雪の中をよろけながら歩く80代の男性を助けたとして、秋田県警秋田臨港署は18日、秋田大大学院理工学研究科の准教授、カビール・ムハムドゥルさん(49)=秋田市=に感謝状を贈った。カビールさんはバングラデシュ出身。署は「外国人がこうした形で表彰されるのは非常に珍しい」としている。
署などによると、昨年12月23日、秋田市内の歩道で、薄着の男性が両手に買い物袋を持ったまま立ち止まり、うずくまるようにしているのを、車を運転していたカビールさんが発見。「おじいさん、大丈夫ですか。困っているなら家まで送りますよ」と日本語で声をかけ、車に乗せた。男性は認知症が疑われ、自宅の住所を言えない状態だったため、40分近くかけて署に連れて行き、その後家族と連絡が取れたという。
日本政府の奨学生として20歳で日本に留学後、研究生活を続けてきたというカビールさんは、最初に署から表彰の話があった際、「私もこれまで多くの日本の方から親切にしてもらったのでごく当たり前のことをしただけ」と、受け取るのをためらったという。ただ、「学生や多くの方も同じ行動をするきっかけになるのでは、という周囲の助言もあり、喜んでいただくことにした」と語った。
署の鈴木英行生活安全課長は「高齢の方が思わぬ時間や場所で1人でいる場合は判断力が低下している可能性もある。気になる姿を見かけたり、なかなか自分で声をかけづらい場合は、110番通報してほしい」と呼びかけている。【工藤哲