テクニックがあって切れのあるピアノを聞かせるジャッキー・テラソンは現役ピアニスト100人を選ぶときにうっかり忘れそうになった人で、新譜と随分会わずにいました。
昨年新譜が出ていたようで、ショップで見つけてあわてて入手しました。
フランスのブルーノートから出すしゃれたセンスのアルバムが好きでしたが、コンコードに移籍したようで、待遇は良いのでしょうがこれは私にとってはちょっと心配です。かどが取れちゃうというか、線がぼやけるというか、レーベルカラーがあるのです。
1曲目シンセの音を取り入れたリズムとピアノは、キースのルータ&ダイチャみたいなサウンドを作っていて、ちょっと回顧的サウンドです。
2曲目、フリーインプロからマイケルの“ビート・イット”から“ボディ・アンド・ソウル”に移ると途中からモーダルな演奏になって見世物みたいで落ち着きません。
3曲目はスールマンスのようなハーモニカが入ってモンクの“Ruby My Dear”陰影あるハーモニカが流れるけれどピアノのフレーズ参加は余りありません。
4曲目は一変、ハンコックのサウンドのように、ピアノは熱を帯びて疾風のようになるけれど、前曲から急になぜと思います。
5曲目が“Round Midnight”なぜここでラウンド・ミッドナイト、サービス曲をいれたような感じです。
6曲目テラソンの曲にテナーが入って、これはコルトレーンのミディアムなバラッド。
7曲目が“My Church”でゴスペル調をいれるテラソンの得意の曲調ですが、いろいろやりすぎているから集中できません。
8曲目にいたってはチャゲ&飛鳥“SAY YES”をやってしまったのかと思った、失礼“SAY YEAH”と歌うのでした。アフリカンなリズムを入れてたヴォーカルはザヴィヌルへのオマージュとしか聴こえませんが、それならばもう少しやり方あるのではと思うのでした。
となんだか内容がいろいろ、これという芯もなく、なんだかコンコードにあわせたような感じでテラソン好きには替わりませんが、ここは一つお休みかと思います。
レーベルと旨くアルバムを作る事はミュージシャンの命題ですが、これまでもレーベルとの軋轢など山ほどあるわけで、レーベルにあわせるのもまた別の問題、そこらへんも考えながら聞かないと(想像になってしまいますが)なかなか納得できません。
Jacky Terrasson/Push
Jacky Terrasson(P, Key, Vo)
Ben Williams(Ac-B, El-B)
Jamire Williams(Ds)
Guests: Gregoire Maret(Harmonica)3,8 Jacques Schwarz-Bart(Ts)6 Matthew Stevens(G)8
Cyro Baptista(Per)8,10,11
Rec. September 28, 29 & 30, 2009, NY
1 Gaux Girl
2 Beat It/Body and Soul
3 Ruby My Dear
4 Beat Bop
5 Round Midnight
6 Morning
7 My Church
8 Say Yeah
9 You’d Be So Nice to Come Home To
10 Carry Me Away
11 O Café, O Soleil