温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

平山温泉 華の番台

2013年07月17日 | 熊本県

熊本県の平山温泉は数ある九州の温泉でも近年人気を集める注目のスポットでありますが、なぜ人気を博しているのかを私なりに考察したところ、そのひとつとして挙げられるのが、施設の多様性です。オーソドックスな旅館もあれば、家族風呂専門の施設もあり、大衆的な公衆浴場もあれば、女性にターゲットを絞った雰囲気の良い施設もある、などなど選択肢が多いんですよね。しかもそれらは全て田園風景の中に点在していて温泉街を形成していないために、どの施設も長閑で自然豊かな環境に囲まれており、手軽にちょっとした秘湯感が味わえるのも良いところです。従来の日本の温泉業界は、お湯の良さに胡座をかいたり、旧来の営業スタイルに拘泥するあまり、結果的に自分で自分の首を絞める結果に陥っているわけですが、少なくとも平山温泉においてはそうした陋習から脱しようとする頑張りが伝わってきます。

さて今回はそうした多様性に富む平山温泉の中でも、女性客にターゲットを絞った日帰り入浴施設である「華の番台」を取り上げてみます。こちらは隣接する「山懐の宿 一木一草」と同経営のようですね。
私も今でこそ休日を地方の温泉めぐりに捧げる生活を送ってますが、20代後半までは麻布・白金・青山・三宿・中目黒などの女の子受けするような飲食店に夜な夜な通って洒落た男を気取っておりましたので(鼻つまみ者ですね)、いまだにその頃の感覚がたまに頭を擡げ、自分の醜い容貌に似つかわしくないおしゃれな店に心を惹かれてしまうことがあり、今回も「華の番台」を見つけたときにはついつい過去の私のアンテナが反応してしまって、気づけば駐車場に車を止めてエントランスに向かって歩みを進めていました。


 
施設全体がアジアンテイスト、具体的にはバリ島をイメージしていると思しきデザインによって統一されており、駐車場の縁石にもそれらしき像が載っかっていました。階段の中央で水が流れているエントランスのアプローチからしてリゾート気分たっぷりです。


 
券売機で料金を支払い男湯へ向かいます。脱衣室は高級リゾートさながらで、とても広く清潔感が横溢しています。


 
ロッカーの扉は赤い木材製。ひとつひとつが大きくて使い勝手良好です。小上がりにはマッサージチェアーや扇風機があり、湯上りに涼む場所としても良いでしょうね。東南アジアテイストの施設ながら、この脱衣室だけは和風の内装となっており、これをバリエーションと理解すべきかコンセプトの迷走と捉えるべきかは判断に戸惑うところですが、ま、日本だってアジアの一員ですから、そんなことでいちいち重箱の隅を突く必要はありませんね。


 
洗面台も数が多くて非常に綺麗。アメニティも充実しています。某ビジネスホテルでは男性向けのアメニティを充実させたら客室の稼働率がアップしたそうですが、今やアメニティ類は女性のみならず、男にとっても重要なのであります。



脱衣室から階段を下って浴室へ。風呂と発音するのではなく、BathやSpaと表現したくなるような、広くて綺麗でリゾート感溢れる室内です。入浴槽は大小ひとつずつあって、小は水風呂です。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が7基設置されており、お湯のコックを開けると源泉が出てきます。備え付けられているシャンプー類は2種類あって、好みの方をチョイスすることができます。また子供でも楽しく入浴できるよう、カエルさんの腰掛けが用意されていました。


 
画像左(上)の壺に注がれているのは上がり湯。画像右(下)はサウナでちゃんと水風呂もありますから、たっぷり汗をかきたいお父さんでも満足して利用できるはず。


 
大きな主浴槽の真ん中には蓮の花を象った湯口が突き出ており、花弁を滴りながら湯船にお湯を満たしています。この手の施設はえてして湯使いに難がある傾向にあるのですが、さすが温泉にうるさいお客さんが多い九州だけあって、こちらでは見事に掛け流しの湯使いとなっており、浴槽縁よりしっかりした量がオーバーフローしていました。浴槽の立ち上がりにも細かなレリーフが施されており、オーバーフローのお湯はそのレリーフの上を滑るように滴っていました。なお浴槽の右側は浅くなっており、寝湯するにはちょうど良さそうな具合になっています。


 
露天エリアもお風呂というよりビーチリゾートのプールサイドやガーデンテラスのような、明るく非日常的な雰囲気です。露天エリアには3つの温浴槽があり、そのうち露天出口の正面に位置しており浴槽(画像右)は船の帆のような形状をしており、屋根掛けされていて、いかにもバリっぽい彫り物が施された石からお湯が注がれ、縁からしっかりと溢れ出ていました。



露天エリアにもシャワー付き混合水栓が3つ設けられているので、もし内湯の洗い場が混んでいたら、こっちを使えばOKですね。


 
露天エリアの床タイルにも、風呂の屋根の欄間にも、蓮の花の模様が施されています。イメージ造りが徹底していますね。



脱衣室側には上下2段に分かれている浴槽もあり、湯口のある上段から下段へお湯が流れるようになっているため、上段は適温であるものの、下段の浴槽はかなりぬるめでした。



適温の上段に入ると、こんな眺めを楽しめます。緑豊かで静かな環境の中、のんびりと湯浴みできる幸せなひととき。


 
二人が上に抱える壺を象った湯口より、ちょっと熱めのお湯が直下に据え付けられている木の箱へ一旦注がれています。この箱は底が開いており、あくまで私の推測ですが、熱対流によっていくらか温度が下がったお湯が箱の下部から浴槽へ出ることにより、浴槽の温度を調整しているのでしょう。もちろんこちらも湯使いは掛け流しです。
肝心のお湯についてですが、無色澄明で一見すると普通のお湯のように見えますが、じっくり味わうとかなり奥深くて面白いお湯であることがわかります。具体的にその特徴を列挙しますと、湯中では半透明で薄い白色系の湯の花がちらほら浮遊しており、極僅かなタマゴ感(匂いと味)のほか、柑橘類の皮のような清涼感と微収斂が組み合わさった苦味、爽やかさを伴うアブラ的知覚が感じられます。ヌルヌルまでは及びませんがそれに近い程度のツルスベ浴感が得られ、特に入浴中に肌を擦るその刹那は誰でも自分が美人になったと勘違い(笑)できちゃうこと間違いなし。分析表によればメタケイ酸イオンが53.1mgと表記されているのですが、これが事実であれば全国屈指の多さであり、少なくとも九州の温泉では一番か二番を争うような多さかもしれません(非遊離成分のメタケイ酸(H2SiO3)だったら話は別ですが…)。その一方で硫化水素イオンが4.7mgも含んでいるのにあまりイオウ感が得られなかったのは意外でした(日によるコンディションの上下が激しいのかな)。

施設としてのコンセプトがしっかりしており、綺麗で使いやすく、しかもお湯も良質。にもかかわらず、料金はわずか350円なのですから、本当に恐れ入ります。もう関東地方で暮らしているのがバカバカしくなっちゃいました。今すぐにでも九州に移住したい気分です。お湯にこだわる方も、SPAとしての施設面や雰囲気を重視する方も、両方が満足できる素晴らしいお風呂でした。


アルカリ性単純硫黄温泉 46.5℃ pH10.00 溶存物質252.3mg/kg 成分総計252.3mg/kg
Na+:77.7mg(97.41mval%),
Cl-:44.8mg(32.23mval%), HS-:4.7mg(3.58mval%), HCO3-:33.6mg(14.07,val%), CO3--:24.1mg(20.46mval%), SiO3--:53.1mg(17.65mval%),
H2SiO3:ND,

山鹿バスセンターより産交バスの南関線(平山経由)で「平小城」バス停下車、徒歩11~12分(約900m)
(山鹿バスセンターまでは熊本駅・玉名駅・肥後大津駅などから路線バスに乗車)
熊本県山鹿市平山陣ノ内4998  地図
0968-44-0887
ホームページ

10:30~22:00 第1・3火曜定休(ハイシーズンは営業)
350円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする