温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

カワイイ&懐かしい 宝登山ロープウェイ

2013年07月26日 | 東京都・埼玉県・千葉県
※今回から2回連続で、温泉とは無関係の記事が続きますのであしからず。今度拙ブログに温泉が登場するのは7月28日の予定ですので、恐れ入りますがそれまでお待ちください

秩父の鉱泉巡りをしていた某日、そのついでに昔懐かしい乗り物と触れ合いたくなり、現役のロープウェイでは関東最古(※)といわれている「宝登山ロープウェイ」に乗ってまいりました。
(※)某フリー百科事典では「関東最古の搬器」と記されていますが、実際には箱根・宮ノ下の大和屋ホテルで稼働している自家用ロープウェイ「夢のゴンドラ」が関東最古だと思われます。大和屋ホテルはれっきとした索道事業者ですからね。でも「夢のゴンドラ」は宿の利用客以外は乗れませんから、公共交通機関としては「宝登山ロープウェイ」が最古と言えるのかもしれませんね…。


 
秩父鉄道・長瀞駅からダラダラ坂を15分ほど歩いて、宝登山ロープウェイの山麓駅へとやってまいりました。駅には実際に使われている索条(ケーブル類)などのサンプルが展示されています。


 
まずは窓口にて乗車券を購入します。西武鉄道や秩父鉄道などで発行しているフリーパス(きっぷ)を提示すると、通常は往復で800円のところ、720円になる割引料金が適用されます。窓口にて発行されるきっぷは硬券(A型硬券)なんですね。もう既にレトロな雰囲気です。同駅では入場券も販売しているので、実際に購入してみました。乗車券同様に硬券(こちらはB型硬券)であり、そのレイアウトは親会社である秩父鉄道各駅で発行される入場券と同様です。ダッチングなどは無いらしく、日付は入りませんでした。



宝登山ロープウェイってどんなロープウェイなのでしょうか。
公式サイトに掲載されている説明文をそのまま引用しますと…
標高497メートルの宝登山(ほどさん)に架設されている宝登山ロープウェイは、 山麓駅から山頂駅までの全長832mを約5分間で結び、2台のゴンドラ(50名様乗り)が、山頂駅と山麓駅をつるべ式に往復する四線交走式システムで運転を行っています。また、ゴンドラにつけられた「ばんび号」と「もんきー号」の名前の由来は、宝登山小動物公園の人気者、ニホンザルとシカにちなんだ名前です。
つまり、山麓駅と山頂駅の間を「ばんび号」と「もんきー号」という2台の搬器がつるべ式(片方が上がれば他方は下る方式)により昇り降りしているわけです。

では、のりばへ向かいましょう。


●ばんび号
 
やばい! 超カワイイ!
のりばで待っていたのは「ばんび号」でした。かわいいキャラクターがあふれている現代において、「ばんび」という昭和臭いワードから放たれる響きはあまりに懐かしく、むしろ新鮮味すら感じられます。
ネーミングのみならず、ズングリムックリとした丸っこい搬器のスタイルが、とっても昭和的です。名前といいボディーといい、昭和30年代から時が止まっているかのようであり、かつての少年たちが夢に抱いた未来の乗り物のようです。「ばんび」という字の丸っこくてポップな感じのレタリングも、高度成長期っぽい匂いがしますね。観光地はもちろん、当時はどのデパートにもあった屋上遊園地的なセンスが強く匂います。ジャイアンツのキャップを被り、ヨレヨレのシャツに半ズボンという格好の男の子が、メンコやビー玉などと一緒に自分の「宝箱」にしまっていた、表紙が厚紙の「のりもの絵本」に登場していそうなデザインです。



カラーリングはかつて秩父鉄道を走っていた車両の塗装に準じているのですが、丸っこいボディに黄色と茶色の配色を見ているうちに、ふと或るウルトラ怪獣、いや快獣を思い出さずにはいられなくなりました。「快獣ブースカ」に似ていませんか。まさかロープウェイの搬器デザインに円谷プロダクションが一枚かんでいたりして。
(上画像の「ブースカ」フィギュアは私個人の所有物です)



つるべ式の運行ですから、必ず真ん中の位置で反対側と行き違います。上画像は山麓駅へ下ってゆく「もんきー号」です。



折り返し、山頂駅を出発して山麓駅へ下ってゆく「ばんび号」。上から見下ろすと、搬器の丸っこさがより判然としますね。なお搬器こそ開業当時のままですが、懸垂機は2002年頃に更新されているそうです(某無料百科事典より)。


 
5分の乗車で山頂駅に到着。標高453m。ほとんどのお客さんは往復の乗車券を購入するのですが、歩いて宝登山へ登ることもできますから、そのような客のために片道券も販売しており、山頂駅の窓口では山麓駅同様に入場券も販売していました。



こちらは山頂駅での出発直前、「ばんび号」の前に立ってお客さんを迎えるスタッフのお姉さんの様子です。車体に描かれたバンビちゃんのイラストの、何とも言えない懐かしさと可愛らしさに思わず感涙しそうになりました。スタッフのお姉さんは今時珍しくお姉さんは三つ編みをしていますが、失礼と語弊を承知の上、あくまで私の第一印象だけで申し上げれば、そのお姉さんの日常を推測するに、通勤時の愛車は改造済の黒いタントカスタム、キティーちゃんとヒョウ柄が大好きで、日没後には水商売でロープウェイの安い給料を穴埋めしていそうな風貌でしたので、おそらくレトロなロープウェイに合わせた髪型規定のようなものが存在していて、無理やり三つ編みにしているんじゃないかと、下らぬ想像をしてしまいました。ゴンドラ車内ではお姉さんが、これまた昭和の観光バスのガイドさん的な古風な口調で宝登山の観光案内をアナウンスしてくれます。その無理矢理感がまた何とも言えず良いのです。


●もんきー号
 
こちらは「もんきー号」です。「ばんび号」とスタイルは同一ながら、懸垂機は対称に取り付けられています。「もんきー」のレタリングは、元気ハツラツなちびっ子のイメージによく合いますね。



乗降口の両側に描かれたおサルさんの絵。
ドアはもちろん手動式です。扉のガラス窓はグレーのHゴムによる固定で、いわゆる鉄道車両で言うところのバス窓を上下逆さにしたような大小2段窓です。かつて電車のはめ殺し窓といえばHゴム(※)が当たり前でしたが、今や(少なくとも東日本では)その姿を見る機会も減りましたね。
(※)薬局で売っているHなゴムのことではありません。窓枠などに用いられるゴムのことであり、断面がH字型をしているのでそのような名称となっています。


 
平手でペシっと叩きたくなるような曲線を描くデコッパチ。このおでこにおける黄色と茶色の塗り分け方を見ますと、今はなき元パ・リーグ広報部長のパンチョ伊東氏の頭髪の生え際(というかズラ際)を連想してしまいました。車体表面のボコボコしたリベット接合も今ではあまり見られないものですね。

下部で出っ張っているライト類も当時のデザインセンスを象徴しています。この当時の鉄道車両はヘッドライトとテールランプを一体化させて出っ張らせるデザインが流行しており、具体的には国鉄の特急車両(181系などのボンネットタイプ・キハ82等)、東武DRC(1720系)・小田急NSE(3100形)・名鉄パノラマカー(7000系)・南海デラックスズームカー(20000系)などなど、枚挙に暇がありません。この搬器の設計者も当時の流行に沿ったのでしょう。


●車内
 
乗客に宝登山や長瀞の眺望を提供する大きなパノラマ窓。
国鉄の通勤電車を思い出させる青いシート。コーナーなど部分的に擦れて薄くなっていました。



車内銘板には「日本車輌 昭和36年 東京」と記されていました。てことは、今年でちょうど御年50歳を迎えるわけです。東京と記されていますが、当時の日本車輌の東京支社(蕨工場)は埼玉県川口市にありましたから(※)、つまり県内産の車体なのであります。
(※)蕨工場は昭和40年代に撤退し、その跡地は川口芝園団地となっています。


 
画像左は車内の操作スイッチ。一方、画像右の分度器のようなものは、おそらく水平器でしょうね。すっごくアナログな仕組みだこと…。


 
ペンキが厚く塗られた車内。空調なんてものはありませんから、暑い時には上の窓を全開にします。



バランスをとるため「車内では両側に平均に」乗ってくださいとのお願いが貼ってありました。
定員は50人で、宝登山で蝋梅が咲く頃には毎年満員の乗客を乗せるため、立客のための手すりは欠かせません。これまた私の勝手な想像ですが、この手すりの支持金物は、キューポラのある街川口で造られた鋳物かもしれません。もしそうなら、県内調達率が高い車体と言えそうです。今でこそタワーマンションが林立している川口の街ですが、そうしたマンションが立地している場所にはかつて鋳物工場が存在していたのであり、私も幼い頃、赤羽の荒川の土手で遊んでいると、川の対岸から北風にのって、キューポラから吐き出される煙とともに独特の臭いが漂ってきたことを思い出します。

懐かしさと可愛らしさを兼ね備えた搬器「空飛ぶブースカ」に乗って長瀞のパノラマを楽しむ5分の空中散歩。
宝登山の山頂には小動物園や宝登山神社の奥宮、そして蝋梅園がありますから、それらを目的に訪問するのも良し、あえて単純往復だけにして懐かしい搬器を堪能するも良し。観光地としての秩父の奥深さを実感させてくれる施設ですね。


秩父鉄道・長瀞駅より徒歩15分
往復800円(割引適用で720円)
宝登山ロープウェイのホームページ
コメント
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