自他共に認める大金持ちウィンザー・ホーン・ロックウッド三世。ウィンと自称している。推定年齢40代半ば。ハリウッド女優との間にイマという娘がいる。後半この娘にメロメロになる場面もあって、男親というのは娘にも異性の匂いを敏感に感じるものなのだろうかと思ったりする。
そのウィン、どんな男なのか明らかにしてみよう。大金持ちの御曹司だからプライベート・ジェット機、プライベート・ヘリコプター、運転手付きのリムジン、自分で運転するジャガーXKRーS GT。この車のエレガントな乗り心地とスポーティな内装には、サマになる“オトコ”の条件ははるかにハードルが高いとネットの記事。そうウィンのような男にはお似合いだろう。
ピンストライプの淡いブルーのサヴィル・ロー(ロンドン中心部のメイフェアにある通り。オーダーメイド紳士服店が集まっている)特別仕立てのスーツ、ジョージ・クレバリーのボルドーカラーの誂え靴、リリー・ピュリッツアーの限定販売品であるピンクとグリーンのシルクタイ、それに花びらのように整えて左胸に挿したエルメスのポケットチーフ。しかも頭脳明晰でハンサムあらゆる武術に通じていて、相手次第ではセックスに準ずる愉悦を堪能する。もちろん独身。セックスもこよなく愛する男で、ランデブー・アプリで相手を見つける。身元はお互い明示してあって、もめごとには発展しない。男女を問わずセックスそのものを楽しみたいという時もあるだろう。
ウィンのお相手はそれなりの身分と地位にある。ある時、親友のマイロンの元恋人ジェシカ・カルヴァーと楽しいひと時を過ごす。そんな折FBI捜査官の訪問を受ける。同道した先はセントラルパークが見渡せる高層マンション。その20階の部屋で男が死んでいて、WHL3ウィンザー・ホーン・ロックウッド3世のイニシャルの入ったスーツケースも見つかる。FBIはウィンに疑いの目を向けている。
電話は意外なところから掛かってくる。元FBI捜査官のPTからだ。ウィンはPTとしか知らない。本名も住んでいるところも独身か否かもしらない。ウィンが大学を卒業した後、FBIに勤めたことがあって、その時の指導教官がPTだった。かくしてウィンは事件に巻き込まれた。
その後の展開に読書の醍醐味を堪能したのは言うまでもない。ドイツ系のアメリカ人の父と日本人の母との間に生まれたアン・アキコ・マイヤースのヴァイオリン演奏をBGMに。なお本作は著者の「マイロン・ボライター・シリーズ」からのスピン・オフ作品という。
それでは、アン・アキコ・マイヤースの演奏を聴きましょう。バッハのG線上のアリアです。
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