4月12日に発売された新作は、「IQ84」で懲りていたから昼ごろにきちんと買いました。
ぼちぼち読んで(この本はそうゆう読み方が評判良い)いて、昨日読み終わりました。
本については、書評みたいなものを書く気持ちはないけれど、感想と記録みたいなものを残すことにしていて、そんなのが110になってきました。
発売1週間で100万部を販売するというもはや社会現象は「蕎麦屋の出前持ちまでが、メッセンジャーズの『モーニン』を口ずさんだ」ということを思い浮かべたけれど、それよりかはもう少し文化に根付いているようにも思う。現象は現象で、面白くないと思った人はもう読まなければいいし、村上春樹の文と世界が好きという人が増えることはうれしいことだと思う。
16日には早々と読売新聞に3名の文化人感想を書かれていてそれを読むとやはり鋭い感性で作品をとらえている。
作家の古川日出男さんは、後半のある場面を「そこには圧倒的な慰撫がある。そのことと、色彩を「寓話」として描ききることが、この小説を豊穣にしていると感じた。」と書かれて受け手の感性も垣間見えて楽しい。
ドイツ文学者の松永美穂さんは女性らしく、登場する女性の役割をとらえつつ、「自己肯定を求めようとする、実在をめぐる内省の物語」と位置付ける。
ノンフィクション作家の高橋秀実さんは、「全体的にクリーンな印象。重苦しいテーマながら登場人物たちもどこかヘルシーで論理的。」と時代性を読み取っている。
この作品、前作「IQ84」のような部類の村上作品ではないので、ハラハラ、ドキドキ感はない。中編と位置付けるものだろうけれど、ある意味一つの結論のようなものを明かしているように思う。
そんなことをきっちり書く能力はないけれど、ネタバレならないように、まずは気に入った一節を拾い出します。
特にこの本で重要になってくる一説は
「記憶をどこかにうまく隠せたとしても、深いところにしっかり沈めたとしても、それがもたらした歴史を消すことはできない」。
また春樹らしい節回しも楽しい。
「あとになってからでは遅すぎることもある」
「遅い遅くないは、論理性とはまた別の問題です」
そしてもう一つネタにかかわる部分を伏せて
「そのとき口にするべきだった言葉に思いあたったのは、・・・・・・ ・・。正しい言葉はなぜかいつも遅れてあとからやってくる。」
さてこの小説を読んで何をおもったかというと
「グレーという羊男に、色彩をもたないで勝利した初めての物語」