フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

6月7日(月) 晴れ

2010-06-08 11:45:14 | Weblog

  8時、起床。ハムトーストとオレンジジュースの朝食。午前中は授業の下準備。
  午後、昼食(肉ジャガ、蕪の味噌汁、ご飯)をとってから、散歩に出る。池上線に乗って「甘味あらい」へ。今日はぜひ賞味したい一品があった。抹茶豆かん。豆かんの寒天が抹茶味なのである。ある審査会でグランプリを受賞した季節限定メニューである。月曜日の昼下がりで、お店は空いていた。カウンター席に座り、メニューを開いて、さっそく抹茶豆かんを注文しようとしたが、メニューに載っていない。あれっ? 私の傍らで注文を待っている奥さんに、「え~と、抹茶の豆かんってありませんでしたっけ?」と言うと、「すみません。抹茶豆かんは店頭販売のみでお店では出していなんいんです」とのこと。そうか、店頭販売って持ち帰りという意味か。私も店頭販売のみとは知っていたのだが、店頭販売のみというのを地方発送はしておりませんという意味に誤解していた。しかも予約制とのこと(前日の5時までの受付)。「ああ、そうでしたか・・・」と私ががっかりしたように言うと、カウンターの向うのご主人が、「いいですよ。先生には特別にお出しします」と言ってくれた。えっ、いいんですか!「先生」という言葉がちょっとひっかかったが、抹茶豆かんが食べられる嬉しさにかき消された。運ばれてきた抹茶豆かんは、上品な味わいで、世俗を離れる思いがした。味わいつつ口に運んでいると、奥さんが「豆かんは初めてのご注文ですよね」と言った。確かに、贅沢あんみつが中心で、夏場は宇治金時ミルク(カキ氷)、あとは白玉や汁粉、そして磯辺巻きだ。あっさり系の豆かんはたぶん注文したことがなかったと思う。それにしても本人でさえ記憶が不確かな客の注文の履歴をよく覚えているものだと感心した。

  抹茶豆かんを食べているときに、お客さんが一人入ってきて、抹茶豆かんを持ち帰りでと注文したが、あいにく予約をしていなかったので、奥さんが「申し訳ありませんが・・・」と対応していた。それで客は普通の豆かんだったか、あんみつだったかを注文して、それができるまで椅子に座って待っていた。私は、申し訳ないような気持ちになって、抹茶豆かんを隠すようにして食べ終えて、珈琲を注文した。支払いのとき、「わがままを言ってしまったようで・・・」と言うと、ご主人が再び、「先生のご注文は断るわけにはいきませんから」と笑顔でおっしゃる。先生? ああ、以前に一度、平日の午前中に店を訪れたときに、客は私ひとりで、ご主人と長めの雑談を交わしたことがあって、そのときに、自分は教師をしていて今日は学校に出なくていい日なのでという話をしたことがあったなと思い出す。ご主人は「あんみつ日和」というブログをやっていて、自分で撮った池上本門寺周辺の写真をアップされている。その写真がなかなかの腕前で、私がそれをほめると、照れるご主人の横で奥さんがいたずらっぽい微笑みを浮かべながら、「雀ちゃんの写真もかわいいですよね」と言った。はっ、雀? 私は瞬時に理解した。そうか、お二人は私のブログのことを知っているのだ。だから私が「先生」で、拾った雀の世話をしていることを知っているのだ。そして、私はブログの中で「甘味あらい」のことをしばしば書いている。とんかつの「鈴文」と並ぶ蒲田の(池上は蒲田の周辺である)名店として紹介している。きっと私のブログを見て、「甘味あらい」を訪れた人もいるであろう。「先生のご注文は断るわけにはいきません」というご主人の言葉がこれで初めて理解できた。おそらく「甘味あらい」がしばしば登場する「フィールドノート」というブログの存在は以前から知っていらしたと思うが、それを書いているのがこの私だというのを知ったのは、最近のことなのかもしれない。「そういうことでしたか・・・」と私が言うと、お二人はニッコリとうなづかれた。
  私は賞賛するに値する店のことしかブログに書かない。そうでない店と遭遇することの方がはるかに多いのだが、そうした店のことはブログでは言及しない。書いていて楽しくないし、書かれる方も不愉快であろうから。ある意味、ブログとは一種のユートピアなのである。「甘味あらい」のご主人と奥様は私にとっての「美しい町」の住人である。
  本門寺の境内を散歩して帰る。ご主人に倣って撮った写真をアップしておこう。


この猫は「あんみつ日和」にもしばしば登場する


「甘味あらい」の奥さんが君のことを「かわいい」と言っていたよ