曇、21度 福岡
香港の日の出は、5時半ごろですが、まだ真っ暗な4時すぎからセミたちは鳴きはじめます。もちろん、雨の日は鳴きません。不思議なことに雨が降り始める前になると鳴き止みます。鳥より早くに鳴き止みます。今の時期のようにいつ雨が降り出すか分からない時は、このセミの声に耳を澄まして走ります。セミの声がピタッと止むと、雨が来るので家に向かいます。三月の終わりごろから九月の終わりまで、たくさんのセミが鳴いてくれます。
セミが好きです。長い年月地中にいて、地上にでて来るとたった一週間の短い命です。その一週間を鳴き続け、次の世代を残して息絶えます。生き様が潔いと思います。
先日は、セントラルの町中で、真っ昼間に蝉の声が聞こえます。ビルの壁にしがみついて鳴いているに違いありません。上を見上げても蝉の姿を見つけることなんて出来ません。それなのに、蝉の声のする方に目を向けてしまいます。
これだけセミが鳴いているのに、セミの抜け殻を見ることは滅多にありません。そのわけが分かったのはここ4年ほどのことです。このセミの抜け殻、漢方薬として使われています。「蝉退」と書いて、はと麦や麦穂の乾かしたものなどと一緒に煎じて飲むのだそうです。解熱、特に子供のために処方されると聞きました。セミの抜け殻、そのままを使うそうです。きっと、セミの抜け殻を専門に集めて売っている人がいるのでしょう。抜け殻にお会いできないはずです。
モモさんの散歩の時に見つけたセミの抜け殻です。 次の日も、同じ道の別のところで見つけました。探しているわけではないのに目に付きます。背中の割れ目を見ていると、健気な奴だなと思います。
私の実家は、昔からたくさんのセミがいました。夏の間は、そこかしこにセミの抜け殻だらけです。 母を施設に預けたのは4年前、次の夏、人の住まなくなった実家に戻ると、玄関の柱に見つけたセミの抜け殻です。実家の改築も進んでいます。家の次は、庭周りを作り替えてもらいます。すでに、見上げるほどの大きな金木犀が移転されたと聞きました。今から、実家に向かいます。今年もまた、セミの抜け殻が私を待っててくれるはずです。