文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

天才の栄光と挫折

2025-02-26 09:36:14 | 書評:学術・教養(人文・社会他)

 著者の藤原正彦さんはご両親が新田次郎さん、藤原ていさんと有名な小説家だ。ご自身はお茶の水女子大で数学を教えておられ、現在は名誉教授である。天才都言っても、分野によっていろいろあるが、ここで言う天才とはご自身が数学者らしく数学の天才のことである。だから、将棋の天才とか野球の天才などは入っていない。本書に収録されているのは
・アイザック・ニュートン
・関孝和
・エヴァリスト・ガロア
・ウイリアム・ハミルトン
・ソーニャ・コワレフスカヤ
・シュリニヴァーサ・ラマヌジャン
・アラン・チューリング
・ヘルマン・ワイル
・アンドリュー・ワイルズ
の9名。
 ご自身でゆかりの地を訪れたり、関係者に話を聞いたりして本の内容に深みを持たせている。よく日本人は改良するのはうまいが、独創性に欠けると言う人がいるが、本書を読むと本当は日本人はものすごく独創的なことが分かる。まあ、そういう人に限って独創性とは縁遠いのだろう。どんな民族にも独創的な人はいるものだ。ただ言葉の面で日本人にハンデがあることは否めない。本書にはひどいパリのホテルの話があったが、もしかするとこのあたりが日本人が過少評価されている原因があるのかもしれない。
 しかし数学の天才というのにガウスが入っていない。あまり挫折ということとは縁がなかったためかなあ。
☆☆☆☆
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ゆるキャン△ 6,7

2025-02-20 21:14:05 | 書評:その他


 女子高生たちの繰り広げるゆるゆるキャンプ物語もやっと7巻目。。静岡県から山梨県に越してきた各務原なでしこが、彼女が入った本栖高校の野外活動サークル(通称野クル)の大垣千明、犬山あおいやソロキャンパーの志摩リン、帰宅部の斉藤恵那たちとユルユルキャンプを行うお話である。登場人物が野クル顧問の鳥羽先生も含めてのんびりのほほんなのである。

 6巻ではなでしこがキャンプの資金をつくるためアルバイトを始める。アルバイト先を探すのになでしこたちが住んでいる身延市にはなかなかない。そこで、アルバイト先を見つけるのに一役買ったのがなでしこ姉の桜さん。

 一方、千秋とあおい、恵那は山中湖で冬キャン。しかし、十分な下調べをしてないので、あわや事故に。そこに思いがけない助けが入る。なんでも十分な調査をしないでいきなり本番というのは危険だ。3人は冬キャンの怖さを身をもって味わったに違いない。

 7巻ではなでしこの初ソロキャン。でもどこか頼りないなでしこにリンちゃんやなでしこ姉の桜さんが心配すること。果たしてなでしこのソロキャンは無事に終わるのか?でもいくらなでしこが頼りないからって、みんなちょっと心配しすぎじゃない。
☆☆☆☆










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役に立たない読書

2025-02-18 14:30:09 | 書評:学術・教養(人文・社会他)

 著者の林望さんを知っている人も多いと思う。作家で大学でも教えた経験を持つ国文学者でもある。本書はその林望さんによる読書論。まず共感したところを上げておこう
 
大切なのは、考え考え読んでいくこと(p9)

 この考えには諸手を挙げて賛成したい。ただ読み散らかしているだけでは自分の身にもならないし教養もつかない。でも考え考え読むというのは学術的な本を前提にしていると思われる。ただ楽しみで読んでいるような人にとっては、あまり考え考え読むと話の流れを阻害してしまうという弊害もある。

 
現代国語の時間に、グループ学習というのが行われていたのは、私にとって、まったく迷惑な話でありました。(p65)

 私は学校でグループ学習をやった記憶はないが、色々な研修でグループ討議をやらされた覚えがある。結構研修のデフォになっているようだが、あれは講師の時間つぶしで、同じような知力でないとまったく効果がないと思う。本当に迷惑だった。

 
「課題図書」は意味がない、これは私の信念です。(p68)

 課題図書というものはこの本を読みなさいと指定してくるものだ。しかし金子みすゞの言うように「みんなちがってみんないい」のである。だから自分の好きなものを読めばいいと思う。

 ただし林望さんの読書はかなり偏っている。日本の古典偏重なのだ。
 
私は翻訳書は読みません(p9)

 
何百年も、ものによっては千年以上も読み継がれてきた古典文学ほど面白いものはありません。(p120)


 私は林さんとはまったく興味の方向が違うようだ。林さんのあげる本は私にとっては全く面白いと感じられないのである。また科学関係のものは初めから選択肢には上がらない。私のような理系育ちの人間とは合わない点も多いが、共感できるところも多いというところか。
☆☆☆☆
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ばくおん!! 11,12

2025-02-15 11:32:31 | 書評:その他


 女子高生×バイクというコンセプトで描かれているばくおんもこれで11,12巻目。丘乃上女子高等学校のバイク部を中心とした話である。主な登場人物は、2年生で主人公の佐倉羽音同じく2年生の天野恩沙、鈴乃木凜、三ノ輪聖、1学年下の中野千雨、そして年齢不詳で、留年回数も不詳の来夢先輩。ちなみに凜はバイク部員ではないが、ほぼバイク部のみんなと活動している。女子高生×バイクというとヤンキーを連想するかもしれないが、どちらかというと部員たちはほんわかとして可愛らしい感じだ。

 第11巻では、聖のライバル?であるお嬢様?が出てくる。髪型が縦ロールでいかにもという感じなのだが、実は梨農園の娘で本名豊水(とよみ)というのだがラフランスと名乗っている。その豊水の家が作ったのがバイク乗りの楽園・バイ敬園。要するに色々なゲームが揃った巨大なゲームセンターなのだが、おいてあるゲームが笑える、笑える。

 12巻ではみんなでお伊勢参りに行くのだが、そこで不思議なことが起こる。思わずナンセンスギャグと言いそうになるくらいぶっ飛んだ話もあるのだが、全体的にコミカルでなんとも面白い。

 ときおり挿入される「にいはん!!」という話。静岡の女子高生の話で、今のところ羽音たちとはかかわりがないが、こちらもなんとも面白い。
☆☆☆☆








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定年後の知的生産術

2025-02-13 21:17:06 | 書評:学術・教養(人文・社会他)

 著者の谷岡さんは、犯罪学やギャンブル社会学、社会監査論などを専門とする学者で大阪商業大学の教授を経て学長をされ、2005年から大阪商業大学などを傘下とする学校法人谷岡学園の理事長をされている。

 谷岡さんが訴えているのは、定年後は「クリエイティブ・シニア」を目指そうということだろう。クリエイティブ・シニアとは、本書の定義によれば比較的高年齢の人々のうち、知的生産に生きがいを感じる人々のことである。

 本書が教えることは、谷岡さんの考える「教養」とはどういったものか、「教養」をつけるためには「考える時間枠を確保する」こと。情報特にマスコミやお役所からのものにに踊らされないようにすること、論文の書き方、著作としてまとめることなど。

 特に心に残ったことを一つ紹介しよう。共通一次(その後いろいろと名前の変遷はあったが)についてだ。当時著者の父は私大の学長をしていたが、共通一次には反対だったそうだ。「私学には建学の精神がありそれにあった自分達の欲しい学生を自分達のテストで決めるのが本来の姿だ。」という理由からだ。それに対して当時の文部省は「決して強制ではない。」と答えている。ところが学部・学科改変や定員変更の届の度に「お宅は共通一次をどう利用しますか。」という「質問の形をとった無形のプレッシャー」をかけるというのである。

 私など、あれは何のためにあるのか分からない。難関と言われるところは大抵2次試験があるし、そうでないところは教員の問題作成能力がどんどん落ちていく。碌な効果はない。おまけに行うのが、雪で交通がマヒする可能性が高い一番寒い時期である。声を大にして言いたい。あれは不要なだけでなく受験生にいらない負担をかけるものだ。どうして不要論がもっとあがらないのか不思議である。

 ひとつだけ言うとしたら、タイトルに「定年後」とある。確かに定年後のことも若干書かれてはいるが量としては少ない。しかし定年後とはいわずに今日から心がければいいような知的生活へのヒントは沢山あると思う。
☆☆☆☆





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ポーション頼みで生き延びます! 続3

2025-02-11 18:05:14 | 書評:その他

 本書は、FUNAさんの原作小説をコミカライズしたものだ。続3になっているが、九重ヒビキさんによるものが9巻あるので実態としては12巻目にあたる。FUNAさんは今3つほど長編を書いているが、いずれもコミカライズとアニメ化がされている。3つとはこの「ポーション頼みで生き延びます!」の他「私、能力は平均値でって言ったよね!」、「老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます」の二つである。いずれも現在進行形で「小説家になろう」で掲載されている。

 本書は、九重版に比べると、ちょっとコミカルな面が強いような気がするが、主人公のカオルは、美少女だが目つきが悪いという設定なので、園心版の方が原作に近いかなという感じである。

 この3巻で描かれるのは、カオルが手をかしたマリアル女子爵を取り込もうとする王族や貴族そして神殿勢力たち。カオルはそれに同行して、二度とそんな気が起こらないようしっかりと(女神?実は行為生命体)の力を見せつける。

 そしてもう一つはルエダの残党たちの動き。ルエダと言えばかっては女神セレスティーヌの名を勝手に騙り、当のセレスティーヌから全否定され、滅びた国だ。この辺りにFUNAさんの宗教観が見え隠れすると思うのは私だけか。この世界は女神がおり、ほとんどの人間が帰依している。しかしルエダの残党連中は自分達に都合がいいように女神の言葉を捏造している。さてこの結末はどうなるのか。
☆☆☆☆









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学問の発見

2025-02-09 09:39:21 | 書評:学術教養(科学・工学)

 著者の弘中さんは数学者でありフィールズ賞を獲得した人だ。フィールズ賞といえば数学界においてはノーベル賞なみに権威のある賞だが、ノーベル賞ほどは騒がれないようだ。おまけに4年に1度で、対象年齢が40歳以下の若い数学者に与えられるなど結構制約が多い。賞金もノーベル賞に比べるとずっと安い。ちなみにノーベル賞には数学部門はないので純数学者は受賞しにくい。経済学でさえ出来た(厳密にはノーベル賞ではないが)のに、科学の女王足る数学部門がないのはなんとも不思議なことだ。

 弘中さんとは出身県が同じで、大学も学部は違うが同じということで、勝手に親近感を抱いている。おまけに私の出身県にある国立大の学長も務められている。本書は1982年10月に刊行された「学問の発見」(佼成出版社)の写真等の一部を変更したうえで、講談社ブルーバックスの1冊として初版が2018年7月に刊行された。

 本書に書かれているのは、広中さんの学問論・人生論、広中さんの取り組んだ数学の分野そして広中さんの半生。これから学問の道を志す若者などには、いろいろと参考になりそうなことが書かれている。

 一つだけ紹介しよう。どのうように勉強すればいいのかという問いに対する広中さんの答えだ。
「まずは自分で考えてみること」(p3)
書いてある本を探すのではなくて、まずは自分で考えるのだ。(p4)


 ところが今の教育はこの反対をいっているように思う。例えばアニメなどで学生が勉強会をしている場面では、「ここはこの公式にあてはめて」なんて言っているのが良い証拠だ。数学は公式に当てはめればいいと思っている人は結構多いのだろう。難関大の学生や出身の芸能人がクイズ大会に出て、知識を披露しているのを時折目にする。これは単に覚えていることをいかに早く思い出せるかを競っているのだろう。考えるという要素はどこにも見当たらない。

 ともあれ知的活動というものに興味がある人には示唆に富んでいる本だと思う。
☆☆☆☆









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ゆるキャン△ 4,5

2025-02-07 17:50:32 | 書評:その他


 女子高生たちの繰り広げるゆるゆるキャンプ物語、大人気のゆるキャン△の4,5巻。静岡県から山梨県に越してきた各務原なでしこが、彼女が入った本栖高校の野外活動サークル(通称野クル)の大垣千明、犬山あおいやソロキャンパーの志摩リン、帰宅部の斉藤恵那たちとユルユルキャンプを行うお話である。出てくる女子高生たちが、なんとも愉快なのだ。

 印象に残ったのは、次のエピソード。まず4巻だが、ついに野クルに顧問が出来た。グビ姉こと鳥羽先生だ。酒が手放せないキャラとして描かれているが、アル中は大丈夫なのだろうか。ちょっと気がかりである(笑)

 5巻ではリンちゃんが雪で原付では身延へ帰れなくなり、ちょうどなでしこが浜松のおばあちゃんのところに行くので、そちらに。

 浜松と言えばうなぎだが、なでしこと一緒に入ったうなぎ屋でその値段にびっくり。持ち合わせではぜんぜん足らないのだ。血の気が引くリンちゃんだが、実はなでしこパパがうなぎをリンちゃんに食べさせるために、なでしこにお金を持たせていたので、りんちゃん無事に浜松のうなぎを味わえた。

 なでしこのおばあちゃんちでなでしこの幼馴染の土岐綾乃と知り合う。二人はバイク仲間として、結構気が合うようだ。二人のバイク旅行なんかありそうな予感。
☆☆☆☆










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落日のパトス16

2025-02-05 12:54:40 | 書評:その他

 この作品は、(元)女性教師と(元)教え子の禁断の愛?を描いたものだ。漫画家をやっている青年藤原秋の隣に歳の差夫婦が引っ越してくる。その妻の方が秋の高校時代の教師仲井間真(旧姓 祐生)だった。(BLとかじゃないので、ダンナの方ではないので念のため。)

 この真先生、あの道はダンナだけしか知らないが、歳の差婚だけあって欲求不満気味。本人がエロいということもあるが、たぶん今がその道の盛りなのだろう。でも旦那はあまり相手にしてくれない。今回も久しぶりにダンナといっしょにクリスマスと喜んでいたのだが、なんとドタキャン。

 そんなことが積み重なり、秋と真は次第にいい中に。いろいろエロいことはやっているが、1線は超えていない。越えそうで超えないというのが艶々さんの芸風? でも最後に一気に・・・。今回もそういう展開なのだろうか。

 秋の担当編集者の宮ヒナコ。彼女もなかなかぶっ飛んでいるのだが、今回も取材で愛知県まで秋と真の不倫旅行を計画している。「も」と書いたのは、前回も不倫旅行を計画し、秋と真はあわやというところまで行ったのだが、隣室で寝ていたヒナコの何かに呪われてるんじゃないかというような寝相の悪さで、何もなかった。

 今回真はライバル?で、秋の大学時代の後輩で漫画家の神保まさみに声をかけている。果たして勝つ?のはどちらか(笑)
☆☆☆☆








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オロチの郷、奥出雲

2025-02-03 18:35:29 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 本書は、「鬼棲む国出雲」から続く「古事記異聞シリーズ」の2冊目にあたる。主人公は橘樹雅(たちばなみやび)という日枝山王大学に通う女子学生。大学4年で某一流企業への就職を希望していたが、彼女の就職活動は全廃。新学期から大学院へ通うことになった。研究テーマは「出雲」。

 興味があった水野史比古教授の主宰する民俗学研究室に所属することになっているが、肝心の水野教授は1年間のサバティカル・イヤーということで留守中。

 この水野研究室の面々が変人だらけなのだ。教授の水野も変わっているといえばいえるのだが、准教授の御子神伶二と助教の波木祥子のコンビは雅の目からは最悪である。なにしろ御子神は見てくれはいいが、口を開けば棘だらけの言葉が飛び出すのである。波木の方は一日中資料に目を通していて、用事があって声をかけても。挨拶をしても完全に無視されてしまう。この二人、大学でこそ生きていけるが、普通の社会人にはなれないだろうなと思うのは私だけだろうか。

 さて本書の内容だが前回出雲の神社を回った雅は、出雲に関する見識を深めるため、今回は奥出雲まで足を延ばしている。奥出雲というのはヤマタノオロチ伝説の舞台となった地である。

 高田ミステリーの特徴は、古代の出来事と現代の事件がクロスオーバーしていることだろう。今回も雅は奥出雲で起きた事件に巻き込まれる。しかし他の作品にも言えることだが、こういう原因で殺人事件を起こすのならもう狂信者としか言いようがない。極めて特殊な人しか事件を起こすまでには行かないだろうと思うのだが。まあ事実は小説より奇なりというので、もしかしたら結構いるのかな。
☆☆☆







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