村上春樹の新作「色彩を持たない多崎つくると「晴れ美巡礼の年」は発売7日目で100万部突破だそうで、前作「IQ84」の12日を破って記録だそうで、それはなによりだと思う。
前作の発売初日で本屋に本が見当たらないことを経験して焦ったから今回はきちんと確保はしたけれど、やはり翌日には本屋さんに一版はなかったから、それはちょっと困ったことだと思う。
「蕎麦屋の出前持ちまでが、ジャズ・メッセンジャーズの『モーニン』を口ずさんだ」という1961年のことはしらないけれど、そんな文を思い出してしまいました。
フレッド・ハーシュのライブになぜこんな書き出しかというと、自由席の2ndだから、できるだけ早くいって並んでいる間に読みかけを読もうという魂胆です。
さすがに蕎麦屋の出前持ちではないのですが、電車の中ではこの本は恥ずかしくて広げられない、コットンクラブの店先が最低限度でしょう。
会社を終えて一生懸命東京駅へ、ちょこっと丸善によってからコットン・クラブに急ぎます。
ついたら前から3番目だったのでちょっと拍子抜け、村上春樹を開いたけれどやっぱり集中できない、1章をどうにか読んだ程度、一番前の方も同じ本を読んでいたと思うけど、恥ずかしくはなかった。
さて中に案内されて、席は指先が見えるところがいいですかといわれながらしばし舞台前で位置確認、結構入った順に良い席を案内してくれるけれど、ここは私の好みで2列目の二人目の席にしました。前からは少し離れているけれどいいかと思っていると、「ハーイ、monakaさん!」と何のことは無い、悩んだ私の席の隣にアッと言う間に座るのは、イタリアジャズ姫、向かい側は中年音楽狂さんで、マルチン・ボシレフスキー以来の再会です。
席に着いたら情報交換、まずはエンリコ来日の話、もすぐ来るボッソはどうする、イオナータはなにやっているのと、アリィヤリャ始まる前にワインなくなっちゃう。
ちょっとした事故でこの記事を書くのが遅くなったおかげで、セット・リストをお借りすることを中年音楽狂さんにお許し願った。と言うことでひとえにその責任は音楽狂さんにあります。(といってとても正確ですが)
2nd
まずは、とても暖かい拍手で登場です。
1 Funkallero(Bill Evans)
分散したハーモニーから、それを一瞬にして集合してもはやハーシュの川が流れ始めます。まず最初に気がいくのがタッチ、両手でつくるハーモニーの均衡のとれていること、短く終わって小手調べ。
2 Dream of Monk(Fred Hersch)
モンクのハーモニーの再現として私の記憶のなかでも素晴らしい表現、なぜ多くの人がモンクの曲を弾くのかと考える。譜面の中にモンクの魂があり、それがピアニストと対峙してコラボレーションするのでないでしょうか。
気負いなくとてもストレートなモンク表現はやわらかな気分を伝えてきます。
3 Pastorale(fred Hersch)
とてもやさしい空気の層が、上から黄緑色、きくちなし色、薄青色、あめ色と美しく見えてそれがゆったりと波打ちながら一つの淡い光となっていくような、ピアノの打鍵音を感じさせないやさしい流れです。
4 Whirl(Fred Hersch)
これはモダンで緊張感を伴って、でもクラシカルな表現の度合いが増えたように感じるハーシュのピアノ、落ち着きというものがピアノにあるのは、この数年を超えたからではないでしょうか。
5 I Fall in Love Too Easily(Jule Styne,Sammy Cahn)
拍手の後、そのまま引き始めたのがこのスタンダード、ハーシュのピアノがハーシュを語っているのに、それを聞いているこちらは自分の事を考えてしまうような、表現が押し付けがましくなく、自分とハーシュの間を行き来するような、これは素敵な演奏です。
6My Old Man(Joni Mitchell)
ハーモニーは、そしてタッチは、そしてメロディーはあくまでもやさしい。シンプルな中にこそ輝きがあるというような、ソロ表現は昔と変わったような気がするけれど、それもうれしい。
7 In the Wee Small Hours of the Morning(Boob Hilloard,David Mann)
シングルトーンの音を楽しむことをわすれていたのではと、メロディ・ラインの集中力が全体を作っていくような演奏。
8 Doce de Coco(Jacob do Bandolim)
JAZZ演奏のスタンダードなフィールドは維持されながら、ハーシュがその中で自分の生を見つけたという感じで、うれしくなるような演奏です。
9Whisper Not(Benny Golson)
これはバップの語調に乗って、思い切り良くアドリブすることをみせてくれた、活き活きとした演奏がとてもうれしい。
そしてすぐにアンコール
1 Valentine(Fred Hersch)
和音は安定して、スケールは秩序を持って、それでも影が生まれ、そこに日が射して、平安が生まれた。短いけれど素晴らしいアンコール曲。
2 Lotus Blossom(Billy Strayhom)
ビリー・ストレイ-ホーンが持っていた寂しさとつながるのか、いや二人に共通した達観した世界、ハーシュのストレイホーン集でも最初に持ってきているお気に入りをこれも短く、この短い心の芯をみせるようなアンコールが、逆に強く彼の存在を残してステージを降りた。
皆さんへのフレッド・ハーシュのメッセイージです。