今日から数回連続で熊本県杖立温泉を取り上げてまいります。杖立川の谷間に20近い旅館が建ち並ぶ当地は、川沿いの開けた温泉地らしい景観も良いのですが…
山と川に挟まれた狭隘な土地で、旅館や民家などが犇めき合いながら甍を競っており、その建物の間をすり抜けるように伸びている裏路地がとっても魅力的です。杖立では裏路地のことを「背戸屋」と呼んでいるんだそうでして、昭和の情景がプリザーブドされたレトロな風情の「背戸屋」は、どこを切り取っても非常にフォトジェニックです。
階段を上がっていると、頭上から「ミャー」と鳴き声が聞こえてきたので、その方向を見上げてみますと民家の小窓からニャンコがこちらをじっと見つめていました。
階段を上り詰めたところに鎮座しているのは薬師堂。
薬師様の手水の傍にもニャンコが逍遥していました。猫が似合う街並みです。
そのお薬師様の近くに建てられている共同浴場「御前湯」に入ってみることにしました。杖立温泉には数軒の共同浴場があるものの、全てが外来者に対してオープンな訳ではなく、一部施設は常時施錠されているため外来者にとっては利用するハードルが高かったりするのですが、この「御前湯」は観光客に対して開かれている共同浴場であり、路地の随所にも位置を指し示す看板が掲示されているほどです(他の共同浴場には案内がないため探すのに苦労します)。
杖立温泉の共同浴場は全て無人ですので、自分で料金箱に所定の金額を投入してから浴室へと入ります。外観からしてこぢんまりとした湯屋であることに想像は難くないのですが、入口の引き戸を開けるとすぐ目の前に脱衣室の棚が迫っており、しかもその棚も4つしか無く、想像以上のコンパクトさに驚いてしまいました。脱衣室内はすのこ敷きで、床以外の室内全面にニス塗りの木材が用いられています。下足場すら確保できない狭さゆえ、靴は玄関の外の邪魔にならないところへ並べておきました。
浴室は上部が木材むき出しで、下部がピンク色のタイル貼り、天井の湯気抜きは採光のためガラス窓になっていました。男湯の場合、室内右側にスパウトのみの混合栓が2基並んでいるのですが、訪問時はお湯のコックを開けてもお湯は出ず、冷たい水しか吐出されませんでした。
タイル貼りの湯船は2人サイズで、縁に用いられている石材には温泉成分が付着したためか白く染まっていました。奥より突き出た配管から激熱のお湯がチョロチョロと落とされています。源泉温度があまりに熱すぎるため投入量を絞って温度調整しているのでしょうけど、この時は絞りすぎのために却って湯船がぬるく、かといって湯口の配管にコックのようなものが見当たらないため自分で投入量を増やすこともできず、仕方なくぬるいお湯に我慢して入りました。
お湯は無色透明でトロミがあり、タマゴっぽい硫黄の味と匂いが少々、そしてごく薄い塩味が感じられます。湯船の中ではツルスベ浴感の中に引っかかりも少々拮抗していましたが、全般的にはツルスベの方が優っていました。
湯船にはこのように黒く硫化した水栓もあるのですが、両方共コックを捻ってもうんともすんとも言わず…。お湯の投入量の調整は地元の方が行うのでしょうから、ご近所の方にその点について伺えば良かったのかもしれませんが、生来の恥ずかしがり屋さんである私は一言も言い出すことができず、ぬるいお湯に浸かり続けたのでありました。
温泉分析表掲示なし
熊本県阿蘇郡小国町下城
杖立温泉温泉観光協会HP
8:00~21:00
200円
備品類なし
私の好み:★★