マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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三谷菅原神社の花つみ参拝

2017年03月12日 09時02分01秒 | 桜井市へ
人は登場しなくとも「花つみ」の状態を見たいと云った写真家がいる。

一般的にはそういうことを云う写真家は少ないように思う。

そこに人がいなくとも撮った写真で「民俗」を伝える。

それができると思っている写真家の希望を叶えてあげたいと思っていたが・・・三谷には夏休みに入った子供たちが遊んでいただけだ。

参拝することもなく鬼ごっこでもしているような感じだった。

桜井市の三谷で行われている「花つみ」を知ったのは平成25年の7月28日の日曜日だった。

この日の行事名は「お庭造り」。

氏神さんを祭る菅原神社の清掃である。

境内などや地蔵院を綺麗にしてお盆を迎える。

三谷のお盆は8月1日より始まる。

1日から毎日に当番の人が菅原神社の拝殿前に設えた木製の台にシキビを供える。

木製の台は大工さんが作ったと話したのは何年か前にトウヤを務めたKさんだ。

かつては毎年作り替える竹製の台だった。

手間を省くために既製品を作った。

それが木製の台であるが、上部は青竹で囲っている。

四隅に丸青竹。

台になる部分は割った竹を並べる。

四隅にそれぞれ互い違いに端っこを乗せる。

本台となる部分は数本の割竹を並べる。

平成26年に訪れたときは7本ほどだった。

びっしり隙間もなく簾のように並べてプラスチック製の紐で固定する。

四方に立てた丸竹に水を入れる。

そこに何枚かの葉があるシキビがある。

形は花立と同じようなものだ。

水平の台に乗せるシキビに決まりがあると聞いている。

軸から外した葉を九枚並べる。

縦であれば今度は横に九枚並べる。

九×九は八十一。

そういうことから八十一枚の葉を並べる。

そうすると聞いていたが、どうしても枚数が合致しない。



この日も数えてみるが60数枚。

風で飛んだのか、それともなんらかの理由で落下したのであろうか。

三谷の行事取材にお世話になったNさんがいる。

FBにあったお名前は間違いないだろうと判断してリクエストした。

それ以来は私が投稿アップする県内行事にいつも「いいね!」をしてくださる。

この日も忙しくボランティア活動をされている。

初めてお会いしたときは天理市のボランティア活動だった。

最近は三重県名張市の活動もされるようになった。

状況を電話で伝えて青い籠にあるシキビの存在を教えてもらう。

籠に入れてあるのは前日の7月31日にしたものであるかもしれないという。

もしかとすれば朝、夕の2回ではなく、朝、昼、夕の一日3回ではないだろうか。

Nさんが云うには当番は一枚のシキビの葉を入れた箱を廻しているようだ。

家から家へと巡る当番箱が玄関口などに置いてあれば廻りが来たという印しになるそうだ。

その家はM家かU家にあるかも知れないという。

あればそのお家に実状を聞けば正確なことが判る。

そう思って探してみるが見当たらない。

他家を廻っているようだ。

電話口で伝えてくれたNさんは名張でボランティア活動をしながら「三谷」のことを調べているそうだ。

桜井市の三谷には古文書が残されていない。

昔のことを知るにも証しが残っていないのである。

それを補完するには同じ地名をもつ他府県にゆだねなければならない。

Nさんが調べている地は三重県の名張市にあった。

大字は「上三谷」に「下三谷」。

江戸時代は桜井市の三谷と同様に藤堂藩だっただけに何がしかの手がかりがあればと思って活動しているという。

当番の箱を探して長老宅に向かう。

その道中に見つけたヤマユリの花。



萱森のNさんが云っていたタメトモユリではないだろうか。

花が大きく重さで垂れさがる。

葉のつき方からたぶんにそう思うのだが、断定はできない。

仕事から帰ってきたばかりの長老はもうすぐ90歳。

元気な姿で迎えてくれたKさんが云うには、昔は朝、昼、夕にしていたというのだ。

そういえば平成26年の8月1日に訪れたときも下の籠に供えたシキビと思われるのがあった。

青い籠に納められていたのは朝に参ったシキビであった。

朝、昼、夕の参拝は聞き間違いでもなく実際にその通りにされていたのだ。

手水鉢に置いてあるのはたぶんにこの日三度目の夕参りのシキビだと話してくれた。

Kさんがいう通りにあった夕参りのシキビは写真に撮っていたが、いつ来るか判らないこの日の当番者を待ち続けるにはいかず、三谷の地を離れた。

ちなみに三谷の「花つみ」については昭和56年に発刊された『桜井市史 民俗編』に掲載されている。

大字三谷に鎮座する菅原神社の年中行事の項に「葛つみ(花つみ)講」がある。

葛つみ講は「毎年八月一日から八月十四日まで各戸から神社に来て、一日に三回樒を供えている。3回目は夕方ゆえ燈明をもあげて拝んで帰る。この講には“花つみ札”といって大字民の名前を書いた札を入れる箱がある。この箱を、十四日の参拝が終わるとその人の家で保管しておき、次の年に隣家へ回して葛つみ(花つみ)の行事をはじめていくことになっている」と記されていた。

三谷の年中行事それぞれに変化があったと聞いている。

この花つみもそうなのであろう。

(H28. 8. 1 EOS40D撮影)