文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

「鳩の巣原理」を使った証明

2016-02-14 19:39:48 | その他数理的考察

 「浜村渚の計算ノート 5さつめ」(青柳碧人:講談社文庫)という本を読んでいると。「鳩の巣原理」というものが出てきた。これは、ディリクレという数学者が唱えたもので、別名「ディリクレの箱入れ原理」とも呼ばれる。この原理は、すごく単純なもので、n個の物をm個(ただしn>m)の箱に入れるときに、少なくとも一つの箱には2個以上のものが入るというもの。これを鳩と鳩の巣で表すと、n羽の鳩とm個の巣があるとき、少なくとも一つの巣には2羽以上の鳩が入ることになる。当たり前のように思えるだろうが、これを使うと数学上の問題が解けてしまうのだ。

 これについて、作品中に次のような問題が出題されている。「座標平面上に5つの格子点が存在するとき、その中点が格子点であるペアが少なくとも一つは存在することを示せ」。これについては、考え方までは書かれているが、解答までは示されていないので、解いてみることにする。なお、格子点とは、座標平面上で、x,y共に整数となる点のことだ。

(解答)
 まず、x座標、y座標の組み合わせは、それぞれが偶数か奇数かにより(奇数、奇数)、(奇数、偶数)、(偶数、奇数)、(偶数、偶数)の4つの組み合わせのどれかになる。格子点が5つある場合には、鳩の巣原理により、少なくともどれかの組み合わせには、2つ以上の格子点が入ることになる。

 ここで中点とは二つの座標を足して2で割ったものである。同じ組み合わせに入った2つの格子点のx、y座標は奇数同士か偶数同士になるので、x座標同士、y座標同士を足したものは必ず偶数となる。偶数は2で割り切れる数なので、それを2で割ったものは整数になるから、2つの格子点の中点もまた格子点となる。

 このように、小説中にちょっとした頭の体操になるような問題が出てくるものは意外に多い。皆さんもそんなものに出会ったら考えてみると楽しいのではないかと思う。

浜村渚の計算ノート 5さつめ 鳴くよウグイス、平面上 (講談社文庫)
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四角数の証明

2016-02-01 13:05:50 | その他数理的考察
 これも「浜村渚の計算ノート 4さつめ 方程式は歌声に乗って 」(青柳碧人:講談社文庫)に出てきた問題だ。

 奇数を1から順番にある数まで足していくと、必ず何かの数の2乗となっているというもの。

 これを数学的帰納法により証明してみよう。

 まずn番目の奇数をan=2n-1とおく。ただしnは自然数とする。

 n=1のとき、an=2×1-1=1=1^2

 n=kのときΣan=k^2が成り立つとすると、

 n=k+1のときΣa(n+1)=k^2+2(k+1)-1=k^2+2k+1=(k+1)^2 となる。(証明終)

 このように、小説などを読んでいる場合になにか考えるネタが出てくれば、それに頭を悩ますことはよい頭の体操になると思う。


浜村渚の計算ノート 4さつめ 方程式は歌声に乗って (講談社文庫)
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フルハウスのできる確率とストレートフラッシュのできる確率

2016-01-31 20:39:21 | その他数理的考察

 同じく「浜村渚の計算ノート 4さつめ」(青柳碧人:講談社文庫)にジョーカーを除いた52枚のトランプから5枚を引いたときに、フルハウスのできる確率は、ストレートフラッシュのできる確率の何倍かという問題があった。これも計算してみよう。

 まず52枚のカードから5枚を抜いたときにできる組み合わせの数は、

 52C5=2598960(通り)

 次にフルハウスになる組み合わせだ。

 同じ数のものを3枚ひく組み合わせは、同じ数4枚中3枚が同じで、これが13通りあるから

 4C3×13=4×13=52(通り)

 また残りの2枚が同じ数になる組み合わせは、同じ数4枚のうち2枚が同じで、これがスリーカードとなった数とは違う数の12通りあるから

 4C2×12=6×12=72(通り)

 よって、フルハウスになる確率は

 (52×72)/2598960×100(%)=0.144(%)


 次にストレートフラッシュになる確率を計算しよう。

 ロイヤルストレートフラッシュを除けば、ひとつのマークでストレートになるのは、A~5から9~Kの9通り。

 これが4種類あるから、ストレートフラッシュになる確率は、

 (9×4)/2598960×100(%)=0.00139(%)

 よって、ほぼ100倍の開きがあることが分かる。



浜村渚の計算ノート 4さつめ 方程式は歌声に乗って (講談社文庫)
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モンティ・ホール問題

2016-01-31 14:00:00 | その他数理的考察

 「浜村渚の計算ノート 4さつめ」(青柳碧人:講談社文庫)を読んでいると、モンティ・ホール問題が出てきた。有名な問題であり、他の本でも紹介されているのを見たが、一言で言えば、条件付き確率を扱ったものだ。

 どんなものか簡単に紹介しよう。モンティ・ホールとはクイズショーの司会者の名前だ。この番組では、解答者に3つのドアの一つを選ばせる。当たりの賞品は、自動車だ。このクイズの特徴は、解答者がどれか一つのドアを選んだ後に、モンティ・ホール氏が残りの2つのドアから一つ(これは外れ)を開け、一度だけ選びなおしのチャンスを与えるということ。

 問題は、モンティ・ホール氏がドアを開けた後で、選びなおしをしたほうが得か、それとも変えないほうが得かというものだが、当時、数学界を巻き込んで大論争になったそうだ。

 一見選びなおそうが、なおすまいが、当たる確率は変わらないと思いそうだが、実は違う。選びなおした方が、当選率は2倍になるのである。このことを簡単に解説してみよう。


 最初に選んだドア    残りのドア   (●;当り  ○:外れ)

①    ●          ○ ○


②    ○          ● ○            

 この問題は上のように、2通りに分けられる。①最初に選んだドアが当りの場合と、②外れの場合だ。ここで2種類の確率を定義する。P(a)とP(b/a)だ。P(a)は結果がaになる確率。P(b/a)は、aという条件の元でbとなる確率だ。そしてa、bには、いずれも1(当り)または0(外れ)のどちらかの値が入る。

 まず解答者が選択を変える場合だ。

 ①の場合は、最初に当りを選ぶ確率は1/3であり、変えてしまったら必ず外れてしまうから、最初に当りを選んだ場合に選択を変えて当たる確率は

 P(1)×P(1/1)=1/3×0=0 となる。

 ②の場合は、最初に外れを選ぶ確率は2/3.モンティ・ホール氏が開けたドアでないほうは、必ず当りになるから

 P(0)×P(1/0)=2/3×1=2/3 となる。
 

 次に、選択を変えない場合だ。

 ①の場合も同様に

 P(1)×P(1/1)=1/3×1=1/3

 ②の場合は、 
 
 P(0)×P(1/0)=2/3×0=0

 これらより、選択を変えたほうが当たる確率は倍になることが分かる。本書中にも一応の説明は書いてあるが、少しまだるっこしい観もあるので、きちんと数式を使って説明してみた。 なお、P(b/a)は条件付き確率と呼ばれている。最近これを使ったベイズの定理に関することが書いてある本を時に目にするが、これらは、ウン十年前から既に知られていたものだ。私は場合は、大学3回生の時に学んだ「情報理論」で知った。なお、これは当選確率がどうなるかの問題であり、変えれば必ず当たるということではないので、くれぐれも間違えないように。


浜村渚の計算ノート 4さつめ 方程式は歌声に乗って (講談社文庫)
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「対偶」という概念

2015-11-09 10:21:02 | その他数理的考察

 私は、勉強のために、他の人のブログをよく巡回しているのだが、小飼弾氏のブログ「404 Blog Not Found」の「社会科学を真の科学に - 書評 - 偶然の科学」という記事に、ちょっと気になる表現があった。小飼氏は、いわゆるアルファブロガーと呼ばれており、一般にはあまりなじみはないかもしれないが、ネット界の住人にはかなりの人気を誇っている人だ。

 記事自体は、書評記事で、それ自体はどうこういうこともないのだが、気になったのは、次の部分。

<本書の原題は"Everything is Obvious* Once You Know the Answer" 「全ては自明--あらかじめ答えを知っているなら」というのは、対偶をとれば "Till you know the answer, nothing is obvious" 、「答えが分からぬうちは、自明なものなどなにもない」となる。>(記事中から引用)

 この「対偶」という言葉の使い方である。最初の文章は、文章は逆に書かれているが、「AならばBである」という命題として整理すれば、以下のようになるだろう。

 「あらかじめ答えを知っている」→「すべては自明である」

 このとき、この命題の対偶は、「BでなければAでない」ということなので、上の命題では、否定の場合の言葉の使い方に気をつければ、

 「すべてが自明というわけではない」→「あらかじめ答えを知っているわけではない」

が対偶となるはずだ。

 なお、最初の命題の逆が成り立たないことは、例えば1936+2057なんという計算を考えてみればいい。この答えをあらかじめ知っている人はまずいないだろうが、計算して出てきた答えは、異論をはさむ余地のないような自明なことだろう。

 さらに、「A→B」のとき、この命題が真なら、AをBであるための「十分条件」、BをAであるための「必要条件」と呼ぶが、これも時に間違って使われているのを目にする。高校数学の範囲だが、なかなか難しいものだ。

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「『酸素入り水』に効果なし」の記事を読んで

2006-09-08 18:05:30 | その他数理的考察
 私は、知らなかったが、「酸素入り水」というものが人気になっているということである。調べてみると、水500ml中に30mg程度の酸素を溶かしたものらしい。goo ニュースによると、国立健康・栄養研究所が医学論文を調べたところ、飲んだ「効果」が確認されたケースはなかったという。

 この30mgというのは、成人男子の1回の呼吸で得られる量の約1/5であるという。500mlも飲んでも、1回多く呼吸した方がましだとすれば効果は期待できないであろう。それに酸素を取り入れるのは肺の働きであって、胃腸の働きではないのである。

 まあ、信じるものは救われると言うから、一概に否定はしないが、自分の頭でよく考えてみることが大切である。

 (参考)
 暇つぶしに、30mgの酸素が、本当に成人男子の1回の呼吸で得られる量の約1/5であるかを計算してみた。


 成人男子の肺活量は3000~4000mlらしいが、いつも肺の中全部の空気を吐いたり吸ったりしているのではなく、通常の呼吸で出入りする量は1回につき500ml程度とのことである。

 空気の20%が酸素なので、1回の呼吸で吸い込む酸素は
  500×0.2=100ml

 ところで、酸素分子1モルが32gで22.4lだから、30mgの酸素は、

  0.03/32×22.4=0.021l⇒21ml

 なるほど、5分の1だ。
 

風と雲の郷 本館はこちら 
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