九州で近年人気を博している熊本県の平山温泉。
田園風景の中に温泉施設が点在しており、わかりやすい温泉街こそ形成していないものの、施設数はかなり多く、しかも旅館や日帰りの家族風呂など多様な営業形態の施設が選択できるために、私が訪れた平日でも多くの観光客がこの地で湯浴みを楽しんでいました。
さてそんな中でも今回私が選んだのは公衆浴場「元湯」です。平山温泉の公衆浴場といえば鄙びた風情でファンから熱い支持を受けていた「温泉センター」が道路拡張工事に伴い数年前に閉鎖されてしまい、その代替として近接地で2009年8月にオープンしたのがこの「元湯」。ここには元々「栄楽」という旅館が営業していたんだそうでして、後述しますが、施設内にはかつての旅館の形跡がかなり残っておりました。
ロビーの券売機で料金を支払い、券をカウンターのおばちゃんに手渡して男湯へと向かいます。フローリングの広いロビーでは野菜や各種食品などが販売されており、さながら地元の食料品店のようでもありました。
男湯と女湯では造りが違うようですが、私はまがいなりにも一端の男ですので、当記事では男湯についてのレポートとなります。あしからず。
ウッディーな脱衣室を抜けると公衆浴場らしからぬ石造りの立派な湯船が迎えてくれました。大きなガラス窓から外光がさんさんと降り注ぐ湯船の手前側には洗い場が左右に分かれて配置されており、計6基(左側×2、右側×4)のシャワー付き混合水栓が取り付けられています(出てくるお湯は真湯)。
石板貼りの浴槽は石の仕切りによって左右に分割されており、湯口のお湯がダイレクトに注がれる右側は小さな4人サイズで湯加減は熱め、一方の左側はゆとりのある8~10人サイズで、右側の槽よりわずかに低い位置に設けられており、右側の槽から流れてくるお湯を受ける形になっていて、これにより湯加減は万人受けする調度良い加減になっていました。
左右の浴槽を見比べると、同じお湯なのに見た目に若干異なっていました。具体的には、湯口から直接お湯が投入されている右側では無色で澄み切った透明であるのに対し、左側では微かに白く霞んでおり、白い湯の花も左側の方が目立って浮遊していました。見た目のみならず、実際に入浴してみても体感の違いは明らかで、熱い右側は鮮度が抜群でシャキっとしているのに対し、左側は入りやすい温度であるものの鮮度感がイマイチで若干お湯が疲れているような感じを受けました。
湯口のお湯を手に掬って口にしてみますと、薄いタマゴ味と匂い、そしてアルカリ性単純泉らしい微収斂がはっきりと感じられ、ヌルっとした感触を伴うツルスベ感もしっかり肌に伝わりました。総硫黄が1.9mgのためギリギリのところで硫黄泉を名乗れないのが残念なところですが、ちゃんと硫黄の存在(タマゴ感)は確認できます。
浴室の窓の外には使われていない露天風呂や五右衛門風呂、そして内湯の廃墟が晒されていました。これらは旅館「栄楽」時代のお風呂なのでしょうね。庭の斜面は日本庭園の趣きがあるのですが、使われなくなって錆びきった五右衛門風呂の一つには澱んだ水が溜まっていたり、庭木の枝や雑草が伸び放題だったり、鉢なども散らかったままだったりと、荒れた状態のまま放置されてしまっているようで、ちょっと残念でした。なおこの露天風呂跡は立入禁止というわけではなく、浴室から自由に行き来することができ、露天ゾーンではシャワーがひとつだけ生きていて、実際にそのシャワーで水浴びをしているお客さんもいらっしゃいました。せっかくですから、せめて露天だけでも活かしてあげたらいいのに…と考えてしまいますが、湯量の問題などで難しいのかもしれませんね。ま、屋外はともかく、お湯はれっきとした良質の掛け流しですから、湯浴みする分には問題なし。リーズナブルに良いお湯を楽しめる質実剛健なお風呂でした。
1号泉
アルカリ性単純温泉 44.6℃ pH9.22 溶存物質0.22g/kg 成分総計0.22g/kg
Na+:59.3mg(97.11mval%),
Cl-:22.8g(22.45mval%), HS-:1.9mg(1.98mval%), HCO3-:28.3g(16.13mval%), CO3--:38.3mg(44.43mval%),
H2SiO3:57.3mg,
山鹿バスセンターより産交バスの南関線(平山経由)で「平山温泉前」バス停下車すぐ(11分・250円)(山鹿バスセンターまでは熊本駅・玉名駅・肥後大津駅などから路線バスに乗車)
熊本県山鹿市平山256 地図
0968-43-2041
平山温泉観光協会HP
6:00~21:30
200円
ロッカーあり、ドライヤーなし、シャンプー類等の販売有り
私の好み:★★