夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

今年観た映画50音順〈た行〉

2020年12月28日 | 映画(た行)
《た》
『タロウのバカ』
2019年の日本作品。
父親はいない、母親は育児放棄、一度も学校に行ったことのない少年タロウ(YOSHI)。
無戸籍で自分の年齢もわからない彼はたぶん12歳か13歳ぐらい。
高校生のエージ(菅田将暉)とスギオ(仲野太賀)と仲良くなり、毎日つるんでいる。
タロウというのも本名ではなく、エージとスギオから名前を聞かれたときに
答えなかったら「タロウ」と呼ばれるようになった。
ある日、ヤクザの吉岡(奥野瑛太)から殴られたことを恨みに思うエージが、
スギオとタロウを誘って吉岡に仕返し。
吉岡から奪った鞄の中には実弾入りの拳銃が入っていて……。
不良少年がダラダラと毎日を過ごす映画なのかと思ったら、大森立嗣監督はえげつない。
不愉快なシーンや台詞が多くて、観ているのが非常につらかった。
銃を手にして気持ちに変化が現れるのは『銃』(2018)と同じ。
でも本作のほうが私たちに社会問題をつきつけているように思えます。

《ち》
『ちえりとチェリー』
2015年の日本作品。
中村誠監督は、ロシアの国民的人気キャラクターを基に、
日本で新たに製作したパペットアニメーション“チェブラーシカ”を撮った人。
そんな監督が東日本大震災の被災地の未来に思いを込めて撮ったアニメ。
父親を亡くし、仕事で忙しい母親にあまりかまってもらえない小学6年生の少女ちえり。
彼女にとって、ぬいぐるみのチェリーだけが自分を理解してくれる友だちで……。
心を閉ざしたままだったちえりがぬいぐるみたちと繰り出す冒険。
親子で安心して観られる、かつ、大人の心にも響くパペットアニメです。
1時間を切る短さも子どもと観るのにうってつけ。

《つ》
『ツングースカ・バタフライ サキとマリの物語』
2018年の日本作品。
元陸上自衛官の咲(亜紗美)は、傷害致死事件を起こして服役。
出所後の就職先で陰口を叩かれてブチ切れ、仕事を失う。
窃盗の腕前は一流なのだが、もう悪事に手を染めたくはないと思っていた矢先、
ネグレクトを受けている少女・真理(丁田凛美)と出会う。
出生届すら提出されておらず、ゴミだらけの部屋の中、
玉の輿を狙って男を渡り歩く母親・歌子(加藤理恵)を待つ真理。
少女を救うため、大きな盗みで一発当てる決意をする咲だったが……。
ハードボイルド風なジャケットから想像していたものとはちと違い、
観てよかったと思った1本。
咲役の亜紗美は海外にも熱狂的なファンを持つアクション女優らしく、
確かに彼女のアクションは切れ味抜群。
これが引退作だそうで、過去の作品に遡って観てみたい。
と思って調べたら、経歴が面白い。AV女優だった頃に、
「1970年代のバイオレンス映画の女優の顔」だと言われたって!? なるほど。

《て》
『テルアビブ・オン・ファイア』(英題:Tel Aviv on Fire)
2018年のルクセンブルク/フランス/イスラエル/ベルギー作品。
エルサレム在住のパレスチナ人サラームは、TV局のプロデューサーを務める叔父のコネにより、
人気連続メロドラマ“テルアビブ・オン・ファイア”の撮影現場で、
ヘブライ語の言語を指導する職に就く。
撮影所に行くには毎日検問所を通らねばならないのだが、
ある日ドラマの台詞を考えながら運転していたところ、
不用意に「爆発的」という言葉を発したことから、
危険人物とみなされて車から降りるように命じられる。
イスラエル軍司令官アッシのもとへと連れて行かれて自分の仕事を説明すると、
アッシはサラームのことを“テルアビブ・オン・ファイア”の脚本家と勘違い。
アッシの妻や姑がそのドラマの大ファンだったものだから、
アッシは自分のアイデアを脚本に盛り込むように言いだして……。
宗教的にややこしい地域だから、政府や国民の好みを反映してドラマをつくるのが大変。
すごく面白い作品でした。
「爆発的に美しい」という台詞は女性に対して失礼だというサラームの指摘なども楽しい。
結局どんな台詞に変更されたかというと、「気絶するほど美しい」でした。

《と》
『トンネル 9000メートルの闘い』(原題:Tunnelen)
2019年のノルウェー作品。
ノルウェーの大山岳地帯を貫く長さ9キロのトンネル。
クリスマスを実家で過ごそうと、多くの帰省客がトンネル内を行き来するなか、
1台のタンクローリーが壁に激突し、ほかの車の行く手を阻む形で停車する。
やがてタンクローリーの燃料が流出して爆発、黒煙が漂いはじめる。
救助隊隊員スタインが現場に向かうが、トンネル内のバスに娘エリゼが乗車していることを知り……。
ノルウェーのトンネルには出口がほとんどなくて、
何か事故が起きたときには自己責任だという事実に驚きました。
2011年以降に起きたトンネル事故で助かった人はいないそうな。
本作は実話ではないけれど、そうした事故をモチーフに描かれているらしい。
トンネル内事故のフィクションなら、ほかにいくらでも面白いやつがありますが、
ノルウェー作品だという面白さはあります。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今年観た映画50音順〈さ行〉

2020年12月28日 | 映画(さ行)
《さ》
『3人の信長』
2019年の日本作品。
1570(永禄13)年、蒲原氏徳(高嶋政宏)や瀬名信輝(相島一之)は、
自らの主君だった今川義元を織田信長に討たれ、信長への復讐に燃えていた。
そんな折、金ヶ崎の戦いにより信長が敗走中であることを知って追いかける。
ところが、信長を探し回って各地から帰還した今川軍の残党は、
それぞれに信長を捕らえたと言う。なんと信長が3人も。
1人が本物、2人は影武者のはずだが、3人とも我こそが信長だと主張。
本物の信長の首を持って主君の墓前に報告したいから、影武者の首まではねるわけにはいかない。
どうにか本物を見定めようとするのだが……。
3人の信長にTAKAHIRO、市原隼人岡田義徳。村人役に前田公輝
ナメてかかっていたら意外に面白くて、どんでん返しも鮮やか。
DVDでじゅうぶんという気はするけれど、楽しませてもらいました。

《し》
『守護教師』(英題:Ordinary People)
2018年の韓国作品。
プロボクサーでチャンピオン、引退後はコーチを務めていたギチョルは、
カネのためなら八百長も厭わない協会に腹を立て、暴力沙汰を起こす。
妹の口利きにより、女子高の体育教師の職を得るが、この田舎町はどこか変。
学費等の滞納者から取り立てる役も言いつけられ、
カジンという生徒に話しかけたさい、彼女の親友スヨンが行方不明であることを知る。
事件に巻き込まれた可能性もあるというのに、教師も警察もなぜか無関心で、
ギチョルに余計なことをするなと言わんばかり。
カジンと共にスヨンの行方を探すうち、政治的陰謀が露見して……。
いかつい体つきの心優しきおっちゃん。そんな役どころが多いマ・ドンソク
『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)以来、彼が大好きです。
想像していた以上にドロドロのおっかない物語。面白かった。

《す》
『スケート・キッチン』(原題:Skate Kitchen)
2018年のアメリカ作品。
ニューヨーク郊外に暮らす17歳の少女カミーユは母親と二人暮らし。
スケートボードで負傷し、母親からスケボーを禁止されるが、
カミーユにとってスケボーがすべて。辞めることなんてできない。
母親の外出中、ひそかに家を抜け出し、女子のスケボーチームに仲間入り。
それがバレて余計に母親との仲がこじれるのだが……。
タイトルからフィギュアスケートのほうをなんとなくイメージしていて、
もっと幼い少女たちがスケートリンクでくるくる回っているのかと思ったら大違い。
実在する女子スケボーチーム“スケート・キッチン”のメンバーを起用して撮ったとのこと。
母親との確執、彼氏を盗った盗られたの仲間割れ、片想いなどなど。
まるでドキュメンタリー作品のようです。

《せ》
『生理ちゃん』
2019年の日本作品。
吉本興業と各テレビ局のコラボで映画を製作する沖縄国際映画祭恒例企画、
“TV DIRECTOR’S MOVIE”の1本としてフジテレビと共同で製作された作品。
女性ファッション誌の編集部に勤務する青子(二階堂ふみ)、
その会社の清掃員として働くりほ(伊藤沙莉)をメインに、
彼女たちのもとへ月イチでやってくる生理を擬人化。
生理の重さによって“生理ちゃん”の大きさが異なっていて面白すぎる。
特大の生理ちゃんとつきあう育子とりほが、生理ちゃんを背負ったり台車に乗せたりして歩く姿とか、
毎月その日が来るたびに憂鬱になる女性には気持ちがよくわかるでしょう。
男性には決してわからない世界です(笑)。
女性の生理ちゃんに対して、男性には童貞くんと性欲くんが襲いかかるのにも笑った。

《そ》
『葬式の名人』
2018年の日本作品。
大阪府茨木市の市制70周年の記念事業として製作された作品。
同地にゆかりのある文豪、川端康成の諸作をモチーフにしています。
シングルマザーの雪子(前田敦子)は高校時代の同級生・吉田(白洲迅)の訃報を受ける。
集まったのは、母校で教師を務める豊川(高良健吾)ほか、同じく同級生だった面々。
野球部のエースだった吉田をみんなで見送ろうと、
豊川たちは棺桶ごと吉田を母校へと運び込むのだが……。
茨木高校出身者のための作品といってよいでしょう。
実は雪子の元夫が吉田という設定で、学区トップの茨高のこと、
大学へ進学しなかったのは雪子と吉田だけという話も出ます。そうだろうなぁ。
茨高卒業生や茨木在住者はもちろん楽しいと思いますが、
そうではない大阪の人間は、おそらく妙な大阪弁に気を取られて集中できません。
大阪弁をしゃべれない役者を起用しても、役者自身がツライと思うんですけど。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする