中央公論社 「マンガ日本の古典-13」 1995年5月25日 初版
一読、物語に引き込まれて面白く読んだ。最後に来て、これ本当にあった話か~ ? と自分のあまのじゃくが頭を持ち上げてくる。ちょっと調べたら、やっぱり
「作者 御深草院二条 の告白という形だが、ある程度の物語的虚構性も含まれると見る研究者もいる。」 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
と有るじゃないの。やっぱりね~。原作は鎌倉中期、京の朝廷で後深草院に仕えた女房二条の14歳(1271年)から49歳(1306年)ごろまでの境遇、後深草院や恋人との関係、宮中行事、尼となってから出かけた旅の記録などが綴られている。
今で言えば女房という仕事を持っていたとはいえ、深窓の令嬢である貴族の娘が尼になった後、当時は男でも大変だった一人旅で、熱田神宮・鎌倉・善光寺・浅草・伊勢・厳島などまで足を延ばしている。
前半部分は後宮にいた女性の日記として信憑性が多少あるとしても、出家後の旅の部分は創作か男性の経験を書いたものか。
それはともかく、昭和15年まで知られていなかったというこの原作を 「キャンディ・キャンディ」 で有名なマンガ家 いがらし ゆみこさんが描いているというので興味を持ってE-ブック○フで買ってみた。
実はいがらしさん、くだんの「キャンディ~」 からして読んでいない、私にはお初の方でした。私のマンガ読み時期と 「キャンディ~」 の連載時期がずれているからなんですが、その後もこの人の作品に縁がなくて見たことなかったですね。
「りぼん」や「なかよし」という比較的低年齢層が対象の本で描いていたからでしょうか。後ではレディースコミック誌や女性誌などでも描いてらっしゃるようですが。
いがらしさんの絵ということで、絵柄は可愛らしい少女マンガ、内容は昼ドラ真っ青な愛欲入り乱れる王朝絵巻となっています。(笑)
あっ、でも違和感あるというんではなくて、貴公子は華麗に貴公子らしく、女房は雅な女房らしく、この恋愛絵巻物にぴったりな雰囲気がとても良かったですよ。
小道具の類も良く調べて描かれているのが分かる。 (当り前ですが) 見ていて飽きないです。
同じ 「とはずがたり」 を原作とした『後宮』講談社 海野つなみ 全5巻 がもう完結しているので比べ読みが楽しい。私はまだ最終5巻を読んでいないんですがね。
以前の記事 → 海野 つなみ 「後宮」
ところで、いがらしゆみこさん、と言えば避けて通れない 「 キャンディ・キャンディ著作権裁判」 というものがありますが、私も詳しくは知らないのでここでは言えません。
が、一世を風靡した作品が講談社版の単行本は絶版、中央公論社の文庫版も1999年1月に絶版となっているし、アニメーション作品の再放送とビデオ・DVD化などが不能、なのはいかにも寂しい。
また、古書を買いたくても一時ほどではないものの、 密林 や まん○らけ で高額で出品されているのを見ると昔のファンはがっかりでしょうね。どうにもならないものなんでしょうか。
「日出る処の天子」 のチェリッシュギャラリーのイラスト集の再販を待っているトミー。