温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

植木温泉 ふろや湯湧

2013年07月20日 | 熊本県
 
熊本の奥座敷として知られる熊本市北区の植木温泉に2012年末オープンした、新しい日帰り入浴施設「ふろや湯湧」を利用してまいりました。この場所にはかつて「植木温泉センター」という入浴施設がありましたが、旧来の建物はすっかり全面解体されて跡形もありません。なおこの「ふろや湯湧」は道路を挟んだ斜前に位置する「旅館平山」が経営しています。
こちらには一般的な公衆浴場の他に九州で人気の家族風呂もありますが、今回は公衆浴場の方を選択することにしました。瓦葺きの和風建築の湯屋は、壁面がなまこ壁を模したようなファサードになっていますが、明らかにイミテーションとわかるその造りや、屋号をプリントして扁額のように見せかけているカッティングシートなど、明らかな「安上がり」感が気にかかるところであります。



私が訪れた日はお客さんのほとんどが家族風呂を選択しており、公衆浴場を利用しているのは私一人だけのようでした。玄関入ってすぐ左に受付窓口があるので、そこで直接料金を支払います。スタッフの方は旅館から出向いているのか、皆さんの服装は作務衣姿で統一されており、対応も丁寧でした。受付の前には和室8畳の休憩スペースが用意されているのですが、単に畳が敷かれているだけで室内にはこれといった備品類は無く、ワンルームアパートの一室を見ているようでした。


 
新しい建物だけあって、脱衣室の入口の引き戸は、動きがとってもスムーズです。室内は清潔感に満ちあふれており、壁面などに木材も用いられていて温かみのある空間が造られています。エアコンも完備でとても快適に着替えることができるのですが、建材の材質のためか、ちょっと無機質すぎるきらいがあるかもしれません。


 
お風呂は男女別の内湯が一室ずつとなっており、露天風呂はありません。先述のようにこの日の他のお客さんは家族風呂を利用していたため、大きなお風呂を終始独占することができました。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が6基設置されており、お湯のコックを開けると源泉が吐出されます。腰掛けや桶の色はグレーに統一されています。洗い場にはボディーーソープやシャンプー類の備え付けが無いのですが、その代わりに受付で小さな石鹸が手渡されます。このため洗い場の水栓上の段には先客が残していった石鹸がたくさん放置されていました。業務用のボディーソープ等をポンプ式のボトルに詰めておいたほうがコスト的に安く上がりそうな感じがしますが、施設側が石鹸にこだわっているのは、何か理由でもあるのでしょうか。



浴槽は縁が御影石で槽内はタイル貼り。大小のふたつに分かれており、左側の大きな方(6人サイズ)はややぬるめで入りやすい湯加減である一方、右側の小さな浴槽(3~4人サイズ)はやや熱めの温度設定になっていました。お湯の投入口は両方に設けられており、それぞれから吐出されるお湯は湯船とほぼ同じ温度でしたので、左側に関しては若干加水されているのかもしれません(間違っていたらごめんなさい)。


 
画像左(上)が左側の大きな浴槽、画像(右)が右側の小さな浴槽です。左側の槽より右側のほうが水平位置がやや高くなっているため、右浴槽のお湯は一旦左浴槽へ落ち、左浴槽の縁から洗い場へオーバーフローする流れが出来上がっています。投入量が多いために常時溢れ出ており、私が湯船に浸かると左右の浴槽に関係なく、浴槽縁直下の排水用プラスチック製グレーチングを飛び越えてしまうほど、室内に音を轟かせてドバーっと豪快に溢れ出ていきました。

お湯は無色澄明で、弱いながらもはっきりとしたタマゴ的な味と匂い、そして重曹的な清涼感やほろ苦みが感じられました。天然の化粧水の如きツルツルスベスベの気持ち良い浴感が肌を優しく包み、湯上りには粗熱が程よく抜けて心地良い爽快感が楽しめました。泉質名こそ単純泉ですが、主成分は重曹ですし総硫黄も1.2mgありますから、単純泉的なサッパリ感と同時に硫黄泉的な味わい深さと重曹泉的な清涼感が体感できる、一粒ならぬ一湯で三度美味しいお湯であると言えるかもしれませんね。

このようにお湯はなかなか良質ですし、新しくて綺麗で使いやすい施設なのですが、ベージュやグレー系の色調の建材を多用しているためか、温泉施設としてはいまひとつ風情に欠け、かつ没個性的で実用本位な感じを受けました。尤も公衆浴場なのですからそれが本来の姿なのであり、私が抱いた感覚は的外れなのかもしれません。毎日の汗を流してサッパリするにはとても使い勝手の良い温泉だと思います。なおこの日の植木温泉一帯にはなぜか肥やしの臭いが漂っており、浴室の中にもこの臭いが入り込んできたのですが、植木温泉に関して記事をアップしている他のブロガーさんの記事を拝見しても、やはり肥やしの臭いについて言及されている方がいらっしゃるので、どうやら田園風景が広がる当地において肥やしの臭いは当然のように大気中に漂っているものなのかもしれませんね。



ちなみに「ふろや湯湧」のすぐ隣は家族風呂専門施設の「藤の瀬」です。この界隈は温泉の激戦区なんですね。関東で暮らす私にとっては羨ましいことこの上ありません。


ふろや湯湧
単純温泉 47.0℃ pH8.4 93L/min(動力揚湯) 溶存物質0.637g/kg 成分総計0.637g/kg 
Na+:163.7mg(95.70mval%),
F-:8.5mg(6.11mval%), Cl-:17.8mg(6.78mval%), HS-:1.2mg(0.54mval%), HCO3-:348.3mg(77.48mval%), CO3--:12.0mg(5.43mval%),
H2SiO3:53.8mg,

熊本バスセンターより産交バスの山鹿行(植木温泉経由)で「植木温泉」バス停下車すぐ
熊本県熊本市北区植木町米塚22  地図
096-274-7111(旅館平山)

9:00~22:00 火曜定休
300円
ロッカー(100円リターン式)・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (10)
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