マリヤンカ mariyanka

日常のつれづれ、身の回りの自然や風景写真。音楽や映画や読書日記。手づくり作品の展示など。

『ミスター・ピップ』

2010-04-22 | book
『ミスター・ピップ』 ロイド ジョーンズ著 
     大友りお訳 2009年 白水社

作者はニュージーランドの人、
舞台はブーゲンヴィル島
この小さな南の島につい最近まで、
すさまじい暴力の嵐が吹き荒れたことを全く知りませんでした。

物語はブーゲンヴィル島で一人の男が子どもたちに
ディケンズの「大いなる遺産」を毎日一章づつ朗読するところから始まります。
島の人や子どもたちに次々襲いかかる恐ろしい出来事の中でどうやって生きていけばいいのか、「大いなる遺産」の主人公ピップの物語を心に刻みつけて生きる力にしていく一人の少女が主人公です。

創造力を失った軍隊が暮らしを破壊し人々の命を奪い、
貶めていくその愚かさがきわだちます。

独立を求めるブーゲンビルの革命軍とパプアニューギニアの政府軍の戦いは泥沼化し、
島はもはや立ちなおれないほど疲弊していきます。
そんなにも過酷な事態になったのはこの島が「銅」を産出するからなのです。
現在国連の介入で一応武装解除になったらしいですが、
銅山の公害も大きな問題になっているようです。
私はそんなことも知りませんでした。

しかしこの物語はそのような背景やディケンズの「大いなる遺産」を知らなくても
充分物語の中に入り込んで、マティルダによりそうことが出来ます。
「大いなる遺産」が大好きな私は物語が何層にもなったこの作品に
改めて「物語の力」を知らされて、深い感動を覚えました。

若い人にぜひとも読んでもらいたい本です。

コメント
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