フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

3月11日(火) 晴れ

2014-03-12 02:26:46 | Weblog

        9時、起床。

        明太子入りのオムレツ、サラダ、アサリの佃煮、大根の味噌汁、ご飯の朝食。

       昼から大学へ。

     ゼミ論集の版下の最後のチェック。4冊目の今回は表紙の色を何にしよう。

       版下を抱えて、早稲田通りを理工社(明治通りとの交差点近くにある)まで歩く。

      途中の古本屋の店頭に「講談社版現代日本文全集」の端本が出ていたので、「現代文藝評論集」を購入。100円也。かつて「文学全集の時代」というものがあった。「講談社版現代日本文学全集」は昭和40年代に出版されたもので、全108巻である。奇しくも、いや、意図してか、除夜の鐘の数(人間の煩悩の数)と同じだ。文学作品を系統だてて読むという行為が、一種の修養と考えられていたのであろう。もし全巻をこうした端本でコツコツとジグソーパズルのピースのように集めたら1万800円で揃う計算になる。

      理工社に版下と代金を前金で渡す。表紙の色はライト・グリーンにした。来週の木曜日(20日)の午後に研究室に搬入の予定だ。一刻も早く手に取りたいゼミ生(4年生、3年生、そそして4月からゼミ生となる2年生)はその日に研究室に来るといい。

      さて、昼食をどこで食べようかと考えながら、高田馬場の駅へ向かって歩いていたら、向こうからやってきたゼミ3年生のPさんとバッタリ出くわす。こんなところで遭うとはとちょっと驚いたが、Pさんの驚きようは尋常ではない。「この道で先生に会いそうな予感がしていたのです」と言う。ふ~ん、予感ね。霊感スイッチ入っちゃいましたか。就活でお疲れのようである。

      いま企業面接をひとつ終えてきたところで、昼食はまだだというので、近くの「コットンクラブ」で一緒に食べることにした。私はシーフードパスタ、Pさんは高菜とホタテのパスタを注文。

      就活の状況を聞くと、連戦連敗が続いているという。いまが一番苦しいときだろう。就活というシステムへの憤りを感じて、さやぐれたゴリラのようになってしまいがちである。敗戦を引きずらないことだが、あまり「気にしない、気にしない」とやっているのも、感情を麻痺させ、就活ロボットのようになってしまうのでよろしくない。適度な反省と折れない心。就活は現代の若者にとっての精神修行のようになっている。

      Pさんの話を聞いて、いくつかのアドバイスをする。大丈夫ですよ、君なら。

  

 

    帰宅の途中で大井町で降りて、山田電器でデジカメの不具合を診てもらう。修理に出すことなく、その場で直る。

    大井町に来たときは「pottery」で一服していくのが習慣である。線路脇の土手の桜並木の中に3本だけ河津桜が混じっていて、その場所がちょうど「pottery」の前で、見事に開花している。河津桜はソメイヨシノと違って、花と葉が同時に出る。 

       閉店(6時半)の1時間ほど前だが、店に客はいなかった。ケーキと紅茶を注文する。

       店の前の桜の話を挨拶代わりにしてから、「このカフェはいつからやっておられるのですか」とマダムに尋ねたら、「今年で25年目になります」とのこと。平成元年の開業ということだ。カウンターの中の棚にはたくさんのカップとソーサーが並んでいる。「pettery(陶器)」という名のカフェにふさわしい。「きれいですね」というと、「ありがとうございます」とニッコリされた。私に出してくれた紅茶のカップもなかなか素敵だ。

       「現代文藝評論集」を拾い読みしていたら、水を注ぎに来たマダムが、「難しそうな本をお読みですね」と言った。箱入りで、ハードカバー。小さな活字の2段組みの本は、ただそれだけで「難しそうな本」に見えるのだろう。ちょうどそのとき読んでいたのは、「あるいは、確たる主張や、批評的な立場という問題ではなかったのかも知れない。」という一文で始まる佐伯彰一の「傳記と分析の間」という評論である。普通、「あるいは」という接続詞が文章の冒頭に来ることはない。何に対して「あるいは」なのかがわからないからである。もしかして抄録なのかと思ったが、そうではないようである。要するに、一種の倒置法を使ったちょっと気取った書き方をしているのだ。評論家の描く文章はいまも昔もそういうものだ。

      「ええ、確かにちょっと難しい本です。でも、値段は安いんです。古本屋の店先で100円で投げ売りされていた本です」と答えると、「100円!」とマダムは大いに驚いた。

      閉店の15分前に店を出る。私が店を出るときに、若者が二人入ってきた。マダムが「あと20分ほどで閉店なのですが、よろしいですか」と若者に尋ねている。5分おまけのようである。2人は顔を見合わせて、「いいよな」と言った。

      卒業生で書家のTさんが出演しているミュージックビデオがユーチューブにアップされている。とってもスタイリッシュ。このビデオの制作を手掛けたのは、Tさんの同級生だったMさんの旦那さんである。

      なお、このビデオの収録の時に、Tさんがいかに緊張しまくったかという話が、Tさんのブログに載っている。