文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:平家物語

2014-09-16 15:11:45 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
平家物語 (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店


<祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす>

 有名なこの書き出しで始まる「平家物語」だが、原文で読みとおした方は少ないのではないだろうか。かく言う私も、興味はあるのだが、とてもそのような時間は取れない。しかし、一般的な解説書ではなんとなく物足りない。そんな方に薦めたいのが、この石母田正による「平家物語」(岩波新書)。現在は、割と軽めなものも多いように思うが、昔は岩波新書を書くとなると、著者は渾身の力を込めたと聞く。本書もそんな感じが見てとれる一冊で、かなり古い本ながら、「平家物語」の勉強をする方には、必読書とも言えるだろう。

 「平家物語」を最初に作ったのは、信濃前司行長という中流貴族と思われている。しかし、語りものという性格上、多くの人の手で増補されていることは、想像に難くない。今となっては、どの部分がオリジナルなのかは分からないが、本書によれば、この物語は元々は「治承物語」と呼ばれており、3巻構成だった可能性が高いらしい。それが、次々に増補されて出来上がったのが、現在に残る「平家物語」なのだ。

 「平家物語」には、運命という問題が大きく取り上げられている。この物語の作者は、運命に逆らって戦いもがいた多くの人間に興味を持ち、それを物語にしたことで、人の営みを無意味と考える思想と戦っているという。

 「平家物語」は、3部に分けて読むべきだそうだ、第1部は清盛、第2部は義仲、第3部は義経が物語の中心人物であり、中でも清盛は、最も作者が力と興味を注いだ人物のようだ。平家物語には、悪人の清盛と人格者の重盛の対比が見られるが、重盛のような人物では歴史は動かない、清盛のように、運命など自覚せず、最後まで生の執着にとらわれてこそ、歴史を作る事ができるというのが著者の考えである。

 本書は、この「平家物語」から、どのようなことが読み取れるのか、どういった視点で読めば良いのか、読んでいくためのフレームワークを提示し、必要な知識を示しながら、「運命について」、「平家物語の人々」、「平家物語の形式」、「合戦記と物語」という4つの視点から解説していく。そして、時に批判的なことも示しながら、平家物語の文学としての特徴を述べていく。本書を参照しながら、平家物語の原文を読んでいけば、いっそう理解が深まるものと思う。余裕のある方は、ぜひチャレンジしてみて欲しい。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。

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