晴れ、25度、69%
香港島北の上環からセントラルをはさんでワンチャイにいたる一帯は、昔から人が住んでいる土地です。今はビクトリア湾の埋め立てが進んで平地が広くなりましたが、古い写真に見られる、海辺から這い上がるように太平山に向かい家が建ち並んでいる様子は、印象的です。同じ東洋でも日本と違い、建築物は石造です。地震が少ないこともあって、2階建て3階建ての建物です。老朽化した古い建物が壊され、地域全体の再開発が進んでいるのも、こうした古くからの街です。
しばらく足を運んでいないと、急に開けたような空き地になっています。「中和里」はセントラルから上、ハリウッドロードとケンロードの中間に位置します。「里」が付く道筋は袋小路や小路を表します。再開発準備のために、すでに人の住まなくなった建物からはカビ臭い匂いが流れてきます。
道に面した建物の入り口です。こんな薄暗い階段を上ります。
所々人がまだ住んでいます。洗濯物が風に揺れる様子は、どこの町でもどんな場所でも人の生活を感じさてくれるものです。
印刷屋さんの看板が上がっています。セントラルから上向きのこの一帯は、ほんの15年ほど前までは、印刷屋がずらりとありました。オフィスから出る注文を受けるためです。今では、家庭でも印刷できる時代になりました。夏の強い日差しの中、輪転機の廻る音が懐かしく思い出されます。
おばあさんたちが腰掛けているのは、この町の古くからのコミュニティーセンターの前です。中はクーラーもないので外に椅子を持ち出しています。お盆の頃になると、ここには大きな社が建ち、町の家内安全をみんなで祈ります。
人がまだ住んでいる家のバルコニー、こんな鉄のバルコニーもほとんど姿を消しました。左右両脇には、植木鉢用の支柱まで付いています。この家が新しかった頃は、とてもしゃれたバルコニーだったことでしょうね。
空き家になった家からも、未だに人の営みが伝わってきます。見出し写真の窓は3階部分。カーブのある窓が香港に来た当初は憧れでした。この窓から今日のように清々しい朝、誰かがこのバニアンツリーの緑を眺めたことでしょう。遠い昔の映画の一コマのような気がします。