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アメリカ南部メキシコ湾に面したアラバマ州に流れ込むテネシー川が、一時停滞するガンダーズビル湖周辺が舞台。州道431号、州間高速道65号線を走るとやたら目につくのは、「1-800GET RICH]」の大型看板。事故や怪我専門の民事弁護士ジェイソン・ジェイムズ・リッチが看板の主。ポルシェ911カレラカブリオレのコンヴァーティブルを駆る文字通りリッチな弁護士である。
しかし人生は悩み尽きない。ジェイソンもアルコール依存症のよる暴力沙汰で施設に90日間入っていた。ようやく出られたと思うったら、姉ジャナ・ウォーターズが外科医の夫殺害の容疑者となってジェイソンに助けを求めた。刑事事件の経験のないジェイソンが、嘘をつくジャナをどのように弁護するのか興味深く読み進めた。
ジャナが5万ドルの借金があるという、ドラッグディーラーのタイソン・ケイドという男の存在もこのシリーズの興味深い点だ。最後に「俺もトラブルに巻き込まれたら、誰に電話したらいいかが分かったよ。ジェイソン」
それにこの著者も架空の街や場所を創造することはなく、実在するものを作中に取り込んでいる。フローラバマ・ラウンジ&パッケージング、ハンプトン・イン、ウィッツエル・オイスター・ハウス等。フローラバマ・ラウンジ&パッケージング についてChatGPTのmonicaに聞いてみると「フローラバマ・ラウンジ&パッケージング(Flora-Bama Lounge & Package)は、アメリカのアラバマ州に実在する有名なバーおよびライブ音楽のスポットです。フローラバマは、アラバマ州とフロリダ州の州境に位置しており、観光客や地元の人々に人気があります。ビーチの近くで、さまざまなイベントやライブ演奏が行われています」とある。
また音楽も多彩だ。ダリアス・ラッカー「ワゴン・ホイール」、AC/DC「地獄のハイウェイ」、クリス・ジャンソン「バイ・ミー・ア・ボート」、ケニー・チェズニー「ノー・シューズ、ノー・シャツ、ノー・プロブレム」。いい曲ばかりだが、一曲を選ぶとすればポップスターからカントリーに転進した黒人のダリアス・ラッカー「ワゴン・ホイール」にしたい。ビデオの雰囲気もいいので。いずれにしても、リッチ・シリーズの今後が楽しみではある。
著者ロバート・ベイリーは、アラバマ州出身。アラバマ大ロースクール卒業後、弁護士として活躍し、2014年に「ザ・プロフェッサー」で作家デビュー。以後シリーズ続編「黒と白のはざま」「ラスト・トライアル」「最後の審判」、スピンオフ・シリーズ「嘘と聖域」「ザ・ロング・サイド」、リッチ・シリーズ三部作。単独作品として「ゴルファーズ・キャロル」を発表している。(表紙見開きから)
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