マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
すべての写真、文は著作権がありますので無断転載はお断りします。

切幡のフクマル

2014年05月22日 07時47分29秒 | 山添村へ
昨年の正月明けに訪れた山添村切幡の住民宅。

度々、同家で行われる行事を取材させてもらっている。

その日のことだ。

蔵の前に置いてあったマメギが目に入った。

「それはなんですのん」と尋ねれば「大晦日の夕方は前庭に門松を立て注連縄を張る。松のジンを中に詰めたマメギの松明に火を点ける。その場で「フクマール コッコッイ」を3回唱えながら屋内に入って「フク」を家に呼び込む。松明のジンをバサバサと火ばちに落とす」と話していた。

「ただそれだけや」と云っていたフクマル迎えの在り方を拝見したくやってきた。

ご主人は神明神社の宮総代をされている。

家の正月祝いの準備もしなければならない大晦日の日は特に忙しい。

無理なお願いに合間をぬってフクマル迎えをしてくださった。

同家に出かける直前のことだ。

灯りが点いた宮さん下で車を止めようとしたときのことだ。

フロントガラス越しに見えた炎。

数十メートル先に炎が上がったのだ。

もしかと思って慌ててカメラを手にして、その場に走った。

発見したときには人影が見られたが、立ち去ったあとだった。

間に合わなかったその場には藁火の燃えかすがあった。

広がるような燃え方である。

傍には輪っかの注連縄に1個のモチがあった。

作法をされていた人の姿はない。

戻っていかれた家も判らない。

その場を見届けて伺った男性宅。



話していたとおりに松や注連縄があった。

玄関前のニワにも門松を立てていた。

「忙しい、忙しい」と云いながらしてくださったフクマル迎え。

「フクは早よ来てほしい」が大晦日は忙しいと云う。

18時にもなればもう真っ暗だ。



しばらくすれば用意しておいたマメギの松明を持ってニワ下に行った。

一本の注連縄を掛けた門松の脇には予め藁束を敷いていた。

まずは藁束に火を点ける。

火が燃え上がってからマメギの束に火を移す。



「フクマール コッコイ」と3べん、或いは5へん唱えながらソトニワの玄関内に入っていく。



屋内はソトニワ(玄関の間)から半床、そして、シモノマ(下の間)、オクザシキ(奥座敷)、ナンド(納戸)、ナカマ(中の間)からヒロシキと呼ぶ居間に続く屋敷である。

その先がダイドコロになると話す。

火を点けて持って帰ってきたマメギの松明の火を火ばちにバサバサと落とす。



火が点いたジンは落とすように振る。

火ばちの炭に火を落とす。

かつてはダイドコロでしていた。

炭火を絶やさなかったダイドコロは、いつしか火ばちに移り替った。



その火ばちをシモノマ(下の間)に移して玄関を閉めた。

「フク」を招き入れたということである。

年越し・除夜の鐘が鳴る頃、もう一本の松明を持ってきて火ばちの火で点ける。



松明の灯りを持っていって井戸へ行く。

井戸の若水を汲んで雑煮の水にして沸かす。

それで雑煮を作ると話していたご主人。

宮さんにも出かけなくてはならない大晦日の夜。

これ以上、ご迷惑をかけるわけにはいかず失礼した。

宮さん付近にあったフクマルも同じような作法であるのか、いずれは確かめたいと思った。

(H25.12.31 EOS40D撮影)