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読書「たとえ天が墜ちようともThe Heavens May Fall」アレン・エスケンス著2020年9月刊

2022-07-22 15:27:24 | 読書
 「犯罪の現場でさえ、よその街より上等なわけ」と言うのはミネアポリス市警刑事ニキ・ヴァン。同僚の先輩刑事マックス・ルパートの「これ以上に清潔な路地は過去に見たことないな」を受けての感想。

 ミネソタ州ミネアポリス・ケンウッド地区の路地で女性の遺体が発見された。被害者は刑事専門弁護士ベン・プルイットの妻ジェネヴイエヴ。捜査を担当するマックスは、当然のように夫ベン・プルイットを第一容疑者とする。容疑者と言うよりも犯人と決めつけている。

 このミネソタ州ミネアポリス・ケンウッド地区、例によって    googleマップで検索してみた。映画やドラマで見る中流階級以上の住宅地なのだ。千葉県で同じようなところを探すとすれば、外房線土気駅からのワンハンドレッドヒルズだろうか。

 ベン・ブルイットも凄腕の刑事弁護士で、この地区で住居を構えることができる。しかし、容疑者とされた以上弁護士を依頼しなくてはならない。そこで頼ったのが友人の地元ロースクール教授で弁護士のボーディ・サンデンだった。

 最初ボーディ・サンデンは、刑事のマックスとも親友の間柄のため逡巡していた。しかし、ベンとの家族ぐるみの付き合いでは断ることも難しかった。いずれ法廷で証人尋問のとき、マックスを追い詰めることになり、友人関係の瓦解は火を見るよりも明らかだった。

 検察側と被告側の応酬は、法律を使った戦いと言ってもいい。検察側はすべての証拠を開示しなければならない。弁護側は、その証拠に合理的な疑いを持たせればいいい。あとは陪審がどう判断するかという問題だ。

 ベン・ブルイットの場合、妻が殺された日シカゴにいたと言う。しかし、マックスは、ベンの住まいの前の家の女性から「ベンの家の道路に夜中、赤い車が止まりベンらしい男が家に向かっているのを見た」と証言した。しかし法廷では、「ベンだと断定はできない」と言った。弁護側は小躍りしたが陪審員の評決は、ベン・ブルイットが動機と機会のある唯一の人間として「有罪」にした。

 ここで物語が終わるわけでもない。25年間刑事弁護士として働いてきた著者アレン・エスケンスの法の迷路に誘い込まれ、最後には倫理規定が重要な役割を演じる。殺人事件を巧妙に利用したベン・ブルイット。平気で噓をつき独りよがりですぐに激昂するのベン・ブルイットを彼はソシオパス(反社会性パーソナリティ障害)だと断定したボーディ・サンデン。こういう緻密な法廷論争も面白い。

 著者のアレン・エスケンスは、ミズーリ州出身。ミネソタ大学でジャーナリズムの学位を、ハムライン大学で法学の学位を取り、ミネソタ州立大学で創作を学んだ後、25年間刑事専門弁護士として働く。現在は引退している。

コメント (1)
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