温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

秩父川端温泉 梵の湯

2013年07月24日 | 東京都・埼玉県・千葉県

埼玉県秩父地方の日帰り入浴施設「梵の湯」では源泉そのままの冷たい冷鉱泉を浴びることが出来るので、キリリと冷えた鉱泉で身を引き締めるべく、先日秩父でのちょっとした用事のついでに訪問してまいりました。皆野秩父バイパスの新皆野橋のほぼ直下に位置しており、周辺には目立つ看板がいくつも立っていますし、広い駐車場も完備されていますから、車でアクセスするにはかなり便利かと思います。なんて言いながら、私はアホみたいに皆野駅からとぼとぼと歩いて現地へ向かったのですけど…。



2007年にオープンした施設ですから、まだ5年しか経っていないわけでして、確かに外観・館内ともそれなりに綺麗なのですが、ロビーは広いながらも一角では野菜などが販売されていたりして、田舎臭さがたっぷりです。券売機で料金を支払い、その券を下足箱のキーと一緒にフロントへ差し出します。受付スタッフの方はとても丁寧に利用方法に関して説明してくれました。
浴室がある方に向かって館内の廊下を進んでゆくのですが、その廊下の両サイドには俳句だかポエムだかよくわかりませんが、この施設を運営する社長のことばがたくさん貼りだされていました。なるほど、社長のキャラがかなり強い会社のようですね。相田みつをの2番手を目指しているのかな。
なお館内にはこの廊下や脱衣室などにロッカーが設置されているのですが、廊下に置かれている貴重品用ロッカーは無料であるのに対し、脱衣室のロッカーは有料(100円)となりますので、100円を節約したい方は下のロッカーを使うことをおすすめします。



廊下に並行して上画像のようなお座敷の休憩室や食堂も併設されています。私が訪問したのは平日の夕方だったのですが、お座敷には誰もおらず水を打ったような静寂が室内を覆っていました。


 
社長のポエムゾーンを抜けて浴室入口の前まで来ると、傍のカウンターには「試飲してください」という言葉とともにウォーターサーバーが用意されていました。冷たくて美味しい水なので、てっきり鉱泉水を冷やしたものかと思いきや、紙をよく見たらば「鉱石・水道水」と書かれているではありませんか。ということは、タンクに詰められている水は、何らかの効果をもたらす鉱石に触れさせた水道水ってことなのかしら?


 
脱衣室は温泉施設というより公営プールのような無機質で実用本位の造りでして、洗面台やドライヤーが多いのは助かるのですが、荷物や衣類を収めるためのロッカーは全て有料である点はかなり痛い…。しかもバネで強制的にすぐ閉まっちゃうタイプの扉なので、使いにくいったらありゃしない。私は貴重品のみ廊下の無料ロッカーに預け、衣類などは有料ロッカーで鍵をかけずに(つまり100円玉を使わずに)収めちゃいました。

しかしながら脱衣室のストレスを一気に払拭するほど内湯の雰囲気は立派でして、大きな連続窓やゆとりのある広い浴槽、そして高い天井によって、内湯にありがちな湯気篭りや圧迫感とは全く無縁の開放的で快適な環境が広がっており、しかも窓の向こうに広がる庭園の緑や荒川の流れ、そして落ち着きのある色調の内装によって、ちょっとした和風のラグジュアリー感すら伝わってくる品の良いお風呂となっています。洗い場にはシャワー付き混合水栓が14基設置されており、定期的にスタッフの方が見回りに来るためか、とても綺麗な状態が維持されていました。


 
窓に面した浴槽は20人以上同時に入っても余裕がありそうな、実に大きなものでして、薄く黄土色を帯びて弱く濁るお湯が張られていました。男湯の場合は左側にお湯の投入口や循環用の吸い込み口があり、反対側(右側)には3人分に区画された寝湯スペースが設けられています。

館内表示によれば、「かけ流し式循環風呂」という私の知識や理解能力を超越した湯使いを実施しているんだそうです(「獲れたての加工食品」とか「新品のセカンドハンズ」などと言っているようなもんじゃないのかな…)。ろ過装置に関しては「国内最高のコンパクトですごく能力の高い衛生管理にすぐれたろ過器」と、文字数の割りには抽象的な表現によって説明されていました。もうとにかく社長の情熱と理念を信じればなんでもアリといったような感じです。

でもそうした説明の問題はともかく、お湯のフィーリングはなかなか素晴らしいものが有り、浴槽のお湯を体にかけてみますと、感動するほど強いヌルスベ感が全身を纏い、その感触は全国の名だたる「うなぎ湯」に匹敵するほどでした。お湯からは薄い塩味と重曹味が感じられますが、ただ惜しむらくは消毒臭が気になってしまう点です。


 
浴槽は石板貼りなのですが、ツルスベ浴感の鉱泉ゆえに非常に滑りやすいため、縁には滑り止めが貼られており、また床には人工芝が敷かれていました。こうした小さな配慮は嬉しいですね。


 
露天風呂は地元荒川の岩と鉄平石を用いた岩風呂で、8人前後のサイズといったところ。全体的に屋根掛けされているので多少の悪天でも支障なく湯浴みできるかと思います。浴槽の奥には休憩ができるテラスがあり、すぐ傍には荒川が流れているのですが、目隠しのためか樹木が密に植えられており、ロケーションの割りには開放感や眺望がいまいちだったりします。
もちろん今回はこの露天風呂にも入りましたが、露天のお湯からはビックリするほど知覚的特徴も浴感も得られませんでした。無色透明無味無臭のこのお湯は、おそらく鉱泉ではなくてごくごく普通の沸かし湯ではないかと思われます。


 
さて、主浴槽に並んで浴室右奥に据えられてる小さな槽が今回スポットライトを当てたい槽です。一応掛け流しの温泉施設を取り上げている拙ブログとしては、この小さな槽を無視するわけにはいきません。カエルの置物が載せられたフタで半分閉じられている石造りの小さな槽には、加温されていない冷たいままの冷鉱泉がそのまま注がれており、いわゆる源泉槽となっているのです。以前は水風呂として入浴することができましたが、現在は入浴不可能となっており、手桶で汲んで浴びるほかありません。実際に私が桶で頭からジャバジャバと冷鉱泉を浴びていると、槽内のボールタップが働いて自動的に鉱泉水が補充される仕組みになっていました。この源泉槽の鉱泉水は僅かに黄土色を帯びながらほぼ透明であるように見え、主浴槽で感じられた塩味は無い代わりに、金気味や重曹味、そしていわゆる硬水のミネラルウォーターに含まれるような硬水的な味が確認できました。一方、ヌルヌル感に関しては、主浴槽ほどでは無いものの、それなりに感じられました。この手の泉質は加温することによってヌルスベ感が増す場合がありますから、源泉そのままの状態より加温された主浴槽の方がヌルヌル感が強いのは当然かもしれません。でも爽快感や鮮度感は源泉槽の水風呂に軍配が上がります。

この施設では2種類の源泉で湧出する鉱泉が使われているんだそうですが、館内で掲示されている分析表には1号(梵の湯)、2号(凡の湯)、そして1号と2号の混合、というように、ご丁寧に3種類に関して掲示されており、わざわざ混合する前の鉱泉まで利用客に明示している点は大いに評価したいところです。でもそれぞれの源泉あるいは混合泉がどのように使われているか(どの槽がどの源泉なのか)について説明が無い点はちょっと残念。主浴槽はおそらく混合泉なのでしょうけど、源泉槽に関しては混合泉では無いような気もします(あくまで個人的なフィーリングによる判断ですが)。


 
風呂あがりといえばビン牛乳ですよね。浴場入口にはビン牛乳の自販機が設置されていたので、湯上りに購入し、腰に手を当てて一気飲みしました。小鹿野の「戸田牛乳」という銘柄なのですが、これって秩父地方ではおなじみなんでしょうか? なかなか美味しかったので、是非お土産に持って帰りたかったのですが、どこかで売ってないかな…。フタには「彩の国牛乳」という土屋県政の残滓みたいなネーミングがプリントされていました。そういえば秩父には「西秩父桃湖」や「秩父さくら湖」など、前知事の県政私物化が疑われる物件がいくつかありましたっけ。ま、神奈川県民の私が埼玉についてあれこれ述べるのは筋違いですから、これ以上の言及は避けて話題を本題に戻しますが、加温循環消毒とはいえヌルヌル感の強いお風呂には一浴の価値があり、しかも源泉そのままの冷鉱泉も浴びることができるわけですから、侮りがたい日帰り入浴施設と言えるかと思います。館内には非科学的な説明文がたくさん掲示されていますが、それを信じるか信じないかは貴方次第です。


1号井戸
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 16.1℃ pH8.6 12L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質3.119g/kg 成分総計3.119g/kg
Na+:1077mg(98.82mval%),
Cl-:1177mg(68.79mval%), HS-:0.3mg, HCO3-:723.7mg(24.58mval%), CO3--:91.8mg(6.34mval%),
H2SiO3:12.5mg, HBO2:21.6mg,

2号井戸
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 16.5℃ pH9.1 11L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質1.567g/kg 成分総計1.567g/kg
Na+:523.2mg(99.04mval%),
Cl-:372.7mg(45.36mval%), HS-:0.9mg, HCO3-:488.7mg(34.57mval%), CO3--:121.8mg(17.52mval%),
H2SiO3:14.6mg, HBO2:15.6mg,

混合泉(梵の湯(1号井戸)・凡の湯(2号井戸))
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉 17.4℃ pH8.9 50L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質2.569g/kg 成分総計2.569g/kg
Na+:865.3mg(98.69mval%),
Cl-:857.7mg(62.04mval%), HS-:0.7mg, HCO3-:692.5mg(29.11mval%), CO3--:96.6mg(8.26mval%),
H2SiO3:15.6mg, HBO2:20.0mg,

(掛け流しは冷鉱泉の小槽のみ。主浴槽や露天は加温循環消毒あり)

秩父鉄道・皆野駅より徒歩25分(2.0km)
埼玉県秩父市小柱309-1  地図
0494-62-0620
ホームページ

9:00~22:00(土曜のみ22:30まで)
平日750円(時間制限なし)・土休日850円(3時間未満)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

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