仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣 | |
吉田 幸弘 | |
あさ出版 |
本書は、仕事が早く終わる人と終わらない人の習慣を最初に端的に表し、それからその解説を行うというスタイルで書かれている。その内容は、「時間の使い方」、「人間関係」、「仕事術」、「思考法」、「感情との付き合い方」といったものである。ただし内容は、オフィスで働いている人や営業社員を想定して書かれているので、工場のライン業務で働いているような人には当てはまらないことも多いかもしれない。
内容については、基本的には賛成したいようなことが多いので、いくつか紹介してコメントしてみよう。
まず、「早く終わる人は貯金箱に500円玉から入れ、終わらない人は1円玉から入れる」(p26)というものだ。これは、仕事が早く終わる人は、大きな仕事をするまとまった時間を、まず確保するというものである。大きな仕事の合間にできたスキマ時間に小さな仕事を片付けるというものだ。でも仕事が早く終わらない人は、小さな仕事から先に手をつけるのである。
この考え方には基本的には賛成だが、少し付け加えたい。著者は大きな仕事の合間にできるスキマ時間に小さな仕事を片付けると言っているが、一つの大きな仕事にも様々なステップがある。一つのステップが終わった時に、気分転換に小さな仕事を片付けるのもありだと思う。なぜなら人間の注意力はそれほど持続しないので、途中で目先を変えることにより全体のパフォーマンスを上げるのだ。
そして「早く終わる人はスタートダッシュし、終わらない人はラストスパートする」(p30)というものは全面的に賛成だ。締め切りが迫って作りだすと、上司と方向性が違ったり、成果物の品質の方にも疑問が湧く。早く手をつければ、色々調べられるし、何より方向性を上司に確認しながら行うことができるので、全体的な作業時間は少なくなる。
面白いと思ったのは、「早く終わる人は1人で昼休みを過ごし、終わらない人はみんなとランチに行く」(p50)だ。今はボッチ飯とか酷いのになると便所飯とかいうものがあるらしいが、私に言わせれば飯くらい一人で食べたいというのが正直なところ。それを集まって食べたいというのはなんとも情けない。本書は昼食後の仮眠も勧めているが、私も会社勤めしているころはやっていた。これをやらないと、午後から頭痛がしてくるのだ。
次に、「早く終わる人は「何を言ったのか」を重視し、終わらない人は「誰が言ったのか」を重視する」(p68)というもので、これはよくあるのではないかと思う。本書には、契約社員の言った案よりベテラン社員の言った案を採用しようとして部長から叱責されたアホ課長の例が出てくるが、管理職になったら、誰が言ったかでなく内容で判断したいものである。
諸手を上げて賛成したいのは、「早く終わる人は下の人からも学び、終わらない人は上の人からだけ学ぶ」(p89)である。管理職、特に課長になったらこの考えでないと務まらない。仕事はチーム単位で来るので、絶対に一人では片づけられない。そして実際に仕事を担当している人の方が、実務を離れて長い上の人よりは知恵を持っていることは多いのである。
もうひとつ、「早く終わる人は堂々とする、終わらない人はアリバイづくりをする」(p116)というのがあるが、これは上司の能力も関係してくる。成果物がなかなか出てこないのに、いつも夜遅くまで仕事をしている(ふりをする)ような人がいる。要するに能力がないだけなのだが、上司に見る目がないと「あいつはいつも遅くまでがんばっている」と間違った評価をしてしまう。そして、それに引きずられて、職場はどんどん疲弊していく。くれぐれも部下の人事評定をする立場になったら、そのようなアリバイづくりに惑わされてはならない。
このように、本書には、部下だけでなく上司としても参考になることがいっぱい詰まっている。仕事を少しでも楽にしたい人、単にハッパをかけるだけの無能上司にはなりたくない人にはお勧めの一冊だ。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。