『イニシエーション・ラブ』
監督:堤幸彦
出演:松田翔太,前田敦子,木村文乃,三浦貴大,前野朋哉,森岡龍,矢野聖人,藤原季節,吉谷彩子,
松浦雅,八重樫琴美,大西礼芳,佐藤玲,山西惇,木梨憲武,手塚理美,片岡鶴太郎他
昨日、TOHOシネマズ梅田にて2本ハシゴ。その1本目。
乾くるみ(こんな名前だけど♂)の原作を読んだのはもう何年も前。
その叙述トリックに見事に騙され、最後の1行を読んだときに「えっ!?」。
そうか、読んでいるときにおぼえた違和感はこのせいだったのかと唖然。
ここまでヤラレタ~!と思った小説はなかなか見当たらず、痛快。
笑ってしまうぐらいお見事でした。
さて、本だからこそできたと思えるトリックを、堤幸彦監督が映画化するとおっしゃる。
しかも予告編を観れば、「原作とは異なるエンディング」という触れ込み。
え~、あのエンディングだから面白いのに、異なっては駄目でしょう。
きっと失敗にちがいないと苦笑いするつもりで観に行ったら、
おみそれいたしました、よくできているじゃありませんか。
心に残る作品とは言えないけれど、娯楽作品としては相当楽しめました。
どう書いてもネタバレになりそうなので、知らないまま観たい人は読まないでください。
バブルまっただ中の1980年代後半、静岡。
就職活動中の男子大学生・鈴木(亜蘭澄司)は、人数合わせに呼ばれた合コンで、
歯科助手のマユ(前田敦子)に一目惚れ。
ルックスも体型もファッションもイケてない鈴木にチャンスはないと思われたが、
意外にもマユのほうから積極的なアプローチがあり、交際に発展。
マユに釣り合う男になりたい一心で、鈴木は懸命に「見た目」を磨いてゆく。
大学を卒業して就職したイケメンの鈴木(松田翔太)は、
東京への転勤を言い渡され、マユとは遠距離恋愛に。
週末には東京から静岡へ車を走らせ、マユとデート。
しかしこれを苦痛に感じはじめた頃、同僚の美弥子(木村文乃)からコクられて……。
原作と映画の両方とも、上記あらすじの前半が【Side-A】、後半が【Side-B】という構成。
Side-AとBといえばカセットテープ。
私は鈴木たちとまさに同時代に同年代だったものだから、出るもの出るものにニヤニヤしてしまい。
ケータイのなかった時代、家の電話は黒電話で、好きな人に電話するときはもっぱら公衆電話を利用。
いまだにケータイを持っていない私は今もテレホンカードが財布の中に。
そして現在乗っている車でも相変わらずあの頃のカセットテープを聴いています。
ここから完全ネタバレです。
つまりはマユの二股物語。
Side-Bの鈴木とつきあっていたマユは、遠距離恋愛になった寂しさからかどうかは知りませんが、
手近にいた冴えないSide-Aの鈴木ともつきあいはじめ、
名前をまちがって呼ばないようにと、両方同じあだ名で呼びます。
カセットテープの再生開始位置で鈴木との交際開始時期が示されていたはず。
原作を読んでいると、Side-Aの時点でさまざまな伏線に気づくことができます。
指輪が本当は誰からもらったものなのかとか、体調が悪いのは実はこうだったからとか、
クリスマスディナーのキャンセルはどういう事情から出たのかとか。
原作を読まずに映画を観たとしたら、原作を読んだときのような違和感をおぼえながら進んだかも。
あれ?就職先はその会社じゃなかったような気がするけど、とか、
あれ?物理学じゃなくて数学専攻じゃなかったっけ、とか、
あれ?いま買ってもらったばかりのワンピース、前にも着ていなかったっけ、とか。
そして、違和感をおぼえた理由が明らかになるエンディングにスッキリしたことでしょう。
「たっくん」と「たっちゃん」、これだけでびっくりさせてくれた原作は凄いですが、
どちらも「たっくん」と呼ばせておいて、たっくんふたりを鉢合わせさせる映画版、
これはこれでいい手だなぁと感心しました。
月日だけ示されれば、前半の続きが後半だと思い込んでしまう面白さ。
まさか後半が先にあり、途中から同時進行の物語だとはなかなか気づけません。
Side-Aの鈴木が見た目を磨いてSide-Bの鈴木になったと思ってしまうのですねぇ。
いや、なんぼダイエットに成功しても松田翔太にはならんやろ(笑)。
『男女七人秋物語』の出演者だった片岡鶴太郎と手塚理美が美弥子の両親役で特別出演。
このドラマにはほとんど思い入れのない私ですが、曲は全部楽しすぎる。
ちなみに、Side-Aは、“揺れるまなざし”(小椋佳)、“君は1000% ”(1986オメガトライブ)、“Yes-No”(オフコース)、
“Lucky Chanceをもう一度”(C-C-B)、“愛のメモリー”(松崎しげる)、“君だけに”(少年隊)。
Side-Bは、“木綿のハンカチーフ”(太田裕美)、“DANCE”(浜田省吾)、“夏をあきらめて”(研ナオコ)、
“心の色”(中村雅俊)、“ルビーの指環”(寺尾聰)、“SHOW ME”(森川由加里)。
エンディングロールの80’s図鑑も超楽しい。
YAMAHAのJOGとか。私はHONDAのTACTYに乗っていたけれど、
確かにJOGは流行っていましたねぇ。
バブル期に20代前半だった方、ぜひ。
そうそう、Side-Aの鈴木を演じる役者の名前が亜蘭澄司というのも粋でした。
アラン・スミシーのわりには存在感がありすぎる(笑)。
監督:堤幸彦
出演:松田翔太,前田敦子,木村文乃,三浦貴大,前野朋哉,森岡龍,矢野聖人,藤原季節,吉谷彩子,
松浦雅,八重樫琴美,大西礼芳,佐藤玲,山西惇,木梨憲武,手塚理美,片岡鶴太郎他
昨日、TOHOシネマズ梅田にて2本ハシゴ。その1本目。
乾くるみ(こんな名前だけど♂)の原作を読んだのはもう何年も前。
その叙述トリックに見事に騙され、最後の1行を読んだときに「えっ!?」。
そうか、読んでいるときにおぼえた違和感はこのせいだったのかと唖然。
ここまでヤラレタ~!と思った小説はなかなか見当たらず、痛快。
笑ってしまうぐらいお見事でした。
さて、本だからこそできたと思えるトリックを、堤幸彦監督が映画化するとおっしゃる。
しかも予告編を観れば、「原作とは異なるエンディング」という触れ込み。
え~、あのエンディングだから面白いのに、異なっては駄目でしょう。
きっと失敗にちがいないと苦笑いするつもりで観に行ったら、
おみそれいたしました、よくできているじゃありませんか。
心に残る作品とは言えないけれど、娯楽作品としては相当楽しめました。
どう書いてもネタバレになりそうなので、知らないまま観たい人は読まないでください。
バブルまっただ中の1980年代後半、静岡。
就職活動中の男子大学生・鈴木(亜蘭澄司)は、人数合わせに呼ばれた合コンで、
歯科助手のマユ(前田敦子)に一目惚れ。
ルックスも体型もファッションもイケてない鈴木にチャンスはないと思われたが、
意外にもマユのほうから積極的なアプローチがあり、交際に発展。
マユに釣り合う男になりたい一心で、鈴木は懸命に「見た目」を磨いてゆく。
大学を卒業して就職したイケメンの鈴木(松田翔太)は、
東京への転勤を言い渡され、マユとは遠距離恋愛に。
週末には東京から静岡へ車を走らせ、マユとデート。
しかしこれを苦痛に感じはじめた頃、同僚の美弥子(木村文乃)からコクられて……。
原作と映画の両方とも、上記あらすじの前半が【Side-A】、後半が【Side-B】という構成。
Side-AとBといえばカセットテープ。
私は鈴木たちとまさに同時代に同年代だったものだから、出るもの出るものにニヤニヤしてしまい。
ケータイのなかった時代、家の電話は黒電話で、好きな人に電話するときはもっぱら公衆電話を利用。
いまだにケータイを持っていない私は今もテレホンカードが財布の中に。
そして現在乗っている車でも相変わらずあの頃のカセットテープを聴いています。
ここから完全ネタバレです。
つまりはマユの二股物語。
Side-Bの鈴木とつきあっていたマユは、遠距離恋愛になった寂しさからかどうかは知りませんが、
手近にいた冴えないSide-Aの鈴木ともつきあいはじめ、
名前をまちがって呼ばないようにと、両方同じあだ名で呼びます。
カセットテープの再生開始位置で鈴木との交際開始時期が示されていたはず。
原作を読んでいると、Side-Aの時点でさまざまな伏線に気づくことができます。
指輪が本当は誰からもらったものなのかとか、体調が悪いのは実はこうだったからとか、
クリスマスディナーのキャンセルはどういう事情から出たのかとか。
原作を読まずに映画を観たとしたら、原作を読んだときのような違和感をおぼえながら進んだかも。
あれ?就職先はその会社じゃなかったような気がするけど、とか、
あれ?物理学じゃなくて数学専攻じゃなかったっけ、とか、
あれ?いま買ってもらったばかりのワンピース、前にも着ていなかったっけ、とか。
そして、違和感をおぼえた理由が明らかになるエンディングにスッキリしたことでしょう。
「たっくん」と「たっちゃん」、これだけでびっくりさせてくれた原作は凄いですが、
どちらも「たっくん」と呼ばせておいて、たっくんふたりを鉢合わせさせる映画版、
これはこれでいい手だなぁと感心しました。
月日だけ示されれば、前半の続きが後半だと思い込んでしまう面白さ。
まさか後半が先にあり、途中から同時進行の物語だとはなかなか気づけません。
Side-Aの鈴木が見た目を磨いてSide-Bの鈴木になったと思ってしまうのですねぇ。
いや、なんぼダイエットに成功しても松田翔太にはならんやろ(笑)。
『男女七人秋物語』の出演者だった片岡鶴太郎と手塚理美が美弥子の両親役で特別出演。
このドラマにはほとんど思い入れのない私ですが、曲は全部楽しすぎる。
ちなみに、Side-Aは、“揺れるまなざし”(小椋佳)、“君は1000% ”(1986オメガトライブ)、“Yes-No”(オフコース)、
“Lucky Chanceをもう一度”(C-C-B)、“愛のメモリー”(松崎しげる)、“君だけに”(少年隊)。
Side-Bは、“木綿のハンカチーフ”(太田裕美)、“DANCE”(浜田省吾)、“夏をあきらめて”(研ナオコ)、
“心の色”(中村雅俊)、“ルビーの指環”(寺尾聰)、“SHOW ME”(森川由加里)。
エンディングロールの80’s図鑑も超楽しい。
YAMAHAのJOGとか。私はHONDAのTACTYに乗っていたけれど、
確かにJOGは流行っていましたねぇ。
バブル期に20代前半だった方、ぜひ。
そうそう、Side-Aの鈴木を演じる役者の名前が亜蘭澄司というのも粋でした。
アラン・スミシーのわりには存在感がありすぎる(笑)。