などでは、リーダーシップが重要だと言われる。それではリーダーシップを取るには、どんな行動をすればいいのだろう。そもそもリーダーと言うのはどんな存在なのだろうか。みんな漠然としたイメージがあると思うが、実際にどのような人かを語ろうとすれば案外難しい。

 社長や担当役員などの会社を率いている人や部長、課長や係長などの部下を指揮している人はリーダーといえるだろう。本書には、「管理職やリーダー」と言う表現が出てくる(例えばp21)。これを見ると、管理職の他にリーダーがいるように思える。しかし、同じページにはリーダーに部下がいるような表現がある。会社によって体制や制度などが違うのかもしれないが、厳密に言えば、部下がいるのは管理職だけである。それに、仕事を割り当てるのはリーダーではなく管理職の仕事だと思うのだが。

 もし、評価する人が無能だと、悲惨なことになる。能力がなく毎日遅くまで残らざるを得ない人を、「あいつは毎日遅くまで頑張っている」とプラスの評価し、逆に能力があり過ぎ、やることが無くなるので毎日定時に帰るような人を「あいつは毎日定時に帰ってけしからん」とマイナスの評価をしてしまうのだ。

 本書には、人の褒め方が書かれている。私はこれは褒める人の立場が結構重要なのだろうと思う。よく引き合いに出されるのが山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」というのがあるが、もし五十六が軍曹くらいだったら、現代までその言葉が残っていないのではないか。それと同じように、社長から褒められるのと係長から褒められるので重みが全然違う。だから管理職やリーダーは、メンバーの手柄を上の方にアピールしていく必要があると思う。

 本書には尻に火がつかないと始動しない「ラストスパート型」よりは、できるだけ早く始動する「スタートダッシュ型」を勧めているが、私もこれには賛成である。人生明日何があるか分からない。病気になるかもしれないし、事故にあうかもしれない。出来るだけ早くできることはやっておくに越したことはないのだ。

 よくビジネス本というと、早朝出勤などを進めているようなものを見かけるが、本書はこれにも疑問を呈している。私もこれには賛成だ。朝弱い人もいるだろうし、早朝出勤をしてもいいことは何もない人もいる。私も朝は苦手なので、早朝出勤などしたことはない。そして定時になるまで、仕事とは関係ない本を読んでいた。

 上に書いたように、会社により体制や制度が色々違うので全部を取り入れられるわけではないと思うが、できるところは参考にして欲しいと思う。
☆☆☆☆

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脳内メモリ最弱の僕が東大合格した人生が変わる勉強法

2023-12-30 10:06:34 | 書評:ビジネス

 

 著者は暗記が苦手だという。実は私も暗記が大の苦手である。だから理屈の分からないものは嫌いだ。高校の時は化学が得意だったが、大学に入ると電気工学専攻ということもあり、化学からは完全に足を洗った。無機化学は割と理屈が分かっていれば何とかなる部分が多かったが、有機化学になると、あの複雑な化学式を覚える自信がなかったからだ。

 著者が高校生のとき、柔道の授業で、脳震盪を起こし、MRIを撮ったところ、海馬が無いと言われた。海馬とは脳の一部で記憶をつかさどる部分だ。だから自分は記憶力が悪いのかと思った著者だが、実は後年再度調べたところ「くも膜のう胞」があり、それが海馬を圧迫して、記憶力に悪影響を与えている可能性があるという。

 本書は、そんな記憶力に自信のない著者が東大合格した勉強法を紹介したものだ。いわゆる勉強ができる子というのは、それぞれ自分なりの勉強法を持っており、共通する部分も多い。だが、中には違う方法をやっていることもあるので、その方が優れていると思ったら取り入れてみたらいいと思う。

 著者は、レベルの違う参考書・問題集を用意し、だんだんとレベルを上げていき、仕上げの1冊を何周も繰り返すことを勧めている。しかし、1冊目で良書に巡り合った場合には、その本を繰り返してもOKだという。この繰り返すということは私も賛成だ。私自身も古文は1日15分ときめて、例文入りの単語集を何度も繰り返した。それ以外は殆ど勉強した覚えはないのに、いつの間にか古文が大の得意になり、国語の大きな得点源となった。(今はどうか分からないが、昔は国立理系でも古文をやらないといけなかった。)

 また、著者は音読を勧めているが、漢字や英語のスペルは書いて覚えるべきだとも言っている。私もこれには賛成だ。私もこれらを覚えるときは、声に出すだけでなく、実際に手で書いて覚えていた。要するに手に覚えさせるのである。どうして自転車に乗れるかは説明できないが、一度乗ることができれば、それからは少々時間が経っても乗ることができるのといっしょである。同級生がbelieveとreceiveのどちらが、ieでどちらがeiかなんて言っていたが、私の場合は手が覚えているので、迷うことはなかった。

 ただいくつか疑問もある。全体像をつかめというが、その学問の全体像なのかそれともその本の全体像なのか。学問の全体像だとすると、英語や古文の全体像とはなんだろう。物理の全体像ってニュートン力学のことだろうか?その本の全体像だとすれば、レベルがあがるにつれよりレベルの高いものに変えていくのはどうだろうか。どのような本にも書いてあるような基本的なことを理解せよというのなら分かるが。

 暗記する時に青マーカーを勧めているのも良く分からない。実は私も本を読むときはマーカーをよく使う。確かにマーカーを使うとより記憶に残りやすい気がする。ただし私の遣うのは黄色の蛍光マーカーである。青だと読みにくくなるが黄色だと目に優しく読むのにも邪魔にならない。

 さらに著者は論理構造を「具体と抽象の論理」と「直線的な論理」と名付けているが、どうしてよく知られた帰納法、演繹法という用語を使わないのだろう。

☆☆☆

 

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トーコーキッチンへようこそ!

2023-12-04 08:53:41 | 書評:ビジネス

 

 トーコーキッチンとは、神奈川県にある渕野辺駅周辺で、1800室の賃貸物件の管理や仲介をやっている、地域密着型の不動産業である東郊住宅社が運営している物件関係者のための食堂である。

 このトーコーキッチンは鍵がかかっているので、カードキーを持っている人でないと入れない。このカードキーは東郊住宅社の管理物件入居者、管理物件のオーナー、協力関係業者でないと所有できないらしい。

 面白いのは、カードキー所有者に同行すれば何人でも、何回でも利用できるし、初めて利用する場合に限り、カード所有者の同行なしでも利用できるというところだ。

 そして値段を聞いてびっくり。なんと朝食100円、昼と夜は500円というのだ。いや絶対に100円朝食なんて赤字確定だろうと思ったが、やはりこれは単体で見ると赤字のようである。ただ、神奈川県の入居率が64.46%に対して、東郊住宅社の管理物件は入居率98.5%(ともに2016年の数字)だそうだ。オーナーの負担は求めてないというから、おそらくこの入居率の高さで、赤字がカバーできるのだろう。

 もっともトーコーキッチンを始める前から入居率は95%~96%あったらしいので、先代社長のときからやっている「礼金、敷金共ゼロ、退室時の修繕義務なし」というのも結構入居率の高さに寄与しているのだろう。

 それにしても面白いビジネスモデルだと思った。顧客から選ばれるには他との違ったところが必要だ。不動産屋が関係者のための食堂を運営するというのはなかなかいいアイデアだと思う。ただ、実際にやるのは大変だろうなあという気がするが。

 本書中にビジネスモデル特許を取らないかと人から言われるという話があった(pp183-184)。私は特許に関する仕事もしたことがあり、本書を読む限りは、特許を取るのは難しいような気がする。なぜならビジネスモデル特許をとるためには、第一に発明であることが求められるからだ。

 そして発明とは、特許法に明確に定義されており、第2条第1項に「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と規程されている。世に言う、ビジネスモデル特許とは、あるビジネスモデルをコンピュータシステムを活用して実現することで発明としているのである。だから、トーコーキッチンでやっていることを発明と見做すのは困難だろうという気がする。

 ともあれ、1頁程度の分量であり、この記述がなくとも、別にビジネスモデルとしての面白さは変わらないので、この話はなくても良いのではと思う。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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CFO思考 日本企業最大の「欠落」とその処方箋

2023-07-04 08:56:29 | 書評:ビジネス

 


 CEOやCOOなどC〇Oという言葉を聞くことが多いが、CFOというのは、Chief Financial Officerの略で、日本語では最高財務責任者と呼ばれる。著者は三菱フィナンシャル・グループ(MUFG)やニコンでCFOを務めた人で、本書にはそのエッセンスが詰まっている。

 日本企業の財務担当者というと保守的な者が多いというイメージが強い。「石橋を叩いて渡る」という言葉がある。慎重なことは良いことのように思われるが、慎重すぎて石橋を叩き壊しては意味がない。そうやるときはやるという心構えが必要なのだ。本書ではそれを「アニマルスピリッツ」という言葉で読んでいる。この「アニマルスピリッツ」というのはかってケインズが使った言葉で、「実現したいことに対する非合理的なまでの期待と熱意」(p2)のことである。これをうまく引き出すのが経営者の役目だと言う。

 残念ながら、日本の企業の役員は平社員から成り上がってきたものが多い。社長と言えども、新入社員時代は下積みを経験しているのだ。だから現場主体の戦術的なものには強くても、本来経営者に求められる戦略的な視点が十分でない場合が多い。これではどうしても保守的になり、アニマルスピリッツなどは持ちようがない。トップがそうなのだから、部下にアニマルスピリッツを持てと言うこと自体が無理なのだ。

本書では著者が過去にCFOをやっていたMUFGや現CFOであるニコンでの例が示されている。本書で紹介されているMUFGの例は衝撃的だろう。なんと連結利益の7割弱が海外企業から来ているのだ(pp94-95)。国内利益は3分の1強にすぎないという。そしてその多くの部分が米国モルガン。スタンレーに対する投資からのものだ。これは、例のリーマンショックの際に、MUFGが90億ドルの小切手を渡したことによるようだ。これなどもアニマルスピリッツのいい例だろう。 国内では、バカな超低金利政策の長期化により、疲弊している企業が多い。もう国内にこだわっていては、発展は望めないのだ。そして、ニコンでは、経営再建に力を入れて、ミラーレスデジカメラの中高級種に経営資源を集中し、業界最高水準のミラーレスカメラの市場投入という課題をやり遂げた。

 もちろん財務・経理は、企業にとっては重要だが、それだけで企業が回るわけではない。特にメーカーなどは、画期的な製品を開発すれば、ものすごく大きな強みになる。要するに財務。経理の部門と技術開発をする部門は車の両輪なのだ。いくらニコンのCFOががんばっても、技術部門の頑張りがない限りは絶対に目標を達成できないだろう。そのことを忘れてはいけない。逆もまた真なりで、幾ら技術部門がいい製品を作っても、財務・経理部門の適切な後押しがなくては成功はおぼつかないのだ。ニコンでは、専門的な技能を持つ人材や管理職の年収を最大2割上げたり、新卒作用に加えてキャリア採用も実施している。私のいた会社は典型的な事務系優遇で、技術系に比べ事務系の方が数年も昇進が早かった。こういうことを是正していかないと、優秀な人材はいつかないだろう。その気になれば本書から学べることは沢山ある。日本企業の経営層にはぜひとも読んで欲しいものだ。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「02 活性化のためのモノを活性化させなきゃ?」 地方都市の駅前はなんで賑わわない?

2023-05-13 09:26:46 | 書評:ビジネス

 

 本書は「地方都市の駅前はなんで賑わわない? 」シリーズの第二弾にあたるものだ。「地方は活性化するか否か」(学研プラス)という単行本も出ている同じ著者による本の続編にあたるという。

 とある高校の「地域活性研究部」に属する女子校生5人が、時に顧問の社会科教諭・峯岸峰子先生(美人だけどアラサー独身だそうです)も含めて、ワイワイ・ガヤガヤ言いながら、地域の活性化について考えていくというもの。

 副題をもう少し詳しく言うと、「活性化するための施設を活性化させるなんて悪い冗談だわ」ということ。でも、こういう例は腐るほど聞いたことがあるのではないだろうか。特に箱物の場合。お金が入ると、知恵のないところほど、箱物を建てようとする。しかし、まったくその後にかかる維持管理費は計算に入れていないのだ。そのうちそんな施設のことは、忘れ去られてしまう。解体すればいいのに、その解体費用も工面できないので、廃墟のようになってしまう。

 一番の原因は、地方が少子高齢化が進んでいるということ。近くに人口の多い大都市があればいいが、どうして、外出もままならない高齢者が増えて、そんな施設を利用しようと思うのか・

 そしてどうして駅前を活性化しようと思うのか。地方はどんどん公共交通機関が無くなり、車社会になっている。地方は車がないと本当に不便なのだ。現に私の故郷は昔は単独町制を敷いていて、実家は町の中心部といっていいところにあった。だが、時代の流れで近隣の市と合併したのはいいが、市の中心部に行くのに、市のコミュニティバス以外は公共交通はなくなったのだ。また、駅周辺には大規模な駐車場を展開できない。大規模な無料駐車場が整備されている郊外店に人が集まるのは当然なのだ。しかし高齢化が進み、車を運転できない人が増えたときどうなるのだろう。

 ともあれ、女子高生が地域活性化について考えるというのはいいことだ。ワイワイ・ガヤガヤ、キャピキャピと、そういった場面を想像するだけで楽しい。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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黄金の村のゆず物語

2022-12-11 10:06:04 | 書評:ビジネス

 

 これは山奥の一見何もない村を、ゆずの村として有名にした男たちの物語である。本書の主要登場人物である臼木さんは、県の農業普及指導技師として木頭村にやってくる。なんとか木頭村を豊かな村にしたい臼木さんは山に自生しているみごとなゆずに目をつける。そこから臼木さんの活躍が始まる。そして、ゆず栽培に専念するため、県の役人から木頭村の教育委員会に働き口を変える。

 皆さんは次の言葉を知っているだろうか。「ももくり3年かき8年」という言葉である。つまり植えてから桃や栗は3年、柿は8年かかるということを表した諺である。ここまでは知っている人も多いと思うが、実は、この諺には続きがある。それは「ゆずの大ばか18年」という言葉だ。つまり、ゆずを収穫できるようになるにはものすごく年数がかかるのである。この収穫までに年数がかかるという欠点をいかに克服したのかというのもひとつの読みどころだろうと思う。

 また、ほとんど知名度のなかった木頭のゆずをメジャーにしていく過程。これも読みどころだろう。一つ言いたいのは、何事も情熱なくしては成し遂げられないということだ。

 もちろん木頭村のゆずを見出したのもすごいが、こちらは運が大きく作用しているように思える。しかしその幸運をしっかりと掴むのは難しい。幸運をきちんと掴むのにも日頃の努力や問題意識が必要なのだ。俗に幸運の女神は前髪しかないと言われる。後ろ髪をつかむことはできないのだ。だから、見つけたらすぐに掴まないといけないのである。そうでないと、幸運はどこかに逃げ去ってしまう。

 なお本書には書かれていないが「木頭ゆず」は地域ブランドとして認定されている。この辺りも書けば、地域づくりに努力している人にも大いに参考になるだろう。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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経営戦略の教科書

2022-12-05 08:57:27 | 書評:ビジネス

 


 本書は、早稲田大学ビジネススクールでの講義を公開したものだ。このビジネススクールと言うのは大学院の修士課程にあたり、修了すればMBAの学位が与えられる。だから本書は大学院での講義のように15講+補講3講の合計18講からなり立っている。

 著者の遠藤さんは、早稲田の商学部を卒業し、米国ボストンカレッジ経営大学院でMBAを取得している。本書の初版は2011年7月付だが、当時は早稲田大学ビジネススクール教授(2006-2016)だった。

 本書はよく使われる経営戦略のフレームワークがひととおり示されており、これらに習熟しておけばきっと経営戦略を立案する時の助けになるだろう。ただし、いいものを作ろうと思ったら、ある程度の年季と、正しい情報が必要なのは言うまでもない。

 そして経営戦略は、本書に書かれているように、不変のものではない。

「(前略)その一方で、どんなに多くの情報を集めても、またその情報の分析にどれほど力を入れようとも、立案段階で完璧な経営戦略にはなりません。なぜなら、市場や顧客は絶えず変化し、その変化に従って競争も変化するからです。(後略)」(pp124-125)



 つまり、経営戦略は環境の変化に合わせて、常にリバイズしていかなくてはならないということだろう。それにどこにブラックスワンが潜んでいるかもしれないので、不慮の出来事があっても影響をできるだけ小さくできるようにしておく必要がある。最近のブラックスワンの例を挙げれば東北大震災とコロナ禍だろうか。

 また、本書には各講義にケーススタディが収録されているので、実際の企業を例に考えることもできるだろう。ただ。講義2にカルロス・ゴーン氏の日産改革の例が掲載されている。あの事件の顛末は知られている通りだが、これもひとつのブラックスワンなのだろうか。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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完全無欠の問題解決

2022-11-15 11:19:35 | 書評:ビジネス

 

 本書は、世界的に有名なコンサルタント企業であるマッキンゼー&カンパニーで使われてきた手法をもとに書かれたものである。

 本書の基本的なツールはロジックツリーだ。このロジックツリーは色々な場面で使えるが、大切なことはMECEであること。MECEとは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive 相互に排他的、集合的に網羅的」の略で、要するにもれがなく重複もないということである。本書では色々なケースにおいてどのようにロジックツリーが使われるかを詳しく解説したものだ。また関連するいくつかのツールも示してあり、今はそれほど流行していないが、QCサークル活動などで見たことがある人も多いものと思う。例えば俗に「魚の骨」と言われる手法はフィッシュボーンとして登場するし、日本では一般に「なぜなぜ分析」と言われているものは「5回のなぜ」という呼び方で登場する。これらは我が国では有名な手法なので、原文がどうあっても、日本で知られている言い方を使った方がいいと思う。なお、なぜなぜ分析については、別の5回という回数にこだわる必要はないというのが私の考えだが、たぶん他にも同じ見解の方もいるだろう。

 ただ、理屈を知っているだけでは、それなりのものしかできないし、色々な経験や知識がないと薄っぺらいものしかできないだろう。それを防ぐためには、色々なバックグラウンドを持った人を集めて作るという方法もある。本書を読んだ人は、ささいな問題にも、この手法を使ってみるといいだろう。とにかく愚直に使い続けるのだ。使い続けて、ツールを使いこなすレベルを上げる必要がある。一見遠回りのようだが、それが、このツールを自家薬籠中のものとするためには最も近道になるのではないだろうか。

☆☆☆☆

 

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潜在能力が開花する速聴インプット術

2022-11-13 09:18:55 | 書評:ビジネス

 

 本書は、歯科医でもあり経営者でもある著者の経験に基づき書かれたものだ。内容を一言で端的に言えば、速聴することにより、ワーキングメモリを鍛え、ポジティブな情報を潜在意識に刻みこもうということであろうか。

 ここでワーキングメモリというのは、作業記憶とも呼ばれ、知的な作業を行う際に、一時的に情報を蓄えておく記憶領域のことである。例えば3つの数の計算をするとき、最初の二つの数の演算結果を覚えていなければならないだろう。これを覚えておくのがワーキングメモリという訳である。

 また潜在意識というのは、心理学などの教えるところによれば、我々が意識している顕在意識の下には、ずっと大きい潜在意識の領域がある。この潜在意識は、無意識のうちに我々の行動に大きな影響を与えている。だから潜在意識を変えれば、我々の行動も変わるということだ。ただこの潜在意識を変えることはなかなか難しいのだが、速聴はそのための有効な方法であるという。

 ワーキングメモリを鍛えるというところには、いろいろと参考になるようなところも多いが、潜在意識についての部分は、どうも私の心に染み込んでこないのである。

 まあ速聴自体が効果があることは色々なところで聞くので、可変速で再生できるような録音機器を持っている人は試してみるといいと思う。これはといった書物を自分で録音し、高速で再生するのだ。

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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トコトンやさしいSCMの本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)

2022-10-24 10:25:18 | 書評:ビジネス

 

 今の若者には信じられないと思う人も多いだろうが、かって、日本の技術力は世界のお手本だった。どうして日本の製品はあんなに質が良いのかと研究の対象だった。今でもその残り火は残っているものの、次第に沈下していくことは避けられないだろう。

 その原因は色々あるが、端的に言えば、無能な文科省が社会環境の変化についていけないというところがあるのではないか。少子化の進展により、優秀な学生の数は少なくなった。昔は家が貧しければ国立へ行くという選択肢があったのだが、しかし、国立大の授業料を大幅に値上げした結果、その選択肢は事実上なくなった。大学進学率は上がってはいるものの、多くは奨学金という美名の借金をして、勉強よりはアルバイトに励むということになった。

 時代についていけないのは、企業の無能な経営者連中もいっしょである。これまで科学技術者を「やりがい詐欺」で縛り付けて大事にしなかった結果、優秀な人は国内にいても仕方がないと、頭脳流出に拍車がかかった。若者の権利意識は昔より高まり、海外へ移住するというハードルはずっと低くなっているのだ。

 さて、本書の内容だが、タイトルの通り、SCMについて分かりやすくまとめたものだ。SCMとはサプライ・チェーン・マネジメントの略で、生産・流通のプロセスを情報という糸で結んで管理し、効率化を図ろうとするものだ。その源流はトヨタのかんばん方式、ザ・ゴール(ダイヤモンド社)などで知られるイスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット博士の制約理論などと言われる。

 本書には、SCMとはどんなものかという紹介から、そのメリット、実例、導入にあたっての課題、将来展望などを簡潔にまとめたものだ。ひとつのテーマ毎に、見開きで、右に文章による説明、左側に図による説明が掲載されている。

 それでは、SCMは万能で打ち出の小槌的なものだろうか。そんなことはない。SCMは単なるツールなので、使いかた次第なのだ。つまり、うまく使えば成功につながるが、無理につかっても弊害の方が大きいだろう。以前いた会社で、SCMのコンサルタントが、SCMで何でも改善ができるようなことを言っていた。そんな訳はない。明らかにコンサルタントのセールストークなのだが、やとった部署の人間はコンサルタントを奉っていた(心の中では何を思っているかは分からないが)。そりゃ、無理やり適用すればできないこともないだろうが、必ずしも効率的なものができる訳ではないだろう。

 今は第3版まで出ているようだが、私の持っているのは第1版なので、それをレビューの対象としている。ただ、SCM自体は年とともに大きく変わるようなものでもないだろうから、古い版を持っている人は、あわてて買い替える必要はないと思う。これから買おうという人は最新版を買う方がいいだろうが。まあ、この班を読むだけでもSCMの概要は身につくものと思う。だから、自分の業務で改善したらメリットの大きいような部分は適用すればいいと思う。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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