雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

金が敵の世の中 ・ 小さな小さな物語 ( 1783 )

2024-07-05 07:59:50 | 小さな小さな物語 第三十部

新しい紙幣が発行されましたが、すでにご覧になられましたか? 私はまだお目に掛かっていないのですが、テレビの報道を見ていますと、大きな話題を集めているようです。
発行間もない紙幣の番号とか、その番号がぞろ目になっていたり、特殊な並びになっている場合には、新しい紙幣でも高価な値段が付くそうですから、銀行の窓口に行列が出来たのは、それを狙ってのことかと思っていましたら、それはごく少数派で、新しい紙幣を実際に手にしてみたいという、まことに純粋な心根からのようです。
電子マネーなど、様々な決済手段が広がりつつあり、いまさら膨大なコストをかけて新しい紙幣を発行する必要があるのか、などと発言されている人を見たことがありますが、何の何の、わが国には「お札大好き」人間もたくさんいることを証明してくれたようで、嬉しくなりました。

新しい紙幣に描かれている人物が話題を集めているようです。
今回は、一万円札が渋沢栄一さん、五千円札が津田梅子さん、千円札が北里柴三郎さんの三人ですが、いずれも、経済界、教育界、医学界の分野で近代日本をリードした方々が採用されています。
人物像の選定には、喧々諤々の議論があったそうですが、今回のように、近代の方々に登場願うのは、難しいところがあるのでしょうねぇ。
因みに、わが国の紙幣に登場している人物は、前記の三人の他に十八人いるそうです。
列記してみますと、『 神功皇后、日本武尊、武内宿禰、藤原鎌足、和気清麻呂、聖徳太子、菅原道真、二宮尊徳、板垣退助、高橋是清、岩倉具視、伊藤博文、夏目漱石、新渡戸稲造、福沢諭吉、紫式部、野口英世、樋口一葉 』です。
今回分を含めますと二十一人になりますが、さて、あなたはお札を通じて何人の方と会っていますか??
なお、紫式部は、かの有名な二千円札に登場していますが、今回の新札への切り替えの対象になっていませんから、源氏物語と同様に、ロングランが期待できそうです。

お札の歴史となりますと、おそらく、人類の歴史の初期に近い頃まで遡るのではないでしょうか。
石器時代には、マンガなどに登場するような、大きな石のお金を担いでいたかも知れませんし、これもおそらくですが、人々がグループをなし、そのグループ同士が接する機会が出来ると、戦いと同時に物々交換が生まれたのではないでしょうか。最初の貨幣の役割は、珍しい貝や石などや、穀物や布などが担ったのでしょう。
金属貨幣が登場したのは、紀元前670年の頃とされていますが、わが国では、708年に発行された「和同開珎」だと、私など教えられていたのですが、それより以前の683年に「富本銭(フホンセン)」が誕生していたようです。どちらも、どの程度流通したのかは未詳ですが、「和同開珎」の方は、一日分の労働の対価だったという研究もされているようです。
紙幣の発行となれば、海外の例でも、西暦1000年以降のことのようです。

わが国では、その後貨幣は余り発達しなかったようです。
平安時代は物々交換が主流のようで、平安時代の後期になって宋銭が流入するようになって、ごく限られた階層でしょうが、貨幣経済が機能したようです。
その後、通貨に対する様々な危機などを経ながらも、今も私たちにとっては、身近であり、それでいて、すぐに逃げたがる存在として共存し続けています。
今日では、電子マネー的な物のウエイトが増えてきていますが、「金が敵の世の中」と大見得を切るには、やはり、渋沢栄一さんが扮するところの一万円札の方が似合うような気がするのですが・・・。




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