マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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桜井市山田の閏年の庚申モウシアゲ

2012年06月03日 08時19分58秒 | 桜井市へ
閏年の庚申さんが行われていると知って訪れた桜井市の山田。

桜井市の安倍から古代の飛鳥(明日香村)へ結ぶ山田道。

斜めに横切る幹道だ。

山田のエリアは広い。

確信が持てない地の探索は諦め気分で歩いてみる。

ふと立ち止まった処にあった庚申石。

整備された竹藪の中。

お花が添えられているから発見できたと思う。

集落に入って家人に尋ねてみた閏年の庚申。

4月の始めに行われたという。

山田は10垣内ある。

それぞれの垣内単位で庚申講があるそうだ。

「昔はそれぞれの組毎にモチ搗きをしたヤドで会食していた」と話すMさん。

会食でよばれる料理を「ゴンザ」と呼んでいた。

「ゴンザ」とはどういう漢字を充てるのであろうか。

それは判らないが、コイモ、ダイコン、コンニャクやチクワなどを煮たものだったそうだ。

「ゴンザ」は「権座」なのか「厳座」なのか・・・。

料理をこしらえるのは婦人たち。

手間がかかるからと、今ではパック詰め料理になった。

ご主人が云うには、かつてヤドにあたったときの庚申杖があるという。

倉庫の奥に納めてあった杖。

それを取り出してくれた。



それには「日 月 木 火 土 金 水 奉納 猿田彦大明神 五穀成就 講中安全 川之垣内 平成十年朔月 四月五日」の文字が残っていた。

平成10年といえば1998年。

旧暦閏年で五月が閏月だった。

四月五日は日曜日だ。

M氏が住む垣内は川之垣内。

山田の垣内には、東出、西出、チャマイ、カンデなどがあるという。

チャマイとは不思議な名称だ。

「チャ」は「茶」だと思うと話す。

調べてみれば「茶屋前」であった。

「チャヤマエ」が短くなり「チャマイ」と呼んだのであろう。

もう一つの「カンデ」もユニークだ。

これも調べてみた。「カンデ」は「上出」であろうか。

探して見るが見当たらない。

「カンジヤ」とすれば、おそらく「鍛冶屋」。

「カジヤ」が訛って「カンジヤ」であるかも知れない。

それはともかく、山田の旧暦閏年の庚申さんは「モウシアゲ」と呼んでいる。

4年に一度と云うがどうも怪しい。

なぜならM家に残されていた杖が旧暦の平成10年であるからだ。

山田ではその年の4月1日にモウシアゲをしていた。

1日は朔日で「農休(のうきゅう)」の日。

毎月一日は農作業を休む日。

仕事休みの日だ。

その日であれば講中が集まることができる。

いつしか朔日は4月初めの日曜日になった。

その日の朝は8時頃から杖を作る。

前述した庚申さんの願文をヤドの人が書く。

それを持って各垣内の庚申さんに参る。

上之垣内講中の8軒が参るのだ。

以前は6軒の営みであったが、新しく加わった家が2軒。

県内の講中は減るいっぽうだけに、珍しい状況である。

そこでお神酒やモチを供えて般若心経を三巻唱えるという。

現在の杖はカシの木。

かつてはハンノキだったそうだ。

参ったあとはヤドで会食をしていたが、現在は料理屋に出かける。

庚申掛軸を掲げる例年の庚申講も簡略されて初庚申だけになったようだ。



山田を散策して目に着いた棒。

庚申塚西側の田んぼに見たような棒が三本立っている。

もしかとすればだが、おそらくカンピョウ干しの棒ではないだろうか。

(H24. 4.10 SB932SH撮影)