温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

台温泉 冨手旅館

2013年07月03日 | 岩手県
 
前回取り上げた「藤助屋」さんから歩いて数十秒のご近所にある「冨手旅館」が次なる訪問先です。こちらのお風呂は「鶴の湯」と称されているようです。玄関ではニャンコがお出迎え。



玄関脇の外水道には「台温泉発見の地」と書かれた札が置かれていましたが、本当にここなんですかねぇ…。今から約600年前、山に入った漁師が湯煙らしきものを発見して村に帰り、それを聞いた将監が現地を探索して発見したのが台温泉の開湯縁起なんだそうでして、その時に温泉で傷を癒していた鶴がその場から飛び立ったという伝説も残っていて、それが「鶴の湯」という名前の由来のようです。ちなみに台という地名はアイヌ語由来で「森」という意味なんだそうでして(参考:台温泉旅館組合HPの「台温泉の歴史」)、北東北にはこの他にも秋田県の湯の岱・伊勢堂岱・上の岱、青森県の長平(ナガダイ)・毛無岱(八甲田)などなどタイが付く地名は枚挙にいとまがありません(北海道は言わずもがな)。



浴室はひとつしかないため、女性が使う場合はこの札を提げるようです。


 
脱衣室には掛け流しであることをアピールする手書きのプレートが掲げられていました。綺麗で明るい室内には扇風機が設置されており、湯上りで火照った体をクールダウンするにはもってこい。棚が置かれている区画の先にはステップがあって、それを下りて浴室へ向かいます。前回の「藤助屋」同様、階段を下りてゆく温泉には良いお湯に巡り合える可能性が多いので、こうした構造の部屋を目にすると否が応にも期待が高まります。わくわく。


 
淡い水色のタイルが貼られた浴室は、半地下のような位置にありながら、窓から燦々と外光が降り注いでいるために、意外にも明るくて閉塞感は感じられません。湯船は左右に形状の異なるものが1つずつあり、シャワーなどの使いやすい水栓類は無い代わりに、お湯や水が出る配管むき出しのコックがひとつずつ設けられています。使いやすいシャワーが便利なことは言うまでもありませんが、こうしたプリミティブな水栓もまた古い温泉らしい趣きがあるので、私個人としてはこの手の設備もかなり好きです。



右側の浴槽は2人サイズで、縁が石材で槽内はタイル貼り。ヨットの帆を逆さにしたような形状です。お湯はぼんやりと灰白色に懸濁しており、綿ぼこりのようなスタイルをした灰白色や黒色の湯華が大量に浮遊・沈殿していました。


 
浴槽の手前側にはイミテーションのモミジが飾られた岩が据えられており、そこから竹筒を模した管が突き出ているのですが、その管からは何も出ておらず、その代わりに浴槽隅にある丸い湯口からお湯が噴き上げられていました。上述のように源泉かけ流しの湯使いなんだそうでして、湯船はちょっと熱めの湯加減でしたが、入りしなにピリっとする熱いお湯に全身を浸すと、身も心もシャキッと引き締められ、俄然活力が漲りました。とはいえ、若干お湯が鈍っているような気もしますが…。


 
一方、黒い御影石のような石材で縁取られている、左側の一人サイズの四角い浴槽には、私の体感で50℃以上のアツアツなお湯が張られており、熱いお湯に慣れているはずの私もさすがにこの時は入れず仕舞いでした。ぼんやり濁っていた右側の槽と違って、こちらのお湯は濁りのない無色澄明、湯の花もそれほど目立っていませんでした。左右両浴槽のお湯が同じ源泉であるとするならば、その見た目の状況から察するに、この左側の浴槽の方がお湯の鮮度が優れているのでしょうね。


 
浴室左手前の隅には洞窟を模したような湯溜まりがあり、ここに溜まった源泉は床の下を潜って熱い左側の浴槽へと注がれてゆきます。湯溜まりには柄杓が置かれているので、そこから直接お湯を汲むこともでき、実際に汲んでお湯を「テイスティング」(←なんだか気障な言い方ですね…)をしてみますと、薄っすらとタマゴ感(味と匂い)を有しながらも癖の少ないマイルドな質感が得られました。サラサラスベスベで軽やかな心地良い浴感ながら、お湯の持つ力強さは流石であり、まるで体の中で炭が燃え続けているかの如く、湯上りはいつまでも火照り続け、汗もなかなか引きませんでした。


2号泉
単純温泉 86.5℃ pH8.5 76L/min(掘削自噴) 溶存物質0.8210g/kg 成分総計0.8214g/kg
Na+:200.2mg(87.71mval%), Ca++:15.2mg(10.88mval%),
Cl-:103.7mg(27.24mval%), HS-:1.5mg(0.37mval%), S2O3--:0.4mg(0.00mval%), SO4--:308.7mg(59.98mval%), HCO3-:58.3mg(8.96mval%),
H2SiO3:87.8mg, HS:0.2mg,

花巻駅前(4番のりば)より岩手県交通バスの台温泉行きで終点下車、徒歩5分(400m)
岩手県花巻市台第2地割18
0198-27-2553

日帰り入浴時間要確認
200円
石鹸あり、他備品類なし

私の好み:★★
コメント
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