マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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山添春日若宮祭のトヨリ

2009年10月20日 08時00分39秒 | 山添村へ
釣瓶が落ちるように陽が沈み冷気が感じられる山添村春日地区。

真っ暗な道を正装姿の家長がやってきた。

「おめでとうございます」と当屋に挨拶を述べて座敷にあがる。

着物姿の長老は上座、他の方はネクタイを締めスーツ姿で周りを囲むように座った。

今夜は春日若宮神社の祭り当番の役目を決める「トヨリ」の日。

「トヨリ」は当寄りの漢字を充てている。

祭りは「若宮祭典」を正式名称としているが家長の祭りであることからオトナ祭りとも呼ばれている。

当屋にあたればエゾまで逃げ出すくらい散財するからエゾ祭りともいう。

当屋は今夜のために襖や障子、畳を入れ替えた。

家長が集まる座敷は綺麗にしておいた。

美しくするのじゃと笑った当屋さん。

当屋家の手伝いに来ている人は当屋にあたるまで引っ越しをしたいぐらいだとこぼされる。

それぐらいたいへんな祭りがさ来週に行われる。

若宮さんの祭り当番を決めるトヨリは長老の挨拶で始まった。

「みなさん方、参進してくださってありがとう 地区一番の長老ということで進行役を務めます」と発声した。

「正式に当屋をお願いするにあたり祭り当番を決めたい。その前に、決まった役目を記す書記役をこの人にお願いしたい。」と言えば指名された方は一旦は断ったものの承知して、中央に据えられた記録席に着く。

昨年度の祭り記帳を参考にしながら年齢順に読み上げる。

参席者の同意を得たら半紙を折りたたんだ記録紙に墨書する。



記帳する間、参席者はお菓子とお茶で世間話にふける。

手伝いはせわしなくお茶注ぎに回る。

家長の名前を書き上げると今度は年々(ネンネン)さんと当屋を手伝いする若衆四人の周旋方(しゅうせんかた)を指名する。

「この人は次の幕揚げなので外さなあかんから他の人や、相談しとくなはれ」と横やりが入って指名された人は入れ替わった。

「この人なら問題はないと」承諾されて再び記帳する。

この間、一瞬の緊張が走った。



このあとは先日の役員会で決められた神饌の内容や量を書記役が申し上げる。

品目に変化はないが、負担を軽減するよう量を減らされていた。

「それでよろしいか」の問いにうなずく家長衆の承諾を受けて、買い付け、膳の部、当屋外などが決定する。

およそ2時間もかかったトヨリも書記役は大役を終えて席に戻った。

長老は祭り当日の時間などを再確認して、儀式とも思えるトヨリを終えた。

(H21.10. 4 Kiss Digtal N撮影)