博物館経営論 (放送大学教材) | |
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放送大学教育振興会 |
放送大学のテキスト、「博物館経営論」(佐々木亨/亀井修:放送大学教育振興会)。私が、履修した、同名の科目で使われたものだ。タイトルの通り、博物館の「経営」とはどのようなことに留意して行うべきかということについて、詳しく説明したものである。なお、ここでいう「博物館」とは「動物園」や「美術館」なども含んだ、広い意味でのものである。
博物館には、4つの業種特性があるという。すなわち、「装置産業」、「流行依存産業」、「メディア産業」。「公共サービス」である。博物館の経営には、これら4つが特性がすべて絡んでいるため、経営が難しいというのが本書の主張だ。しかし、本当にそうだろうか。どのような企業にとっても、置かれている環境は千差万別で、それぞれに経営の難しさがある。経営の難しさというのは、業種特性だけから来るのではなく、その企業が置かれている個別の環境にも大きく依存している。
しかし、博物館にとって、「経営」という概念が重要なことは、間違いない。一般に博物館は、事業収入が運営費を下回るというインカムギャップが発生している。国公立の博物館の場合は、このギャップは税金で補われることになるのだ。市民の立場からは、できる限りの効率的な経営を望むのは当然のことだろう。
そうはいっても、博物館と言うのは、その街のステイタス・シンボル的なところもある。立派な博物館があるというのは、その街の文化度を表しているとも言えるだろう。だからこそ、博物館は、税金を注ぎ込むのに相応しい価値があることを訴え続けていかなければならないのだ。
本書では、まず博物館と社会との関係、組織や人材、行動規範などを概説した後、博物館の経営手法、指定管理者制度危機管理、博物館における連携といったことについて色々な例を示しながら説明している。更に、外国での事例として、イギリスとアメリカの博物館事情についても記されている。本書を読めば、博物館を経営するとはどういうことなのか、おおよそのイメージがつかめるだろう。
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