一度読んだだけではすっきりと理解できない。何度読んでも理解できないと言う不安を覚える本だ。
夫の急死で未亡人になった中年にさしかかった悦子という女。悦子の夫は、女癖の悪い男で方々に女を作っていた。もっと悪いことには、悦子が夫に触れようとすれば、いきなり平手打ちが飛んでくる。悦子は我慢していた。
そして腸チフスに罹った夫を病室でかいがいしく看護する。それはまさに鬼気迫るといってもよかった。実際は夫の死を待ち望み、死の瞬間を見逃したくないという思いだけだった。
悦子の嫉妬をもてあそんだ夫。看護の16日間、もっとも幸福であった短期間と入っても悦子にとっては、もし理性さえ失くせるものなら「早く死んでしまえ!早く死んでしまえ!」と叫びたくなる幸福な期間ということになる。
夫の死後、夫の父親の家に身を寄せ、話すにつれて馬のように白い唾の泡が、口の両はじに溜る高齢の舅(しゅうと)にやすやすと身を任せてしまう悦子。若い庭師の三郎に恋をして(三郎は全く気がついていない)、その三郎が女中の美代に妊娠させると悦子の嫉妬の炎が燃え上がる。そしてこれが最後の悲劇へと転がりだす。 不可解な心理としか言いようがないが、よく考えてみれば、誰にでもある矛盾した心理といえるのかもしれない。
吉田茂の長男で英文学者の吉田健一が解説を書いているが、それを読んでもわたしには真髄が見えてこない。これは非常に困ったことだ。…………もう、ぐだぐだ言うのは止そう。
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