「浜村渚の計算ノート 5さつめ」(青柳碧人:講談社文庫)という本を読んでいると。「鳩の巣原理」というものが出てきた。これは、ディリクレという数学者が唱えたもので、別名「ディリクレの箱入れ原理」とも呼ばれる。この原理は、すごく単純なもので、n個の物をm個(ただしn>m)の箱に入れるときに、少なくとも一つの箱には2個以上のものが入るというもの。これを鳩と鳩の巣で表すと、n羽の鳩とm個の巣があるとき、少なくとも一つの巣には2羽以上の鳩が入ることになる。当たり前のように思えるだろうが、これを使うと数学上の問題が解けてしまうのだ。
これについて、作品中に次のような問題が出題されている。「座標平面上に5つの格子点が存在するとき、その中点が格子点であるペアが少なくとも一つは存在することを示せ」。これについては、考え方までは書かれているが、解答までは示されていないので、解いてみることにする。なお、格子点とは、座標平面上で、x,y共に整数となる点のことだ。
(解答)
まず、x座標、y座標の組み合わせは、それぞれが偶数か奇数かにより(奇数、奇数)、(奇数、偶数)、(偶数、奇数)、(偶数、偶数)の4つの組み合わせのどれかになる。格子点が5つある場合には、鳩の巣原理により、少なくともどれかの組み合わせには、2つ以上の格子点が入ることになる。
ここで中点とは二つの座標を足して2で割ったものである。同じ組み合わせに入った2つの格子点のx、y座標は奇数同士か偶数同士になるので、x座標同士、y座標同士を足したものは必ず偶数となる。偶数は2で割り切れる数なので、それを2で割ったものは整数になるから、2つの格子点の中点もまた格子点となる。
このように、小説中にちょっとした頭の体操になるような問題が出てくるものは意外に多い。皆さんもそんなものに出会ったら考えてみると楽しいのではないかと思う。
浜村渚の計算ノート 5さつめ 鳴くよウグイス、平面上 (講談社文庫) | |
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