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賞賛すべき北島のガッツ! しかし、王者らしいコメントが聞きたかった。

2008-08-11 14:00:25 | スポーツ

 金メダルの獲得数で中国や韓国に遅れをとっていた日本が、柔道の内柴に続き北島がV2を果たし金メダルを獲得した。
 レース開始の選手紹介で、北島は片手を挙げて観客席に挨拶というよりも、自分を鼓舞するように吠えた。レースは完璧に支配された。スクリーンに目をやってトップを確認すると、水を叩き、手を挙げて再度吠えた。直後のインタビューは興奮と嬉し涙でやっと「ちょー気持ちいい!」と言うのがやっとだった。気持ちは十分伝わる言葉ではある。
 レース直後はこれでもいいが、記者会見の席では世界の王者らしいユーモア溢れる言葉を発して欲しい。いつも思うが一流のアスリートの言葉は印象的なのが多いが、日本人には「嬉しい」「最高」「皆さんに感謝」などという通り一遍の言葉が多く聞かれる。
 一流といわれる人には、表現力にも力を注いで欲しい。北島の嬉しい気持ちを表すのにふさわしい言葉は、「この瞬間を接着剤で固めてしまいたい」

デイヴィッド・L・ロビンズ「焦熱の裁き」

2008-08-11 12:36:24 | 読書

               
 “医師は二人に向かって言う。「気をしっかり持って」くるまれた赤ん坊を看護婦がクレアのもどかしげな手にゆだねる。クレアはためらわずに赤ん坊の頭から毛布をのける。彼女の耳に医師の言葉が響く。
 「こんなことになって残念だ」赤ん坊の眉の上には何もない。頭の鉢が、脳があるはずの頭蓋骨の上部が、そこにはない。そのかわりに頭蓋骨は平で、温かいピンクの皮膚に包まれている。赤ん坊は恐ろしく不安定だ”
 白人のクレアと黒人のイライジャとの間に生まれた女の子は無脳症だった。医師の説明によれば「無脳症はアメリカで最も多い中枢神経系の重大な奇形で、新生児の千二百人に一人がこれに見舞われる。
 無脳症の赤ん坊は、仮に生きて誕生しても、幼年期を生き延びることはない」
 二人が準備していた名前は、ノーラ・キャロル。そのノーラ・キャロルは、誕生から十分後に世を去った。白人系の教会の墓地に埋葬された。それを知った教会の執事たちは協議の結果、遺体を掘り起こして夫の黒人系の教会に移された。
 しばらくのち、白人系の教会が夜火炎に包まれて焼失する。酔っ払ってその火事を眺めていたイライジャが逮捕される。悪いことに焼け跡から、郡保安官ジョージ・タリーの娘が焼死体で発見された。いまやイライジャは、死刑を科しうる謀殺と強姦の罪という重罪に直面していた。
 その容疑者を弁護するのは、元検察官で、リッチモンドで民事弁護士を開業しているナット・ディーズだ。ナットも個人的には夫婦間の悩みを抱えている。看護婦である妻のメイヴから一度だけの不倫を打ち明けられて、いたたまれず家を出ていた。
 イライジャが無罪になる手がかりを求めて検視副局長、友人の牧師、大柄な黒人の保安官などと接触しながら徐々に真相に近づく。ヴァージニア州の日照り続きの暑い夏。製紙工場のゆで卵のような臭気に包まれた小さな田舎町。ノーラ・キャロルの悲劇的な誕生と死、教会の執事たちによる遺体の掘り起こし、教会の火災、イライジャの逮捕、そしてその日の午後発見された郡保安官の娘の遺体。人種問題とともに、夫婦間の微妙な機微を浮き彫りにしリーガル・サスペンスとして一級の出来といってもいい。
 意外な結末とともに日照り続きだった大地にほっとする雨が降るラストも余情をたたえて捨てがたい。
 “雨は物陰に隠れないものすべてを包み込む。そして、その点で、雨は愛にとてもよく似ている”
 著者の写真を見ると猪首の身長198センチというまるでフットボールの選手を思わせる風貌だ。ヴァージニア州リッチモンド生まれ。第二次大戦中のスナイパー同士の対決を描いた‘99「鼠たちの戦争」が高い評価を得る。