夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『あの日の声を探して』

2015年05月03日 | 映画(あ行)
『あの日の声を探して』(原題:The Search)
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ベレニス・ベジョ,アネット・ベニング,マクシム・エメリヤノフ,アブドゥル・カリム・マムツィエフ,
   ズフラ・ドゥイシュヴィリ,レラ・バガカシュヴィリ,ユーリー・ツリーロ他

“昭和の日”前日、映画と本と音楽が大好きなお姉様お兄様方と一緒に
北新地の“il Pepe”で宴会。
このメンバーで集まると、必ず本やお土産の交換会になります。
今回は、私がちょっとハマってまとめ買いした“ゆで落花生”と、
お借りしていた本、無理やりお貸ししたい本などを持って行き、
帰りは身軽に帰れるだろうと思っていたら甘かった。
往路より重たいがなというぐらい、持参した頭陀袋がいっぱいになり、
しかし相当酔っぱらっていたおかげで重いと感じることもなく帰ることができました。
美味しいお料理とワインと楽しい話でご機嫌。

1人1本ぐらいのワインを空けたぐらいの飲み量だった翌日。
「お酒をちゃんぽんすると悪酔いする」というのは酔っぱらいの戯言だと思っています。
単純に何をどれだけ飲んだかわからなくなっているだけやんか。
飲んだ量とアルコール度数で計算してみれば、きっとちゃんぽんのせいではないはず。

……と思ってはいるのですが、自然派ワイン、いわゆるビオワインを飲んだときは、
そうでないワインを同量飲んだときよりもあきらかに体が楽なんです。
この日のお店も自然派の取り扱いが多かったからなのか、
すんごく酔っぱらって終電で帰ったにもかかわらず、翌朝わりと元気。
わりと元気ではあるものの、遠くの劇場へ行くのはしんどくて、
TOHOシネマズ梅田にて2本ハシゴすることに。

『アーティスト』(2011)で話題をさらったフランス人、ミシェル・アザナヴィシウス監督。
その次の『プレイヤー』(2012)はちっとも面白くありませんでしたが、
今回はフレッド・ジンネマン監督の名作『山河遥かなり』(1947)にインスパイアされた作品だとか。
本作と原題が同じく“The Search”だった『山河遥かなり』は、
ナチスによって母親と引き離され、その恐怖ゆえに声を発することができなくなった少年が、
心優しきアメリカ兵の青年に拾われて、人を信じる心を取り戻し、
また、母親が懸命に息子を探して旅をする物語でした。
舞台を変えたリメイクとも言える本作。
シリアスな作品だと寝てしまうのではと懸念しつつの選択でしたが、これは本当に観てよかったです。

1999年、ロシア軍に侵攻されたチェチェン
9歳の少年ハジは、両親が殺されるところを窓越しに目撃する。
両親とともにいた姉ライッサはその場で泣き崩れているが、すぐに彼女も殺されるだろう。
ロシア兵士が村からいなくなった頃を見計らい、
ハジはまだ赤ん坊の弟ヴァクを抱きかかえて旅に出る。

泣きやまないヴァクを見知らぬ家の前に置いてノック。
温かそうな女性がヴァクを家の中へ連れて入ったのを見届けてから旅を続ける。
同様に村から逃れた人びとの車に乗せられて町へ。
いっさい言葉を発しないハジを周囲は心配、
赤十字の責任者であるヘレンと面会することになるが、
その後、ハジは待合室をこっそり抜け出してしまう。

抜け出したものの、行くあてはもちろんないし、おなかがぺこぺこ。
うろうろするハジの姿を目撃したのは、EU職員の女性キャロル。
彼女は人権委員会に所属し、フランスから実態調査にやってきていた。
キャロルはハジを自宅へ連れ帰り、食事を与える。
しかし、自分の名前を言おうともしないハジに手を焼きっぱなしで……。

このハジの物語と並行して描かれるのが、ロシア人の若者コーリャの物語。
チェチェンの紛争とは無縁に日々を送っていたのに、
路上でマリファナ所持で捕まって強制入隊させられます。
最初は戦死した兵士や自殺した兵士を棺桶に入れる仕事を担当させられ、
やがては前線へ出るようにと命じられますが、彼の変貌が興味深い。
上官のリンチに耐えるうち、要領を学ぶ。
遺体に話しかけるシーンが印象的で、まともなのか気が変になっているのかわかりません。
人を殺す行為に対してだんだんと感覚が麻痺してくる過程が凄い。

ハジの表情と言葉、そして弟を必死に探すライッサの行動に心を揺り動かされます。
キャロル役のベレニス・ベジョとヘレン役のアネット・ベニングも素晴らしい。
過労でいらつくヘレンが、報告書なんてクソくらえ、
もっと役に立つことがあるはずだとまくしたてるシーンは圧巻。
アネット・ベニングって凄い女優だとあらためて思いました。

平和ボケしていてはいけません。

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