夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ブータン 山の教室』

2021年10月02日 | 映画(は行)
『ブータン 山の教室』(原題:Lunana: A Yak in the Classroom)
監督:パオ・チョニン・ドルジ
出演:シェラップ・ドルジ,ウゲン・ノルブ・へンドゥップ,ケルドン・ハモ・グルン,ペム・ザム他
 
梅田で2本ハシゴした後、阪急電車宝塚線に乗って売布神社駅に向かいました。
宝塚唯一の映画館シネ・ピピアは駅の真ん前の公共複合施設ピピアめふの5階に入っています。
ここって、全国でも珍しい公設民営方式の映画館だということを初めて知りました。へ~っ。
 
なかなか観る機会のないブータン作品で、2019年の制作。
今春から、シネ・リーブル梅田、シネ・ヌーヴォ、京都シネマ等々、
あちこちで上映されていましたが、どこもすでに終了。
観ようと思ったらもう売布まで行くしかありません。
でも行くには車でも電車でも意外と時間がかかる。面倒くさい。
 
しかし、私が映画好きだと知っている勤務先の先生から会うたびに聞かれるのです。
「観に行きましたか!?」。
前週末にもわざわざ私のいる部屋へ顔を出して聞いてくださり、
この先生がここまで言わはるなら、やっぱり観に行かなあかんやろと思って。
 
いや~、よかった。面倒くさいと思いながらも観に行って本当によかった。
同じ先生にお聞きして観に行った『羊飼いと風船』(2019)は若干寝ましたが(笑)、
この『山の教室』は大好きです。
 
ブータンの首都ティンプーで祖母と二人暮らし教師ウゲン(♂)。
教師になるには5年間の研修が必要で、今はその4年目。
しかしウゲンはそのまま教師になるつもりなど毛頭ない。
オーストラリアに渡ってミュージシャンとなることを夢見ている。
 
そんなウゲンだから、日々の教師生活もいたって不真面目。
あるとき呼び出され、研修の最後にルナナという村への赴任を命じられる。
 
そこは、ブータンでいちばんどころか世界でいちばんの僻地にあると言える学校
標高は5千メートル近くあり、ティンプーから辿りつくまでに8日間もかかる。
電気も通っていないこの村へ、致し方なく向かうウゲンだったが……。
 
仕事柄、ブータンに触れることがたまにあります。
まずティンプーで暮らしているときの祖母の様子に興味が湧く。
彼女が手に持っているのはマニ車。
くるくると回しながら孫に説教しているのが可笑しい。
 
せっかく祖母の望む安定した公務員生活を送れそうなのに、ウゲンはやる気ゼロ。
彼の言動は日々をナメているとしか思えなくて、
嫌々ルナナに向かう途中も、迎えに来てくれた村人ミチェンたちに横柄です。
 
ウゲンが履いているのは、都会で買った「泥にも雨にも強い靴」のはず。
だけど、彼が歩けば靴は泥だらけで靴下までグチョグチョ。
対するミチェンたちが履いているのは安っぽいゴム長で、
でもこれがどこも汚れずにものすごく綺麗なまま。凄いことですよねぇ。
 
村まであと2時間という場所に村人が総出で迎えに来ている。
それすらも鬱陶しそうだったウゲンは、着いてすぐに「無理だから帰る」と言います。
教師の到着を心待ちにしていた村長ですが、無理強いはしません。
8日間歩き通しだったミチェンたちが体を休めたらまた送りますと言う。
そうこうしているうちにウゲンの気持ちが変わってゆくのはお決まりのパターン。
 
お決まりのパターンなのに清々しい。
『北の果ての小さな村で』(2017)も僻地の村に赴任を命じられた教師が戸惑う話でしたが、
あっちは教師自体が当てにされていないところがありました。
こっちは教師が誰からも求められています。
学びたい気持ちがいっぱいで、でもルルナという村のことをこよなく愛している。
学びたいのは村を出て行きたいからでは決してなくて、
医者や教師になれば、自分がこの村の役に立てると思っている子どもたち。
 
皆に引き留められてウゲンが村に残るとか、
オーストラリアまで一度は行ったけれど帰って来るとか、
そこまで描いていないところも好きでした。
今後は先生のお薦めをとっとと観に行きたいと思います。(^o^)
 
余談ですが、シネ・ピピアに併設された喫茶店の名前が“バグダッド・カフェ”
どんなところかな~と期待しつつ行きましたが、単に映画館のロビーにある喫茶コーナーでした(笑)。
ネーミングだけでも楽しいから○。ホットドッグセットを食べたよ。

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