ペンシルベニア州のうらぶれた町に住む兄ラッセル・ベイズ(クリスチャン・ベイル)と弟ロドニー・ベイズ(ケイシー・アフレック)は、病弱の父親を抱えながら生活していた。
兄ラッセルは、地元の鉄工所で溶鉱炉の仕事をしているが、弟のロドニーは働きもせず、ジョン・ベティ(ウィリアム・デフォー)から借りた金を競馬に賭けて、小遣いを稼ごうという当てのないことをしていた。
通りを示すプレートも文字の判別が出来ないほど錆付いて今にも落ちそうだし、家々は軒を寄せ合って立ち並びガレージもなく車は前の歩道が置き場になっている。そして鉄鋼の町にふさわしく、いつも蒸気が立ち昇る。
こういう風景は、1978年の映画「ディア・ハンター」を連想する。その舞台もペンシルベニア州だった。しかも、ラッセルは叔父(サム・シェパード)とともに鹿狩りに出かけるのも、「ディア・ハンター」とよく似ている。というか、ペンシルベニア州の特色なのかもしれない。
したがってこのうらぶれた町を少し離れれば手付かずの大地が広がっているのだろう。その山の中にハーラン・デグロート(ウディ・ハレルソン)というならず者の世界があった。鬱蒼とした樹林を縫って伸びる道路も、寂しい日本の林道を連想させる。
イラク戦争から帰国したロドニーは何かに憑かれたように素手で戦うストリート・ファイトに執念を見せる。やがて大きな金を求めてデグロートの世界に踏み込んだためにジョンとともに射殺される。
警官のバーンズ(フォレスト・ウィテカー)から遺体発見を知らされる。バーンズの態度が捜査に消極的だと言って怒りをぶつけるラッセル。
やがてラッセルは、デグロートを追い詰めるときが来た。朝の静謐な大気の中、照準つきライフルがデグロートをぴたりと捉えた瞬間、轟音が炸裂する。古風だが兄は弟の仇を討った。この町には似合う風景だった。
ちなみに原題は、「Out of the furnace」で furnaceは溶鉱炉→きびしい試練で、兄が溶鉱炉の作業員、それに弟が殺されるというきびしい試練を受けたことを懸けてあるのだろう。
監督
スコット・クーパー1970年ヴァージニア州生まれ。
キャスト
クリスチャン・ベイル1974年1月イギリス、ウェールズ生まれ。
ウディ・ハレルソン1961年7月テキサス州ミッドランド生まれ。
ケイシー・アフレック1975年8月マサチューセッツ州生まれ。
フォレスト・ウィテカー1961年7月テキサス州ロングビュー生まれ。
ウィリアム・デフォー1955年7月ウィスコンシン州アップルトン生まれ。
ゾーイ・サルダナ1978年6月ニュージャージー州生まれ。
サム・シェパード1943年11月イリノイ州オート・シェリダン生まれ。