マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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上の先祖迎え法要

2017年03月18日 09時24分19秒 | 明日香村へ
家さなぶり村さなぶり行事がある明日香村の大字上(かむら)に住むFさんに聞いた当家の先祖迎え。

祖母は朝早くに大字に流れる冬野川に出かけて線香に火を点けて先祖さんを迎えると話していた。

83歳の祖母は杖をついてはいるもののいたってお元気だ。

この日のことやお送りなども話してくださる。

先祖さんをお迎えした時間帯は朝の6時半だったようだ。

線香を持って冬野川で先祖さんを迎えた。

茶碗10杯にお茶を入れた。

カボチャ、ナスビ、キュウリ、サツマイモにソーメンを仏壇前に並べた。



スイカにキマッカはいずれも家の畑でできたもの。

網を潜ったアライグマによってスイカが被害にあったという。

その他にブドウ、イチジク、モモ、トマト、ハウスミカン、トウモロコシ、メロン、ナシなどは買ってきたもの。

盛りが多くて毀れそうになっている御供棚に水鉢がある。



その上に乗せている草花はミソハギ。

これはもうすぐ来られる僧侶がサンパラする道具だという。

同家はこれにキキョウの花も添えた。

他家ではシキビになるらしいが同家に欠かせないサンパラの花である。

野菜や果物を乗せた大きな葉はハスの葉。

今年は貰いもんだという。

厨子に納めてある花立にさした花は菊の花に蓮の花。

蕾だった蓮は今朝になって開いたそうだ。

隣のお厨子は毘沙門天。

お大師さんもそこに納めさせてもらっていますという。

先祖さん迎えした同家は仏壇だけでなくカドにある外の神さんやダイジングサンと呼ぶ大神宮、七福神、お稲荷さん、熊鷹大神を並べた神棚にも灯す。

その棚には癌封じのお札もある。

炊事調理場の棚に大和大峰蛇之倉七尾山の摩王大権現大護摩供養御法砂。

台所の神さんの三宝荒神さん(笠の荒神さんでもなく、三輪山か、それとも立里荒神か)に水の神さんまである。

それぞれの神さんすべてにサカキを祭っている。

他の神さんはお供えがみられないが、水の神さんだけはキュウリ、ナスビ、サツマイモ、トマトを供えていた。

そこには菊の花にコウヤマキも立てていた。

水の神さんにヤカタはない。

こうして祭ってきたが、理由はわからないそうだ。

そうこうしているうちに僧侶がやってきた。

僧侶は大字上(かむら)も兼務している浄土宗派。

島庄にある唯称寺が本寺のようだ。

唯称寺は大字細川にある蓮花寺も兼務しているという僧侶は副住職。

目元が優しい副住職のお勤めが始まった。

ローソク、線香に火を点けてお念仏。



祖母は同部屋に座るが、息子さんは後方。

遠慮しながら座られた。

念仏が始まってからしばらく。

副住職がおもむろに動いた。

水鉢に置いてあったミソハギとキキョウの花を手にした。



オンサンパラ、オンサンパラを唱えながら花を手元に持つ水器の水に浸けては前方に飛ばす。

リンを鳴らして手を合わす。

お念仏は餓鬼さんのために施す。

餓鬼さんに水むけ(手向け)する「さんぱら」の作法は水供養の在り方である。

副住職が云うには家によってはコウヤマキでもシキビでも構わないという。

要は水を飛ばしやすければそれで良いらしい。

木魚を叩いてなむあみだぶ、なみあみだぶを連呼しながら唱えられる。

F家の先祖代々を供養する。

念仏が終われば静寂の部屋。

外ではセミセミセミと鳴きやまない夏の声が聞こえてきた。

上(かむら)の隣村は大字尾曽。

そこには真言宗派のお寺があるそうだ。

寺の境内にある八十八体の地蔵石仏がある。

調べてみれば四国八十八カ所の写し霊場。

一日で八十八寺を参ることができるお砂踏みがあるおうだ。

8月21日がお勤めだというお寺は真言宗豊山派の威徳寺。

江戸時代に毘沙門天を祀って建立した。

本堂前に弘法大師の像がある。

昔は流し灯籠があったという。

また、大字上には百人講があった。

10年に一度は伊勢参り。

2台の大型バスに振り分け乗って伊勢参拝というだけに伊勢講もあった。

伊勢講は一年に一回の伊勢詣り。

予算がなくなって解散したそうだ。

(H28. 8.13 EOS40D撮影)