かつて私は山男だった。3000メートル級の冬山経験がない未熟な山男だ。それでも夏には北岳や奥穂高岳にも登った。奥多摩周辺の山々にも足繁く通った。なぜ山へ行ったのか? 今考えてみると仕事の合間ということで、ストレスの発散の場としたのではないだろうか。
実際のところ、真夏の北岳の記憶は、けだるさと爽快さが同居している。8月の照りつける太陽の日射しを受けると、僅かに残る雪渓から滴り落ちる水滴が何万円もするヴィンテージワインの味わいをも凌駕する。喉を潤すのはワインではなく水なのだ。このときほど水の有難さと大自然の恩恵を感じるときはない。
富士山に次ぐ高峰北岳からの下山は、茶色いライチョウを見てもハトよりちょっと大きいかという感想しかなく、汗だくで登山口によろよろとたどり着く。しかし、気分は爽快感に満たされる。
爽快とか雄大を心に感じるのは、海も例外ではない。繰り返す満ち引きの波の音、見渡す限りの果てしない水平線、これらの大自然の営みは、癒され愛を語る舞台装置としては海が適しているように思われる。
そして消し去ることがない映画の1シーンが蘇る。一つは、1953年の映画「地上(ここ)より永遠(とわ)にFrom here to eternity」だ。監督フレッド・ジンネマン 主なキャスト バート・ランカスター、デボラ・カー、モンゴメリー・クリフト、フランク・シナトラ、ドナ・リード。
太平洋戦争開戦前の夏にハワイ・オアフ島のスコーフィールド米軍基地で起こるいじめやシゴキに加え、中隊長夫人の不倫や恋愛模様が描かれ、日本軍の真珠湾攻撃へとクライマックスを迎える。曹長のバート・ランカスターと中隊長夫人のデボラ・カーの波打ち際のキス・シーンが有名で記憶に生々しい。
この映画、アカデミー賞の作品賞、監督賞、助演男優賞(フランク・シナトラ)、助演女優賞(棚・リード)、脚色賞、撮影賞、録音賞、編集賞を受賞している。
もう一つは、2003年の「恋愛適齢期」である。監督ナンシー・マイヤーズ キャスト ジャック・ニコルソン、ダイアン・キートン、キアヌ・リーブス、フランシス・マクドーマンド。63歳の音楽業界の有名人で裕福な独身貴族ジャック・ニコルソン、しかも30歳未満の女性が恋の対象という心情の持主。現在の恋人は、人気劇作家の娘だった。ある日、アメリカで最も高価な住宅地、ハンプトンズにある劇作家ダイアン・キートンの別荘にその娘と共に訪れる。しかし、残念なことにジャック・ニコルソンは心臓発作で倒れこの別荘で療養することになる。世話を焼くダイアン・キートンに次第に心が動いていく。この二人が、ハンプトンの海岸を散歩する。
やはりロマンスには海かと思わせる。そんな海を房総の沿岸に伸びる九十九里を撮って来て(スマホの動画です)YouTubeにアップしましたのでご覧ください。