フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

6月2日(水) 晴れ

2010-06-03 03:15:03 | Weblog

  7時半、起床。ハムトースト、グレープフルーツジュースの朝食。ブログの更新を済ませてから10時に家を出て大学へ。陽射しはあるが湿気はなく、夏の避暑地のような気候だ。


南門通り商店街

  11時から某会議。私の役目は最初のところだけ。あとは委員のみなさんにお任せして退室。「西北の風」に昼食をとりにいく。一人客なので窓際のカウンター席に案内される。ただし一番右端の席は「予約席」のプレートが置かれているので、その隣の席に座る。一人席を予約するというのはどういう人だろうと思っていると、外国人の女性の先生(だと思う)がやってこられた。常連さんのようで、店員さんに日本語で今日のメニューについて質問し、結局、私と同じ「馬車道特製スパゲティ」を注文した。どうやら「馬車道特製スパゲッティ」というのは「本日のスパゲッティ」という意味らしい(私はそれを知らずに「特製」という言葉に惹かれて注文した)。運ばれてきたのは浅利とタラコのスパゲッティだった。少し塩味が強いが、なかなか美味しいスパゲッティだった。食後の珈琲を飲みながら、原稿の構想を練る。


本部キャンパスの眺め

  新宿バルト9で『春との旅』を観る。「味わい深い」という言葉がピッタリの作品だ。足の悪い元漁師の老人が孫娘と二人で、きょうだいのところを尋ねて回る。これまで自分の世話をしてくれていた孫娘を都会に送り出した後の、自分の面倒をみてもらうためだ。子どもたちではなく、きょうだいというところがポイントだ。そこが「リア王」や「東京物語」とは違うところ。老人は人口学でいうことろの人口転換世代で、きょうだいは多い(4人)が、子どもは少ない(娘が1人いたがすでに亡くなっている)。私の父や母の世代に多いタイプだ。老人は5人きょうだいの真ん中で、兄と姉、二人の弟がいる。彼らを尋ねて、二人は北海道・東北地方を旅する。きょうだいと老人との関係はいろいろで、きょうだいの境遇もさまざまだ。近々老人ホームへ入居する者もいれば、刑務所に服役中のものもいた。温泉旅館の女将もいれば、不況のあおりで倒産した元不動産屋もいた。孫娘のたっての希望で、死んだ娘の元夫の牧場を訪ねていったりもした。それぞれの再会と別れのシーンはどれも胸を打つものだった。淋しさと温かさ。きょうだいは他人の始まりというが、やはりただの他人ではない。飲み食いの場面がたくさん出てくるが、どのシーンも印象に残るのは、仲代達也の演技力が尋常ではないからである。仲代達也は、老いたりとはいえ、なお艶がある。男の色気がある。もしも笠智衆が老人を演じたら、また違った味わいの作品になったことだろう。私はそちらも観てみたかった。


二人とも独特の歩き方をする

  鳩山首相がとうとう辞任した。小沢幹事長と心中するように辞任した。安倍(366日)、福田(365日)、麻生(358日)と在職期間の短い総理が続いたが、鳩山は259日である。『若者はなぜ3年で辞めるのか』というタイトルの新書があったが、『首相はなぜ1年で辞めるのか』という新書を誰かが書きそうである。信念のなさ、責任感のなさ、能力のなさをメディアは盛んに書きたてるが、就任したての首相を持ち上げ、すぐに引き下ろしにかかるメディアとしての信念のなさ、責任感のなさ、能力のなさということが政局の不安定の一因であることを、メディアはどれだけ自覚しているのだろうか。