曇、12度、92%
庭のあちこちに花が咲き始めました。この家に帰国した3年前の春、庭に咲いた花は一本のタンポポだけでした。大きな大きなタンポポでした。綿毛になるまでモモさんとじっと見つめて過ごしました。
庭の花を切るのは忍びない、出来るだけ咲いているそのままで枯らしてやりたいと思います。でも、間違って折ってしまったり、強風で倒れたり、刈り込まなくてはいけなかったりすることがあります。そんな時はひと花残さず家に飾ります。
数日前、2日間も強い風が吹きました。チューリップが数本横倒しになっていました。お天気になって自力で起き上がるものもありますが、倒れたままのチューリップを思い切り切りました。 「モモさん、お庭の花ですよ。」
ビオラの寄せ植えがもっさりとして来ました。徒長した部分をズッパリと刈り込みました。ビオラの花は食べれるのですが流石に花ばかりムシャムシャとは出来ません。小さなブーケを作って生けてみました。 外では香りがないと思っていたビオラが束ねて家に持ち込むと優しい甘い香りがします。私が匂っているとココさんもやって来ました。
花が家にあるとそれだけで心が華やぎます。しかも庭の花です。満ち足りた気持ちで過ごせます。私一人、庭の花から幸せをもらっては申し訳ありません。義母はすでにふた月以上、施設から一歩も外に出ていません。3階の自室からは隣の公園の桜は見えたはずですが施設内に鉢植えの花があるのを見たこともありません。そこで、チューリップを2本切りました。 洗い物、繕い物を届ける時、荷物の上に乗せて職員の方に手渡しました。「水切りも済ませてありますから。」
家に帰ってしばらくすると義母の明るい声の電話がありました。入所当初施設に一輪挿しを持って行きました。ちょうどの長さだったそうです。義母の喜ぶ声を聞くと私もまた嬉しくなります。庭からの贈り物のおすそ分けです。
いよいよ日本中に「緊急事態宣言」が出されました。気持ちが塞ぐこともあるでしょうが、明るい花たちから私は元気と心の落ち着きをもらっています。