夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ALONE/アローン』

2018年06月25日 | 映画(あ行)
『ALONE/アローン』(原題:Mine)
監督:ファビオ・グアリョーネ,ファビオ・レジナーロ
出演:アーミー・ハマー,アナベル・ウォーリス,トム・カレン,
   クリント・ディアー,ジェフ・ベル,ジュリエット・オーブリー他

シネ・リーブル梅田で3本ハシゴの2本目。

アーミー・ハマーという名前を聞くたびに思う。
なんてイカつい名前なんだ。だって、アーミーでハマーですよ?
そんな名前の人だけど、男前は男前、ビシバシ長いまつげ。
そのツラで『白雪姫と鏡の女王』(2012)の奇行が気色悪く、
『君の名前で僕を呼んで』(2017)の男同士の絡みのシーンが生々しかった。
で、観に行くつもりはなかったのに、行ってしまいましたよ、これに。

砂漠で地雷を踏んで身動きが取れなくなる男。
デジャヴを感じたのはたぶん『トラップ』(2014)というフランス作品のせい。
兵士というところもまんま同じなのですけれど、パクリというわけでもなく。

米軍の凄腕スナイパーのマイクは、相棒のトミーとともに砂漠に潜伏。
長い長い時間を費やしてようやくテロリストを暗殺する機会が訪れる。
テロリストに狙いを定めたちょうどそのとき、何やら様子がおかしい。

どうやら今から砂漠で結婚式がおこなわれる模様で、
もしも銃弾を撃ち込めば、新郎新婦まで殺してしまうことになりそうだ。
早く撃てと上官からは無線で命じられ、トミーからも促されるが、
結婚式の場に弾を撃ち込むことなど自分にはできない。
迷っている間にテロリストに気づかれ、退散するしかなくなる。

砂嵐に見舞われながら、5時間歩けば到着するはずの村を目指すが、
途中で地雷原に迷い込み、トミーが爆死。
マイク自身も地雷を踏んで一歩も動けなくなる。

救助を要請したところ、救援隊が到着するのは52時間後とのこと。
昼は灼熱、夜は極寒、獰猛な獣まで現れる環境のなか、意識も混濁してゆき……。

シチュエーションスリラーってどれもそこそこ面白い。
予算が少なくてもつくりやすいのか、B級丸出しのものもたくさん。
なんじゃこれと苦笑いしながらも覚えている作品が多いのです。
『[リミット]』(2010)なんてのはA級だといっていいでしょうが、
B級ならば『フローズン』(2010)とか『クエスチョン』(2011)とか『ATM』(2012)とか。
どれも悲惨すぎて笑ってしまいます。

A級かB級かの線はどこで引くのかと聞かれたら、
簡単に判断するには著名な役者が出ているかどうか。
その役者が出演すると決めたわけですから、まぁA級なのでしょう。
『[リミット]』はライアン・レイノルズ、この『ALONE/アローン』はアーミー・ハマー。
しかし、一応A級入りさせるとして、『[リミット]』よりはつまらない。

混濁する意識のなか、幻聴や妄想を見るわけですが、これがイマイチわかりにくくて。
もっとシンプルにこの状況と戦うハマーを見たかった気がします。
だだっ広い砂漠で使える道具は限られているし、
その点もシチュエーションとして『[リミット]』のほうが面白いのでした。

だけどどちらも嫌だなぁ、車内に閉じ込められるのと、砂漠でひとり動けないのと。

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『オンネリとアンネリのおうち』

2018年06月24日 | 映画(あ行)
『オンネリとアンネリのおうち』(原題:Onneli ja Anneli)
監督:サーラ・カンテル
出演:アーヴァ・メリカント,リリャ・レフト,エイヤ・アフヴォ,ヤッコ・サアリルアマ,
   ヨハンナ・アフ・シュルテン,キティ・コッコネン,エリナ・クニフティラ他

先週土曜日の朝、ダンナがタイより帰国。
洗濯機を回して干し終え、お土産物を分けたら特にすること無し。
晩は北新地で食事の予定で、ダンナはそれまで昼寝モード。
ほなら私はいつもどおり映画に行くかと、各劇場の上映スケジュールとにらめっこ。
シネ・リーブル梅田へ行けば晩ごはんまでに3本観られるやんかいさ。

フィンランドの児童文学作家マリヤッタ・クレンニエミの同名作品を映画化。
おしゃまな女の子ふたりがめちゃくちゃ可愛いファンタジーです。

オンネリとアンネリ、大の仲良し。
オンネリは9人きょうだいのまんなかで、彼女がいようがいまいが両親は気づかない。
アンネリは両親が離婚、父と母の間を行ったり来たり。
家族にかまってもらえないから、いつもふたりだけで遊んで過ごしている。

その日もふたりで歩いていると、水色のとてもとても素敵な家を発見。
いいなぁ、こんなおうちに住みたいなぁと羨ましげに眺める。
すると足下に「正直者にあげます」と書かれた封筒が落ちているではないか。
私たち、正直者じゃないもんねと交番へ届けると、
おまわりさんのリキネンが、「君たちは正直者だよ。君たちのものだ」。
リキネンから渡された封筒を開けてびっくり。中には大金が入っていた。

お金なんて要らないよね。捨てるわけにもいかないから、拾ったところへ返そうよ。
そう考えて水色のおうちの前に戻ると、「売り家」の看板。
売り主のバラの木夫人が、ふさわしい買い手が来るのを待っていたと言い、売買成立。

おうちの中に入ってみると、ふたりのために用意された帽子に服。
お菓子もたくさん用意されていてニッコリ。
こうしてふたりは憧れのおうちで暮らしはじめるのだが……。

なにせ“ムーミン”の国、フィンランドのこと。
ハリウッド映画ともアジア映画ともちがう、なんとも不思議な雰囲気。
ともすれば眠くなってしまいそうなのに、そうなりません。
ふたりを見ているだけでも楽しいし、両隣に暮らす魔女のような姉妹や未亡人、
母親に金の無心をされて困るアイスクリーム屋、
オンネリをこっそりつける弟など、気になる人だらけ。

いくら気の毒なアイスクリーム屋とはいえ、泥棒はあかん。
反省心がまったくなさそうなんだものと思ったけれど、
こういうところは「謝らないハリウッド映画」と似ているのかも。

悪事を働いた人もこうして更生できるように力を貸す。
子どもたちの素直さに惹かれる、教育上とても良い作品。

たまにはこういうのも良いですな。

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『ワンダー 君は太陽』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の22本目@伊丹)

2018年06月23日 | 映画(わ行)
『ワンダー 君は太陽』(原題:Wonder)
監督:スティーヴン・チョボスキー
出演:ジェイコブ・トレンブレイ,オーウェン・ウィルソン,ジュリア・ロバーツ,
   マンディ・パティンキン,ダヴィード・ディグス,イザベラ・ヴィドヴィッチ他

終業後に2本ハシゴの2本目。『空飛ぶタイヤ』を観た後に。

原作は全米ベストセラー小説なのだそうです。
予告編を観ただけで絶対泣きそう。
監督は『ウォールフラワー』(2017)のスティーヴン・チョボスキーで、
『美女と野獣』(2017)の脚本家でもあります。

新生児1万人に1人の確率で見られるというトリーチャーコリンズ症候群(=下顎顔面骨形成不全症)。
生まれながらのこの障害を抱え、27回も手術を受けた10歳の少年オギー。
奇異の目にさらされることを避けて学校へは行かず、自宅学習を続けていたが、
新学期を迎えるのを機会に母親イザベルは学校へ通わせると決める。
父親ネートは反対したものの、オギー自身も登校を決意したのだから覚悟しなくては。

初登校の日、ネートとイザベル、オギーの姉ヴィアは校門まで付き添う。
不安ながらもヘルメットを外し、教室に入ったオギー。
案の定、その顔を気味が悪いと笑われ、誰も近づいてこようとしない。

富裕な家庭に育つ同級生ジャスティンはものすごく嫌な奴。
自宅学習だったオギーに勉強などできるわけがないと上から目線だったが、
オギーはとても賢くて、特に理科の成績では誰も太刀打ちできない。
面白く思わないジャスティンはオギーを徹底的にいじめる。

ところが、友だちなんてできないとあきらめ顔のオギーに同級生ジャックが声をかける。
ジャスティンとその取り巻きの視線など気にしないジャックとオギーは大の仲良しに。
初めての友だちにイザベルも胸を熱くするのだが……。

構成が面白い。
オギーだけに焦点を当てるのではなく、ヴィア、ヴィアの友人ミランダ、ジャックの視点からも。
それぞれの章立てになっていて、悩んでいるのはオギーだけではないことが明らかに。

いじめっ子の描き方がステレオタイプなのはつまらないし、
どうせいい話ならば、いじめっ子なんていっそ要らんやんと思わなくもありません。
アマノジャクゆえ、いい話すぎるという皮肉な見方をしてしまうけれど、いい話はやっぱりいいんだから。
母性あふれるジュリア・ロバーツスケベ鼻(笑)のオーウェン・ウィルソン
こんな前向きな両親だからこそ、オギーが生まれたんだなぁ。

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『空飛ぶタイヤ』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の21本目@伊丹)

2018年06月22日 | 映画(さ行)
『空飛ぶタイヤ』
監督:本木克英
出演:長瀬智也,ディーン・フジオカ,高橋一生,深田恭子,寺脇康文,小池栄子,
   ムロツヨシ,中村蒼,柄本明,佐々木蔵之介,笹野高史,岸部一徳他

ダンナが翌朝タイから帰国するという金曜日。ちょうど1週間前のこと。
この日公開の作品が2本、翌日公開の作品も2本。
フリーパスの期限内に4本とも観るのなら、金曜日に2本観ておきたい。
終業後に観に行くしかないから、家に帰るのは夜中になるけど仕方なし。
体に優しいハシゴが今年のモットーではありましたが、
ここはちょっと無理をして2本観ることに。その1本目。

池井戸潤の原作を読んだとき、最高にシビレました。
読書中にこれほど頭に血が上り、嗚咽しそうになった本はそうそうありません。
WOWOWで放送された連続ドラマW枠のDVDを読了後にレンタル。
めちゃくちゃ面白くて興奮したことを今も覚えています。

そんなドラマの二番煎じといえば二番煎じだけど、
本木克英監督が豪華キャストを起用した本作は、当然面白い。

赤松運送のトレーラーが脱輪事故を起こす。
歩道を歩いていた子連れの母親(谷村美月)がタイヤに直撃されて死亡。
事故原因を調査したトレーラーの製造元のホープ自動車は、
運送会社の整備不良と断定、赤松運送に警察の家宅捜索が入る。

社長の赤松徳郎(長瀬智也)は整備士の門田駿一(阿部顕嵐)を解雇するが、
門田の指導に当たっていた谷山耕次(六角精児)から見せられた整備記録を確認すると、
法定点検よりもよほど細かいチェックを門田はおこなっていた。

門田に詫びて詳細を聴いた赤松は、これは整備不良ではなく、
トレーラーの車両そのものに欠陥があったのではないかと考える。
調査のためにとホープ自動車に提出した部品の一部が返却されておらず、
ホープ自動車カスタマー戦略課長の沢田悠太(ディーン・フジオカ)に電話するが、
沢田は赤松のことをクレーマーと断じて話をしようともしない。

人をひとり殺したくせに責任を転嫁しようとしているとバッシングを受け、
取引先を次々と失ったうえに、銀行からも融資を断られる始末。
それでも赤松は独自に調査を進め、リコール隠しを暴こうとするのだが……。

面白いのは当然なのですけれど、2時間に収められてしまったせいか、
原作やWOWOWドラマ版よりもかなりあっさり。
頭に血が上るのは嫌だなぁと思っていたのに、おかげで上るほどにはならず。

まちがいなくドラマ版よりも豪華なキャストですが、
こうしてみるとドラマ版のほうが好きでした。
映画版よりさらに血が通っているというと言い過ぎでしょうかねぇ。

映画版では赤松運送の専務役を笹野高史
ドラマ版の大杉漣とは甲乙付けがたいところ。漣さんがもういないのが本当に悲しい。
ディーン・フジオカは綺麗すぎて、田辺誠一のほうがよかったかなぁ。
最初は赤松を叩くも真っ当な刑事に、
ドラマ版は遠藤憲一が扮していたのがドラマ版は寺脇康文。これも両者○。
整備士役は映画版のジャニーズJr.らしい阿部顕嵐にイケメン度では全然下でも
ドラマ版の柄本佑のほうがよかった。

と、何かとキャストの比較になってしまいますが、
原作読まずでドラマ版も観ていない人にとってはすごく面白いはずです。
そこはエンターテインメント性に長ける本木監督のこと。
エンディングテーマ曲にサザンまで起用するのですから。

池井戸潤を“半沢直樹”でしか知らない方、
池井戸さんの本の中で私は『空飛ぶタイヤ』がいちばん好きです。
読んでみようかなという方は、“半沢直樹”よりもこちら推し。

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『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』

2018年06月21日 | 映画(あ行)
『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』
監督:李闘士男
出演:榮倉奈々,安田顕,大谷亮平,野々すみ花,浅野和之,品川徹,螢雪次朗他

火曜日、109シネマズのポイント会員デーにつき、1本だけ観て帰る。
職場と自宅の間にある109シネマズは2軒。
どちらでも上映していたけれど、時間がちょうどよかった箕面にて鑑賞。

「Yahoo!知恵袋」の投稿から生まれた漫画とのこと。
監督は『お父さんのバックドロップ』(2004)、『ボックス!』(2010)、
『神様はバリにいる』(2014)の李闘士男。楽しいです♪

都内の会社に勤めるバツイチのサラリーマン、加賀美じゅん(安田顕)。
出張先で知り合ったちえ(榮倉奈々)と結婚、3年目を迎えるところ。

一生を共にすべき相手かどうかは結婚3年目にわかると思っているじゅんは、
ちえと結婚したときに「3年目にあらためて考えよう」と約束していた。
この結婚はこれからも継続していけるのだろうか。

そんなことを考えていたある日、家に帰るとちえが口から血を流して倒れている。
気が動転して慌てまくるじゅんの前で、笑顔で起き上がるちえ。
なんとそれは「死んだふり」。以来、毎日手が込んだ「死んだふり」を続けるちえ。

同僚の佐野壮馬(大谷亮平)に相談すると、寂しいのではないかと言われ、
「死んだふり」につきあってみたりもしたが、いいかげん疲れる。
ひきこもりはよくないと、近所のクリーニング店のパートをちえに勧めるのだが……。

榮倉奈々って、なんか可愛い。
可愛いけれど演技は上手くないなぁと思っていました。
『のぼうの城』(2011)のときなどは特にそう。
時代劇より普通の女性の役のほうがいい。

これはちょっとしたハマリ役で、彼女の愛らしさに泣かされます。
口下手な彼女が態度でもって誰かを元気づけようとするしぐさ。
不妊や夫の無理解に悩む壮馬の妻(野々すみ花)といるときもそうだし、
クリーニング店の店主(品川徹)に向ける顔など、
こりゃ誰が見ても笑ってしまって元気になるだろうという表情。
ちえの父親役の螢雪次朗が昔の話をするところも泣けました。

「どういう答えかは観客の皆さんに委ねます」風のラストはちょっとズルいけど、
そこそこ(笑)仲良しのカップルは、これを見てどう思うか話すのもいいかも。

「聞きゃあいいんだよ。聞いても駄目なら別れりゃいいんだ」。
言わなわからんと思っている私は、じゅんの上司(浅野和之)の言葉に妙に納得するとともに、
「優しい言葉が人を傷つける」というちえの言葉にも感じ入るところがあります。

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