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『やまぶき』

2023年01月11日 | 映画(や行)
『やまぶき』
監督:山崎樹一郎
出演:カン・ユンス,祷キララ,川瀬陽太,和田光沙,三浦誠己,青木崇高,黒住尚生,
   桜まゆみ,謝村梨帆,西山真来,千田知美,大倉英莉,松浦祐也,佐野和宏
 
シネ・ヌーヴォにて、前述の『隠された顔』の次に。
スクリーンは同じく小さいXのほう。このちんまりした感じ、好きです。
 
私はお初の山崎樹一郎監督。
大阪生まれの山崎監督は学生時代を京都で過ごし、15年ほど前に岡山県真庭市に移住。
農家としてトマトをつくりながら映画を撮っているという変わり種。
本作はクラウドファンディングで集まった資金をもとに製作を叶え、徐々に公開が広がる。
今後も各地のミニシアターで上映される予定です。
 
岡山県真庭市。
韓国人で乗馬競技のホープだったユン・チャンス(カン・ユンス)は、
父親の会社が倒産して多額の借金を背負ったせいで競技続行を断念。
今はほかの外国人労働者たちと共に採石場で働いている。
 
暮らしは楽ではないものの、恋人の美南(和田光沙)とその娘と三人、穏やかな日々。
チャンスの真面目な働きぶりが評価されて、正社員登用されることに。
喜ぶチャンスと美南たちだったが、想像していなかったことが起きる。
チャンスひとりで出かけた際に落石に直撃され、足に大怪我を負ったのだ。
 
実はその落石を起こしたのは、地元の警察官・早川(川瀬陽太)。
妻を喪い、高校生の娘・山吹(祷キララ)を連れて山にヤマブキを採りに行った折、
無造作に土を掘り起こして投げ捨てた石がチャンスを襲ったのだ。
新聞でその事実を知るが、まさか自分が落とした石だとは言えない。
 
一方、山吹は同じ高校に通う祐介(黒住尚生)からコクられてつきあうことに。
叫ぶことのない無言の抗議活動“サイレントスタンディング”に祐介を誘い、交差点に立つ。
 
「資本主義と家父長制社会に潜む悲劇と希望を描いた群像ドラマ」と言われても、
正直なところ私にはピンと来ません。
だけど、母親を亡くした山吹の「いつか誰かと繋がれたら」という思いや、
正直者がバカを見るみたいなチャンスの不遇には胸が痛くなります。
投げやりになったチャンスが山吹に語るヤマブキの話も深い。
 
小さな幸せを大切に思える、懸命に生きている人たちの物語。
誰もが生きやすい世の中になればいいけれど、そんなふうにはならないのもまた世の中。
こんな映画を撮りつづけてくださいね。

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