温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

大滝温泉 富士屋ホテル

2013年07月28日 | 秋田県
 
失礼ながらも温泉界の昼行灯と称したくなるほど年々寂れる一方の秋田県大滝温泉。そんな温泉街にあって「やる気」が伝わってくるお宿「富士屋ホテル」で、日帰り入浴を楽しんでまいりました。こちらは積極的に日帰り入浴を受け入れている、大滝温泉ではありがたいお宿であります。


 
東北の温泉施設を巡っていると、館内で明らかにお婆ちゃん向けと思しき渋い色合いの衣服を販売してるお宿に出くわすことが多々ありますが、こちらのロビーでもやはり婆ちゃん好みの洋服がハンガーに吊られて陳列されていました。温泉では高齢者向け衣類(アパレルという語句はここでは似合いませんね)の需要が一定数あるということなんでしょうけど、まだ不惑に至らぬ私のような若輩者にはいまいち理解できないマーケットであります。受付にてスタッフの方に直接料金を支払い、館内説明を受けて奥へと進みます。フロントの向かいには冷たい水のサービスが用意されていました。


 
奥へ奥へと長く伸びる通路を進んで、その突き当りにある浴室へ。結構な距離を歩きましたが、裏路地に面した地味な正面玄関とは裏腹に、構内はかなり広いんですね。この日は私が初めての日帰り客だったらしく、この通路をのんびり歩いていたら、後ろからスタッフの方が駆け足で私を追い越し、浴室照明のスイッチをONにしてくれました。旅館の建物自体は結構年季が入っているようですが、一見した感じですと、脱衣室を含めたお風呂エリアは近年改装されたようでして、広い脱衣室は明るく綺麗で、籠も多くて洗面台のアメニティ類もそれなりに揃っており、使い勝手は良好でした。



浴室も広々としており、古い建物ゆえに低い天井は残念ですが、内装はすっかり綺麗に改修されており、2方向が大きなガラス窓となっているため、天井の低さを補って余りあるほどの開放感が得られ、昼間でしたら照明が無くても十分に明るい環境が創りだされていました。
床や浴槽の底などには十和田石と思しき青緑色の凝灰岩系石材が敷き詰められており、その性質上、濡れていても滑りにくいのは勿論のこと、独特の柔らかな質感が足裏に伝わってとても快適です。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が計9基設置されている他、立って使うシャワーも1基取り付けられています。もしかしたらシャワーから出てくるお湯って源泉かも…(間違っていたらゴメンナサイ)。


 
浴槽は大小2つに分かれたものが窓に面してL字形をなしており、奥の小さな浴槽は7~8人サイズで44℃近い熱めの湯加減である一方、大きな浴槽はその2~3倍はありそうな容量で万人受けする丁度良い温度がキープされていました。大小両浴槽にはそれぞれ湯口があって、そのまわりには硫酸塩の白い析出がこびりついています。館内表示によれば源泉温度が高いために加水されているそうですが、加温循環濾過消毒は実施されていない放流式の湯使いでして、御影石の縁より静々と常時オーバーフローしていました。

大小両浴槽とも湯口から出てくるお湯は共通して、加水されているとはいえ直に触るのが憚られるほど熱いのですが、にもかかわらず大小の湯船で湯加減が異なるということは、浴槽の表面積の違いによって温度調整ができているということなのかもしれません。なお大きな浴槽に関しては、奥の湯口だけでは湯船に温度ムラが発生してしまうため、湯口から離れた槽内の穴からも源泉が投入されていました。


 
露天風呂は日本庭園風で、木材で縁取られた四角い浴槽がひとつ据えられており、立派な造りの東屋が湯船の頭上を覆っていて、周囲には庭園を構成する岩や灌木が配置されています。私が訪問した日はツツジの花が終盤を迎えつつも、辛うじて鮮やかな赤紫色の花を咲かせていました。露天エリアの足元は天然石敷きですが、縁の木の上は滑りやすいので、私のようなマヌケな人間は足元注意。


 
お湯は二段のつくばいを落ちながら湯船へと注がれています。傍のモミジが美しいですね。内湯同様に湯口のお湯は熱いのですが、投入量が絞られているため、湯船では丁度良い温度となっていました。湯船を満たしたお湯は縁の浅い切り欠けから溢れ出ています。もちろん内湯と同じく放流式野湯使いです。なお槽内投入などは未確認。

お湯に関するインプレッションですが、いかにも大館界隈の温泉らしい典型的な無色透明の硫酸塩泉的特徴を有しています。内湯では浮遊物の無い澄み切ったお湯であるのに対し、露天の湯中では繊維質の浮遊物が見られたのですが、これは浴槽縁に用いられている木材の繊維が溶け出たものかと思われます。浴室内には石膏泉らしい匂いがふんわりと漂っており、お湯を口にすると石膏味と薄い塩味、そして弱い芒硝味が感じられました。お湯に浸かると硫酸塩泉らしいトロミとともにキシキシとした引っかかる浴感があり、ややぬるめの小さな浴槽でも入りしなはピリっとくる弱い刺激が肌を走りました。なお分析表には「わずかに硫化水素臭があり」と記載されているのですが、私の鼻が鈍感なのか、イオウ感に関しては実感できませんでした。お湯から上がった後は、まるで体内に熱した石炭を抱えているかのようなホコホコ感がいつまでも続き、なかなか汗が引きませんでした。無色透明とはいえなかなかパワーのあるお湯なんですね。


新5号井
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 64.6℃ pH8.2 1100L/min(動力揚湯) 溶存物質2196.1mg/kg 成分総計2196.1mg/kg
Na+:534.9mg(70.37mval%), Ca++:190.0mg(28.67mval%),
Cl-:551.9mg(47.24mval%), HS-:0.3mg(0.03mval%), SO4--:794.9mg(50.21mval%),
H2SiO3:55.9mg,
(平成11年7月23日)
源泉温度が高いため加水あり。加温循環濾過消毒なし。

花輪線・大滝温泉駅より徒歩5分(450m)
秋田県大館市十二所町頭22  地図
0186-52-3270

10:00~19:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず

私の好み:★★
コメント
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