マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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竜谷のお月見

2015年04月09日 09時06分11秒 | 桜井市へ
旧暦正月七日の宮座行事がある「七日座」を調べていた桜井市の竜谷で出合った老婦人が話していた「お月見」。

お月さんに供えるドロイモの数は「七日座」にだされる「月の数のモチ」と同じだった12個。

家族の人数分のドロイモも供える。

皮を剥いて洗って皿に盛る。

夕方にはカドに供えておくと話していた。

傍らには近くで採取してきたススキやハギも添えると言っていた。

お月見の日は毎年替る中秋の名月日。

いわゆる満月前夜の十五夜の日である。

この日の夜は各家で供える「お月見」。

縁側に供えるところもあれば、窓越しに月を見られる場にする家もある。

竜谷に住むN家ではカドと呼ぶ場に供えると話していた。

その様相を拝見したく立ち寄った夕刻前。

まだ、お陽さんは高く光り輝いていたカド。

母親はススキやハギをガラスの壺に挿して畑に出かけたという息子さんは数年も経てば定年を迎える。

そうすれば母親のあとを継いで畑仕事に従事したいと話す。

母親が作る農作物はとても美味しい。

たくさん作って親戚筋におすそ分けをしているそうだ。



この日は家に居た息子さんが収穫したドロイモの皮を剥いで皿に盛ったという。

白い素肌が現れるまでは皮剥ぎはしなかったので見た目は悪く申しわけないという。

本来なら12個であるが、盛った個数はやや多めの18個になったと話す。

今年の十五夜は30数年ぶりの早め。

遅い年では10月初めにもある旧暦の八月十五日。

県内各地では観月祭の行事はさまざまな場で催されているが、ススキやハギを飾って月見だんごを供える家の行事もまたさまざまである。

昨今ではイモではなく、和菓子屋やスーパーで売っている月見だんごを供える家が多くなった。

都会では間違いなくそうであろう。

農家ではそうではなく昔ながらのドロイモである。

皮を剥いで丸くする。

真っ白な形にした月見だんごはドロイモが原型。

ドロイモはサトイモとかコイモと呼ばれているイモである。

丸くしたイモは月になぞらえている姿。

豊作に感謝して十五夜に供えるのである。

この在り方は「お月見」と呼ばず、「イモ名月」の呼び名がある地域は多方面に亘る。

史料によれば、供えるイモダンゴの数は12個としている吉野町津風呂(鬼輪垣内)がある。

旧暦の閏年であれば、その数は13個にするとあった。

旧暦閏年の大の月数である。

例年であれば12個。

12カ月の一年を現す数であるが、旧暦は大の月が増えて13カ月。

個数が13個になる仕組みは江戸時代までの暦に従っているのである。

今年の平成26年は旧暦閏年。

津風呂で、その後もされているようであれば、是非とも拝見したいものである。

そのような話題提供もさせていただいてN家の「お月見」を撮らせてもらった。

今年は一段と早い9月8日の十五夜。

ハギは小粒であるが花が咲いていたが、ススキは穂もなく茎だけだった。

かつては稲作におけるカドボシもされていた地はお花がいっぱい咲いている。

子供のころはカドが遊び場だったと懐かしそうに話す息子さん。

座行事やマツリのときにはお世話になることだろう。

N家の石垣に咲いていた渡来系ベゴニア属のシュウカイドウ(秋海棠)が美しく、光り輝いていた。

(H26. 9. 8 EOS40D撮影)