オフィサー・ダウン! オフィサー・ダウン!(Officer down)警官が負傷するか殺されたとき、仲間の応援を要請する無線用語。警官は仲間に危害を加えられると何はおいても駆けつけてくるという習性があるようだ。大リーグや日本のプロ野球の試合で、チーム全員が飛び出してあわや乱闘かという場面を連想させる。
この小説の主人公シカゴ市警のサマンサ・マックは、わたしはあまり好きになれない。いまどきタバコはよく吸うし、アル中ではないかと思うくらいウィスキーやビールを飲んで二日酔いに悩まされ二人の妻ある同僚と不倫に及びパトカーを追突させたジャガーの男の誘いにカー・セックスまでこなす。おまけに上司に食ってかかるという気の強さで可愛さの片鱗も見えない。
しかし、警官に必要なタフさは十分に持ち合わせている。幼児性愛の変質者の逮捕に向かい銃撃戦を展開。自分も殴られパートナーを失う。パートナーはサマンサの銃から発射された弾丸によって命を失った。
上層部は誤射として処理しようとするが、サマンサは否定する。謹慎中にもかかわらず自ら調査を開始する。そして、驚くべきことに不倫相手の悪事に突き当たる。男のように考え男のように描写し女性作家らしくない一面を見せている。
この作品は、2006年度アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞を受賞している。受賞したからといって読者すべてが受け入れるとは限らない。訳者あとがきにも読者から主人公について叱責があったと書いてある。おそらく好悪半々といったところだろうか。
著者は、イリノイ州シカゴ郊外アルゴンキン生まれ。シカゴのロヨラ大学でコミュニケーション学の学士号を、さらにカリフォルニア州チャップマン大学で映画学の修士号を取得。ロサンゼルス在住。