温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

名取温泉

2013年05月19日 | 山梨県
※残念ながら閉館しました。

 
甲府の隣駅である竜王駅で中央線の普通列車を降り、国道52号線「美術館通り」を東に向かって歩いてゆくと、やがてカラシ色の外壁と大きな看板が目立つ「名取温泉」にたどり着きます。この界隈には「山口温泉」という素晴らしい温泉があるため、「名取温泉」は目の前を何度も通りすぎていながら今まで訪問する機会が無かったのですが、界隈の温泉とはちょっと異なるお湯らしく、以前からちょっと興味があったため、今回は通過しないで立ち寄ってみることにしました。


 
エントランスはピロティ式の駐車場内部にあり、温泉とは程遠い雰囲気です。以前は相当キッチュな建物だったらしく、近年になっておとなしい内装へリニューアルされたそうですが、1階入口を入ったところには岩を模した造形で囲まれている扉があり、一昔前のチープなラブホみたいです。エレベーターや階段で受付や浴場のある2階へ上がります。


 
階段を上がったところに設置されているショーケースには、温泉分析表や掘削工事当時の写真などとともにボーリングコアやピットが展示されていました。近年はボーリング工事の相場もかなり下がってきたそうですが、かつてはちょっと掘るだけでも相当の費用を要したそうですから、オーナーさんにとっては人生を賭すような一大事だったことでしょうね。こちらでは地下1000mまで掘って温泉を汲み上げているそうでして、湧出温度が約35度なので入浴に適する温度にするため加温しているものの、加水循環消毒は行わずに放流式の湯使いを実践していることが表示されていました。


 
受付では料金と引き換えに番号が指定されているロッカーキーを受け取ります。脱衣室には縦長で細いロッカーが並んでおり、温泉というよりサウナ専門施設のような感じ。洗面台の前を通って浴室へ。洗面台の周辺ではテレビの音声だけ聞こえるのですが、これってなぜなのかしら…。


 
浴室に入ってすぐ左にサウナが、正面には水風呂が設けられていました。右手へ進むとお風呂でして、洗い場の手前には源泉が溜められている掛け湯枡が据えられています。位置的に考えますと、洗面台で聞こえたテレビの音声は、サウナの置かれているテレビから脱衣室(洗面台)側へ漏れているんでしょうね。


 
男湯の浴室は右手に浴槽が3つ、左手に洗い場が配置されており、室内にはテレビの音声が響いています。洗い場の上にテレビが設置されており、湯船に入りながら視聴できるんですね。洗い場にはシャワー付き混合水栓が12基並んでおり、お湯は源泉が出てきます。金気を多く含むお湯であるためシャワーのホースは赤く着色していました。


 
ガラスサッシを挟んで露天風呂も設けられているのですが、露天といっても完全に建物に覆われており、外側も高い塀が立ちはだかっているため、景色はおろか開放感も得られません。外気に触れながら入浴するスペースと捉えた方が良さそうです。石を積み上げたような湯口から塩ビのパイプが突き出ており、素手で触れるギリギリの温度まで加熱された源泉が注がれていました。その流路は温泉成分の付着により赤黒く染まっています。湯口ではかなり熱いものの、外気に熱を奪われてしまうためか、湯船では40℃以下に下がっていました。浴槽は石板貼りの長方形で、湯口側は寝湯ができるように浅くなっています。


 
3つある浴槽のうち手前側にある小さな浴槽は高温、その隣の中サイズは中温(一般的な湯加減)となっており、両者の中間に設けられている平らな丸い石を積んだ湯口よりそれぞれへお湯が供給されています。双方へ注がれるお湯の温度は同じでしたから、浴槽の大きさ(湯面の表面積の大きさ)によって湯温の高低が生まれているのでしょうね。湯船のお湯はやや赤みを帯びた山吹色に弱く濁っており、若干緑色を有しているようにも見えます。湯口の上にはコップが置かれていましたので試しに飲んでみますと強い金気が特徴的で、甲府盆地の温泉らしいモール泉っぽい匂いや味も感じられます。金気の多いお湯って引っ掛かりのある浴感である場合が多いのですが、こちらのお湯は重曹の影響なのか意外にもスベスベ感がしっかりと得られました。


 
残りの浴槽は気泡風呂でして、内湯のなかで半分の大きさを占める主浴槽でもあります。循環していないことを暗にアピールしているかのように、こちらの湯口にもコップが置かれていました。手前側2つの浴槽よりぬるめの湯加減(40℃以下)となっており、こちらへ入るお客さんはみなさん気泡に体を当てながら長湯なさっていらっしゃいました。山梨県の温泉浴場にぬるい浴槽は欠かせません。なお各浴槽のお湯は洗い場へオーバーフローせず、反対側(背面)へ溢れて排湯されていました。

気泡風呂やテレビの音など浴室内での騒々しさが気になりますが、お湯の鮮度はなかなか良好で、しかも湯上がりはいつまでもポカポカし続けましたので、お湯の持つ実力は相当なものなのでしょう。


単純温泉 35.0℃ pH7.7 溶存物質0.882g/kg 成分総計0.926g/kg
Na+:217.2mg(79.08mval%), Mg++:15.2mg(10.46mval%), Ca++:18.0ng(7.53mval%), Fe++:0.3mg(0.08val%), Fe+++:1.7mg(0.75val%),
Cl-:301.3mg(71.07mval%), HCO3-:204.2mg(28.01mval%),
H2SiO3:102.9mg, CO2:44.2mg,
加温あり

中央本線・竜王駅から徒歩10分
山梨県甲斐市名取324
055-276-4126

※残念ながら閉館しました。
10:00~24:00
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (2)
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甲斐市 湯めみの丘

2013年05月18日 | 山梨県
 
中央線の塩崎駅よりテクテク歩くこと20分、麗らかな春を謳歌するかのように、小高い丘では菜の花が鮮やかに咲いており、その彼方には雪景の富嶽が聳えていました。その両者に挟まれて建っている日帰り温泉入浴施設「湯めみの丘」が今回の訪問先です。私はここのお湯が大好きでして、今まで3~4度ほど利用しているのですが、界隈の方々からもかなり人気を集めており、この時も日中だというのに駐車場は地元ナンバーの車で埋め尽くされていました。


 
玄関ではひっきりなしにお客さんが出たり入ったりしていました。


 
(パンフレットの画像を転載させていただきました)
上述のように私は何度かこちらを利用させていただいていますが、訪問するタイミングの問題なのか、その都度浴室内には20人以上のお客さんがいらっしゃり、とても画像が撮れるような状況ではなかったため、今回の記事ではやむを得ず施設のパンフレットに載っている画像を転載させていただき、文章を中心にしてレポートを進めてまいります。ご了承下さい。

館内は一昔前の昭和末期か平成ヒト桁に建設された健康ランドのような雰囲気ですが、ロビーまわりは広々しており、同じフロアには食堂や休憩室・売店・マッサージ室なども設けられています。脱衣室もやや古さを感じるもののかなり広く、無料で使えるロッカーがたくさん用意されていたり、洗面台やドライヤーも4台ずつあったり、そして牛乳の自販機やベランダなども設けられていたりと、使い勝手は良好です。

浴室の戸を開けた瞬間、ふわっと温泉由来のタマゴ臭が香ってきます。浴室は奥へ長い構造になっており、男湯の場合は右手に洗い場が、左手に各種浴槽がそれぞれ配置されています。洗い場にはシャワー付き混合水栓が11基と立って使うシャワーが1基設置されており、カランから出てくるお湯は源泉です。
浴槽はいろんな種類があり、入口側からサウナ・水風呂・高温風呂・中温風呂(一部区画はジェットバスあり)・気泡風呂・超高温風呂の順に並んでいます。サウナや水風呂以外は全て温泉源泉が用いられており、温度調整は熱交換器によって行われてるため加水などは無く、加温循環消毒も一切なし、全ての温泉槽で完全掛け流しという素晴らしい湯使いとなっています。
浴槽の中では中温風呂が最も大きくて、気泡風呂がその次に大きなサイズなのですが、どういうわけか内湯ではその気泡風呂が一番の人気らしく、いつ訪問しても常連の皆さんは気泡風呂に肩寄せ合いながら入っています。



この画像は超高温浴槽の湯口ですが、どの浴槽も湯口は同じような形状をしており、どこもコップが置かれています。つまり、完全掛け流しのお湯だから飲んでも問題ないよ、ということをアピールしているのでしょうね。お湯は無色澄明で、タマゴ臭がはっきりしており、弱い金気臭も嗅ぎ取れます。コップで飲んでみますと、明瞭なタマゴ味の他、重曹的なほろ苦さや微金気味も感じられました。
カランでも源泉が使用されるほど湧出量が豊富なのでしょう、各浴槽でも惜しげも無く縁からオーバーフローしており、常にお湯が入れ替わっているため湯船へ体を沈めた時に伝わってくる鮮度感は抜群です。そして特筆すべきは夥しい気泡の付着でして、入浴するとあっという間に全身が泡で覆われます。この気泡と重曹のおかげで、ツルスベ浴感がはっきりしており、あまりの気持ち良さのため、出ようと思っても後ろ髪を引かれて出られ無くなるほどです。浴槽の多様さと源泉が有する浴感の素晴らしさが多くのお客さんのハートを掴んで離さないわけでして、私もそんな虜の一人であります。



利用客の多さに対して用意されている洗い場は11ヶ所と明らかに不足しているため、露天へ上がるステップの右側にも洗い場が増設されていました。



(こちらもパンフレットの画像を転載させていただきました)
浴室からステップを上がってサッシの引き戸を開けると露天風呂。いかにもビルの屋上かテラスらしい風情の無い場所に位置しており、そこに据えられている湯船は長方形のコンクリ造ですが、岩や石を埋め込んで無機質な雰囲気を打ち消し、温泉らしい趣きを醸し出そうとしています。浴槽手前左隅にある岩組みの湯口から源泉がふんだんに投入されており、同じく手前側右隅の切り欠けからドバドバ溢れ出ているのですが、その排湯は飛沫の飛び散りを防ぐためか、一旦ステンレスの箱に集められてから床へと落とされており、お湯の流路は黒く変色していました。
露天の湯船はぬる湯天国の山梨県らしい40℃を下回る湯加減となっており、内湯の気泡風呂以上に利用客が多く集まっていまして、しかも皆さん悉く長湯をするもんだから、いつ行っても大混雑です。でも浴感が素晴らしい上に、不感温度帯のお湯はどれだけ長く浸かり続けていても体の負担になりませんから、なかなか出ようとしないお客さんの気持ちもわかりますし、かく言う私もしっかり長湯してしまいます。お湯が良いだけでなく、ここからは富士山の他、甲府盆地の西端や南アルプスの峰々も眺望できるので、入って佳し眺めて佳しなのです。日没後は夜景も綺麗なんでしょうね。
ちなみに露天風呂の浴槽右側には山梨県の温泉ではおなじみの0短大T教授による解説文が掲示されています。T教授の解説文は、予め用意された大げさな表現のテンプレートに固有名詞と数値だけを入れ替えたような代物ですが、県内のハイクオリティな温泉では必ずと言ってよいほど教授の「名文」を目にしますので、今や甲州の温泉には欠かせない隠れた名物になっていると言えるかもしれません。

普段は自前の画像で記事を作成している拙ブログですが、どうしてもここはご紹介したかったので、今回に限りパンフの画像を転載しながら取り上げさせていただきました。


ナトリウム-塩化物泉 43.5℃ pH8.4 531L/min(動力揚湯) 溶存物質1.091g/kg 成分総計1.091g/kg
Na+:350.2mg(86.39mval%), Ca++:41.8mg(11.85mval%), 
Cl-:622.4mg(95.38mval%),
H2SiO3:25.2mg, (cf. CO2:0.0mg)

中央本線・塩崎駅より徒歩20分
山梨県甲斐市下今井2361-11
0551-28-2500

10:00~22:00 無休
700円
ホームページ

私の好み:★★★
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武田乃郷白山温泉

2013年05月17日 | 山梨県
 
はらはらと舞い散る桜を眺めていたら清涼感のあるツルスベな温泉に入りたくなり、4月上旬、中央線に乗って山梨県へと向かいました。今回降り立ったのは小林一三の故郷であり中田英寿の出身高校も存在する韮崎です。
韮崎駅前のロータリーから韮崎市民バスの上円井行に乗車し、10分弱で通過する「韮崎大村美術館前」にて下車します。なお桜が咲く季節に限定して運行される「清流と甲斐駒ヶ岳周遊バス」の韮崎駅~フレンドパークむかわを結ぶ「桜ルート」も利用可能。バス停は見晴らしの良い場所に位置しており、釜無川が流れる韮崎の市街や昇仙峡方向を眺めることができました。



バス停のすぐ前にある「韮崎大村美術館」では、化学者の大村智博士がご自身で蒐集した女流作家の作品(絵画や彫刻)が展示されているんだそうです。


 
今回の訪問先は大村美術館と同じ敷地内に建てられている「武田乃郷白山温泉」です。いかにも現代建築らしい美術館とは異なり、温泉はモダン和風のテイストですね。私は2005年秋の開業直後にこちらへ一度訪問したことがあるのですが、それ以来約7年ぶりの再訪となります。韮崎の温泉といえば「韮崎旭温泉」が非常に有名であり、その近所に位置しているためかこちらは知名度や人気が今一つの感が拭えませんけれども、いかにも甲州の温泉らしい良いお湯なんですよね。


 
外観からは立派な施設を想像しますが、玄関を入ると意外とこぢんまりしており、民家にお邪魔したかのような雰囲気です。フローリングのロビー左手に置かれている券売機で料金を支払い、窓口に券を差し出して奥へと進みます。ロビーの右手には民家のリビングのような無料休憩室が用意されています。なおその奥のお座敷は予約制なんだそうです。


 
浴室は眺望の良い2方向がガラス張りになっており、明るくて開放感があり、清潔感も漲っています。後述する露天風呂より庭木から離れている内湯の方が視界が広く確保されるため、八ヶ岳をはじめとする山々の姿がはっきりと眺められました。
室内には10~12人は余裕で同時に入れそうな大きさの浴槽が一つ据えられており、槽内はタイル貼りで縁は木材使用、隅っこに取り付けられた木組みの湯口からお湯が注がれ、縁からしっかりオーバーフローしていました。湯船の温度は40~41℃でして、少々ぬるめの長湯向きのお風呂が多い山梨県らしい湯加減です。



浴室の窓がない残り2方向には洗い場がL字型に設けられ、シャワー付き混合水栓が計8基取り付けられています。カランから吐出されるお湯は真湯です。開業から8年近くが経過しようとしており、そろそろ汚れや経年劣化が現れ始めてもおかしくない時期ですが、メンテナンスが行き届いているためか、少なくとも客が目にする範囲内ではそのような劣化などは見受けられず、とても気持ちよく利用することができました。



浴室入口すぐ左には掛け湯用の小さな枡が設置されており、100%の源泉が蛇口より落とされていました。その蛇口は温泉成分により変色しています。枡に溜められているお湯はやや緑色を帯びた黄色の透明で、重曹感や金気がはっきりと感じられました。結論から申し上げちゃいますと、内湯や露天を含めた全浴槽の中ではこの掛け湯枡のお湯が最もコンディションが良くて知覚面が際立っており、枡の内側には金気による赤い着色が見られました。



露天風呂は軒先の日本庭園に造られているような趣きで、釜無川の氾濫原を見下ろす気持ちの良いロケーションです。浴槽は7~8人サイズの岩風呂で、底は石板敷きです。内湯同様に40~41℃という湯加減ですから、景色を眺めながらいつまでものんびりと長湯できちゃいます。また長湯して体が多少火照っても、高台を吹く風でクールダウンさせれば実に爽快です。


 
垣根の向こうにはまだ頂に雪が残る八ヶ岳が聳えていました。露天の庭園はこうした山々を借景にしているのでしょうね。


 
岩組みの湯口をよく見ると茶漉しのような網が被せられていました。湯の花キャッチャーなんでしょうけれども、網目が粗いためかお湯の中では茶色っぽい細かな湯の花が浮遊していました。私個人としては湯の花がたくさんあった方が嬉しいのですが、湯の花を嫌うお客さんって地域を問わず結構多いようですから、クレームを避けるためにある程度濾し取らなきゃいけないんでしょうね。湯口はまずまずの量のお湯が投入されており、縁から絶え間なくオーバーフローしていました。

内湯・露天ともにお湯は若干緑色を帯びた薄い黄色の透明で、味覚面では重曹味や薄塩味のほかに新鮮な金気味、臭覚面ではモール泉っぽい匂いや金気臭とともに砂消しゴムに似て非なる不思議な匂いが感じられました。なお塩素臭と思しき臭いも内湯・露天の双方から感じ取れたので、湯使いとしては塩素消毒を実施した上での放流式ではないかと思われます(掛け湯枡からはその臭いが感じられませんでした)。重曹と食塩がミックスされたお風呂ゆえにその両方の特徴がよく現れており、入浴中は重曹泉的なツルスベ浴感が楽しめ、湯上りも爽快なのですが、同時にいつまでも持続する温まりも得られ、一粒で二度美味しいような入浴効果が実感できました。比較的ぬるいお湯なので、高台の景色を眺めながらゆっくり長湯できるのも嬉しいところです。


 
湯上りは温泉の建物に併設されている蕎麦処「上小路」の暖簾をくぐり…



鳥もつのもりそばを注文しました。お蕎麦は少々太めの田舎風で歯ごたえと風味が活きており、ツルツル感も良好。おつゆはちょっとしょっぱいかも。ネギ・ショウガ・大根おろしなどいろんな種類の薬味をおつゆに入れていただきました。


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 45.5℃ pH7.8 216.8L/min(動力揚湯) 溶存物質1.313g/kg 成分総計1.339g/kg
Na+:366.3mg(87.19mval%), Mg++:12.8mg(5.75mval%),
Cl-:434.3mg(64.47mval%), HCO3-:409.1mg(35.26mval%),
H2SiO3:44.3mg, CO2:26.0mg,

韮崎駅から韮崎市民バスの上円井行に乗って「韮崎大村美術館前」で下車、徒歩1~2分
山梨県韮崎市神山町鍋山1809-1
0551-22-5050
ホームページ

10:00~21:00 木曜定休
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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箱根関係のきっぷあれこれ(小田急・箱根登山)

2013年05月16日 | 旅行記
※今回の記事に温泉は登場しませんのであしからず。

都市圏の鉄道やバスはICカードで乗車するのが一般的となり、本年(2013年)3月からは一枚のICカードで主な都市圏を相互利用できるようになったことは皆様御存知のとおりです。私はモバイルSuicaを愛用していますが、この一つで札幌のJRや別府の路線バスが小銭不要でスムーズに乗れちゃうんですから、鉄道やバスを利用した温泉めぐりも格段に便利になりました。
でもアナログ思考な私は、切符のデジタル化が進めば進むほど、予め印刷された古典的な切符に対する郷愁の念が強くなり、できれば昔ながらの硬券や手書きの券類を入手したくなってしまいます。紙の券を手にして旅をすると旅情が余計に高まりますし、写真と一緒にアルバムへ挟めば想い出もより立体的になりますもんね。
これまでも拙ブログでは手書きの切符関係に関する記事をアップしてきましたが、今回は箱根関係のものをいくつか取り上げてまいります。


●「箱根旧街道・1号線きっぷ」
 
(左右の画像ともクリックで拡大)
首都圏屈指の観光地である箱根には様々なフリーパス類が発売されていますが、「箱根旧街道・1号線きっぷ」もその一つでして、箱根登山鉄道の駅や箱根登山バスの案内所、小田急の各駅で購入できる一日限り有効のものです。名称の通りに奥湯本や畑宿などの旧街道沿いや、宮ノ下・小涌園・芦之湯・元箱根・箱根町など国道1号線沿いを散策するにはとっても便利であり、小田原から芦の湯以遠(元箱根や箱根町など)を単純往復するだけでも、正規料金よりこの切符を買ったほうがかなり安く済みます(箱根は路線バスの料金設定が妙に高いんです)。しかしながら他のフリーパス類と同様に小田急グループ(箱根登山)と西武グループ(伊豆箱根)で利用できる交通機関が分かれており、発売箇所からもわかるようにこの切符は小田急グループのみの適用となりますので、同じルートを走っている伊豆箱根バスには乗車できません。また強羅・仙石原・大涌谷方面も使えません。
さてこの「箱根旧街道・1号線きっぷ」は小田急各駅の券売機で購入するとごくふつうの定期券サイズの感熱券によって発行されますが、箱根登山バスの案内所で購入すると予め印刷されたカラフルな長方形の常備券で発行してくれます。どちらも効力は同じですが、常備券の方が券らしい味わいがありますね。また券売機の券では裏面が真っ黒ですが、こちらでしたら利用できる範囲が図説されているので便利です。ということで、先日箱根を訪れた際には小田原駅東口にある箱根登山バスの小田原案内所で購入し、小田原駅の小田急改札で入鋏してもらいました。


 
ついでに、利用した際に撮った画像をいくつか。
箱根湯本駅では強羅行の電車が水を補給しておりました。しばしば「何で水を汲んでるの?」という質問を耳にしますが、これは急カーブを曲がるときに摩擦を軽減させるため、レールと車輪の間に撒く水を汲んでいるわけです。普通の鉄道でしたらグリスのようなものを用いますが、登山鉄道で油を塗っちゃうと滑って急勾配を登れなくなっちゃうため、このように水で代用しています。なお大平台~宮ノ下の強羅行電車に乗っていると、この散水に関する説明が車内アナウンス(テープ)で流れますので、一度は耳になさった方も多いかと存じます。



「箱根旧街道・1号線きっぷ」で電車に乗れるのは小涌谷駅まで。そこから先はバスに乗り換えます。強羅行電車の車掌さんは決して箱乗りしているわけじゃありませんよ。



●小田急ロマンスカーに硬券や補充券で乗る
 
芦の湖畔の箱根海賊船・元箱根案内所へとやってまいりました。この案内所の窓口では桃源台方面へ向かう海賊船の乗船券を発売しているのですが、実は小田急の特急券や乗車券も取り扱っており、切符蒐集家のみなさんにとっては有名な場所でもあります。
しかし、ここで小田急の券を発券するには手間と時間を要し、混雑時に発券を依頼しちゃうと海賊船の切符を買いたいお客さんに迷惑を掛けてしまいますので、もし購入を希望する場合は、窓口が明らかに空いているタイミングを窺って依頼しましょう。


 
(左右の画像ともクリックで拡大)
左(上)は箱根湯本→新宿の乗車券、右(下)は箱根湯本or小田原→新宿までの特急券です。いずれもA型硬券です。小田急の硬券特急券は、上り列車については券面に赤い斜線を引くのが伝統となっていますが、この券もちゃんとその伝統に則っていますね。なお特急券の発券に際しては、まず窓口の方が客から希望列車・乗車区間・人数を聞き出して所定の台紙に記載し、電話でどこかへ問い合わせ、座席が確保できたら券に必要事項を記載します。
ちなみに元箱根案内所で用意されている硬券は、乗車券・特急券ともに新宿までのものだけのようです。


 
こちらはそれぞれの裏面です。左(上)は乗車券、右(下)は特急券です。


  
(左右の画像ともクリックで拡大)
新宿以外は補充券で対応してくれます。左(上)は箱根湯本→新百合ヶ丘の乗車券、右(下)は箱根湯本or小田原→町田までの特急券です。特急券は列車名が無かったり席番の記載場所を誤解していたりと、記入方法に関して突っ込みどころ満載ですが、ま、支障なく乗れたので問題なし。



(画像はクリックで拡大)
両方共裏面は共通です。



夕暮れ時の箱根町バスターミナル。バスのすぐ後背には箱根観光船(海賊船)の箱根町港があり、前回取り上げた「夕霧荘」もここから徒歩2~3分です。小田急の2013年3月期決算説明資料(PDF)によりますと、箱根観光船の輸送人員は昨年度比で21.9%(上半期では38.7%)も増加したんだそうです。とはいえこの数値は震災と原発事故の影響で観光客が激減した2011年度の反動ですから、増加というよりV字回復と捉えるべきものでしょう。ちょうどこのバスを撮影した10分ほど前に船が港に到着し、甲板や客室で芦ノ湖の景色を楽しんでいた多くのお客さんが下船してきました。
船で桃源台から箱根町や元箱根までやってきた客は大抵の場合、路線バスで湯本方面等へ戻るわけですが、大きな遊覧船に対して、その受け皿となるバスは一般的な車体の路線バス1~2台だけであり、その路線は1号経由と箱根新道経由の急行バスの2本がありますが、後者は観光の楽しさを奪うほど寿司詰め状態で出発して行きました。バスって増便やルートに関して柔軟性に富む乗り物なんですから、もう少し融通がきかないものかな…。



さて、元箱根案内所で購入した特急券で「はこね44号」(箱根湯本19:00発)に乗車し、帰路に就きます。湯本駅の改札を通ると、既にホームに入線していたVSEの車内ではアテンダントの方が折り返しのため準備の真っ最中でした。
私は長らく小田急沿線に住んでおり、通勤の帰りには頻繁にロマンスカーの「ホームウェイ号」を利用するので、ロマンスカー自体はちっとも珍しくないのですが、「ホームウェイ号」に使われるのはEXEやMSEが多いため、VSEに乗る機会はちょっと特別です。ついついアテンダントさんに生ビールを注文してしまいました。


●箱根登山電車の車内補充券
 
再び小涌谷駅です。このときは日没前に訪れたのですが、夕方になると駅から駅員は姿を消し、無人駅になってしまいます。


 
(左右の画像ともクリックで拡大)
こちらは箱根登山線の車内補充券です。小涌谷を含め、宮ノ下や大平台などの駅は日中以外無人となり、切符を購入することもできませんので、車内で車掌さんから購入することになります。数年前まではどの路線でも車内で精算するなんて極めて当たり前でしたが、首都圏の大手私鉄ではほとんど車内精算が消えてしまい、一部の中小私鉄に残るばかりですね。箱根登山電車ではSuicaやPASMOでも乗車できますから、車内精算するお客さんも減っているかもしれませんね。

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元箱根(芦ノ湖)温泉 夕霧荘

2013年05月15日 | 神奈川県
 
箱根駅伝の往路ゴール(復路スタート)は芦の湖畔の箱根町バスターミナル南側(箱根駅伝ミュージアム前)ですが、そのバスターミナルの斜前の国道1号沿いに「日帰り温泉入浴」の看板を見つけたので、どんなお湯に入れるのか、その看板を掲げる旅館「夕霧荘」へ訪問してみることにしました。


 
国道からアプローチを真っ直ぐ進んで駐車場を通り過ぎた先に旅館の本館が建てられているのですが、ちょっと奥に入るだけでも観光客で賑わう湖畔の喧騒とは切り離された静かな世界になるんですね。



両側には提灯がさがっている玄関まわりの佇まいからはちょっと高級な雰囲気が伝わってきます。表には積極的な看板が出ていたものの、本当に日帰り入浴を受け入れてくれるのかしら…。ちょっと不安を抱きながら建物へ近づくと、玄関の右側に誂えられている庭につくばいが置かれているのを見つけたのですが…


 
つくばいに近づいてみたら、竹筒から注がれているのは何と激熱の温泉でして、丸い水受けはもちろんその周りも、温泉の硫黄によって淡いレモンイエローを帯びた白色に染まっていました。これは期待できますね。


 
自動ドアの玄関を入ると、ロビーは外観を見て抱く想像を裏切らない小綺麗な内装で統一されているものの、中規模旅館だからか意外とコンパクトにまとまっていました。対応に出てきた男性スタッフへ日帰り入浴したい旨を伝えると、二つ返事で受け付てくれ、料金の支払いと引き換えにフェイスタオルと貸バスタオルを私に手渡たし、浴室へと案内してくれました。小洒落た雰囲気にマッチしている丁寧な対応です。
浴室はロビーの右手にあり、「源氏の湯」と染め抜かれた紫色の暖簾が男湯です(女湯は「葵の湯」です)。暖簾の手前には風呂あがりに水分補給するための清冽な山清水がポットに用意されており、その隣には貴重品用ロッカーが設置されています。脱衣室内にはロッカーが無いので、貴重品類はこちらへ預けましょう。大きな籠が整然と並ぶ脱衣室は、とても綺麗で清潔な状態に維持されています。


 
洗面台に用意されていたヒゲソリが幾何学模様を描くように整然と並べられていたので、ついつい撮ってしまいました。


 
まずは内湯から。
窓際に据えられている浴槽は5~6人サイズの長方形で、内部はタイル貼りで縁は石板貼りです。窓に面しているものの、室内の明るさを抑えて落ち着いた雰囲気が醸し出されています。
浴槽の奥にあるお湯の投入口が特徴的でして、玉砂利が敷き詰められているような丸い鉢のような物体の真ん中から、噴水のようにお湯が上げられていました。しかしこれだけでは浴槽に必要なお湯は足らず、浴槽内部側面の穴からも投入されており、湯船に人が入ればお湯は溢れ出るものの、普段はオーバーフローせずに槽内にて吸引されています。このような状態からもわかるように、ここで使われているお湯はしっかり加温加水循環消毒されており(脱衣室にその旨が明示されています)、浴槽縁の石材は硫黄によって薄く白く染まっているものの、実際に入浴してみてもお湯からはこれといった特徴が感じられず、湯面から漂う塩素臭だけが記憶に残るばかりでした。



洗い場にはシャワー混合水栓が4基設置されており、シャンプー・リンス・ボディーソープも完備。使い勝手は良好です。



露天風呂は坪庭を眺めながら入る岩風呂で3~4人サイズといったところでしょうか。庭師さんの技が素晴らしいのか、実際にはさほど広くないのに、あまり狭さを感じさせない造りとなっているのが設計の妙と言えるでしょうね。


 
湯船の上に突き出た石の樋からは触れないほど熱いお湯が注がれており、樋の内側は硫黄で白く染まっています。温度調整のために加水されているようですが、温泉を投入する時点で既にかなり熱いためか、湯船の湯加減もやや熱めでした。内湯のお湯はしっかり循環されていて槽内で吸引されていましたが、露天は手前側の縁から溢れ出て排湯されており、こちらは槽内吸引されているような気配がありません。おそらく掛け流しかそれに近い湯使いかと思われます。


 
お湯は灰白色にぼんやり霞む感じで濁っており、湯中では白系の浮遊物も待っています。また槽内の岩の凹凸や底の目地には粉状の湯華が沈殿していました。分析表によれば使用源泉は湯ノ花沢(駒ケ岳の北東麓)にある町営の第7号蒸気井に水道水を混合した蒸気造成泉とのことでして、造成泉らしい砂消しゴム的な匂いと味、粉っぽさ、弱いタマゴ感、そして弱い酸味収斂が感じられ、湯口に鼻を近づけると燻されたような硫黄の匂いも嗅ぎ取れました。硫黄感がはっきりしていながらも軽やかで肌に優しく馴染む浴感が心地よく、肌が弱くて硫黄のお湯が苦手な方でも、こちらのような造成泉でしたら抵抗感をあまり受けずに入浴できるのではないかと想像されます(尤も体質には個人差がありますので断言はできませんが)。とにかく露天は内湯と同じお湯とは思えないほど特徴がしっかりしており、きっちりと温泉らしいお湯を堪能することができました。

お宿の雰囲気やコンセプトから想像するに、女性の方や外国人観光客には受けが良さそうです。実際に、私がお風呂から上がると、白人系のグループ客がチェックインしている最中でした。ただでさえ元箱根・箱根町エリアは入浴のみ利用可能な施設が少ないので、そんな場所柄で掛け流しに近い状態のお湯に入れるこちらのお宿は貴重な存在といえそうですね。


元箱根温泉[元箱根44号(町営第7号蒸気井)に水道水を混合した蒸気造成泉]
単純硫黄温泉(硫化水素型) 77.0℃ pH3.7 蒸発残留物0.348g/kg 成分総計0.439g/kg
H+:0.20mg(5.13mval%), Na+:14.6mg(16.41mval%), Mg++:9.28mg(19.49mval%), Ca++:32.4mg(41.54mval%), Al+++:5.60mg,(15.90mval%),
HSO4-:8.32mg, SO4--:165.6mg(93.50mval%),
H2SiO3:110mg, H2S:82.9mg,
(箱根町公式サイト内でも同源泉の分析データが公開されています。こちらをご参照ください)
(参考:「箱根町営温泉の給湯区域」(箱根町公式サイト内))
内湯:加水あり、加温あり(温度調整のため)、循環あり、消毒処理あり(塩素系薬剤)
露天は掛け流しに近い湯使いかと思われる

箱根町バス停より徒歩2~3分
神奈川県足柄下郡箱根町箱根138
0460-83-6377
ホームページ

12:00~17:00(17:00までに退館)
1000円(貸バスタオル・フェイスタオル付き。フェイスタオルは持ち帰り可能)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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